日はまた昇る

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韓国に「さようなら」を言う日に備えよう

2年半前のブコメ*1

2017年2月、潘基文氏が韓国大統領選を撤退したという記事に、私はこんなコメントを書いた。

「英雄」潘氏、衝撃の撤退 韓国大統領選へ態勢整わず:朝日新聞デジタル

これで文在寅が大統領になる可能性が高くなった。文在寅の政策は破壊的だよ。日韓関係は完全に壊れるだろうし米韓同盟すら危なくなる。日本は米韓同盟瓦解後の対応策を練るべきと思うね。東アジアに嵐が来そう(笑)

2017/02/02 19:37
b.hatena.ne.jp

あれから2年半、着実に日韓関係は壊れ、米韓同盟も危うくなってきている。
私は自分の予測力を誇るつもりはない*2。あれは韓国の政治や社会と文在寅氏をきちんと観察していれば、誰でも容易に予測できたことと思っている。
さて、ここまで壊れた日韓関係が今後どうなるのか、韓国の他、中国、北朝鮮、ロシア、アメリカと日本の6か国の動向の分析も含め、自分の考えを整理したいと思う。


政治家としての文在寅氏の分析

ちまたには、「文在寅は無能だ」などと政治家としての文在寅氏を貶める言説もちらほら見かける。
私は、文在寅氏に問題がないとは思わない。しかし決して無能な政治家とも思っていない。自分の支持者に誠実な信念の人と思う。ただその信念は韓国の民族主義的傾向があまりに強く、妥協しないので、日本だけでなく関係各国、そして韓国国内の対立者と深刻な軋轢を起こしていると見る。

文在寅氏が大統領選に勝利した後、2017年5月に韓国在住のロー・ダニエル氏が書いた文在寅氏に対する分析は、今だからこそ読み返してもらえれば、それが正鵠を得た分析とわかると思う。
gendai.ismedia.jp
私は、文在寅氏を理解するキーワードは、彼の持つ「正義感」だと思っている。
その「正義感」は、韓国の歴史、すなわち『李承晩と朴正熙が元祖となって作り上げた、親米・親日的な発展万能国家、安保国家、勝者独食国家のさまざまな産物』に向かう。だから『それを清算しなければ「常識的社会」は具現できない』と考える。つまり「積弊清算」こそが、文在寅氏を政治家たらしめる基礎であり、原動力だと思う。

この分析記事にある、日本に対しての次の4点の指摘は文在寅氏の対日感の原点だと考えるべきだろう。

  • 1965年の日韓正常化合意を彼の父親が「悪である」といったこと
  • 2004年に制定された「親日反民族行為真相究明に関する特別法」を盧武鉉政権の大きな功績と認識していること
  • 2015年に朴恵槿政権と結んだ慰安婦に関する日韓合意を「受容することができない」と宣言したこと
  • 包括的軍事情報保護協定(GSOMIA)について、日韓の間の軍事情報の共有が日本に有利な形であるという認識をもっていること

この4つをもとに、文在寅政権の過去の動向を顧みれば、「考えもなしに(無能だから)日韓関係を悪化させた」のではなく、「自らの信念のもとに確信をもって決断した結果、日韓関係は悪化した」とわかるのではないだろうか。文在寅政権にとって、日韓関係の悪化は目的ではないが、避けて通れないものと考えているだろう。

文在寅氏本人については、もう一つ大事な指摘がある。

  • 実利より大義名分と理屈を優先すること

これが、文在寅政権の持つ「非妥協性」のもとになっていると思う。日本や他国、あるいは韓国国内の対立者のクレームに対し、一切妥協せず、逆に相手の譲歩のみ求める。その頑なさは文在寅政権の特徴の一つだ。


徴用工問題について

徴用工問題に対する韓国の判決と文在寅氏との関係

徴用工に対する賠償請求について、その訴訟の一つを初めて引き受けた弁護士が文在寅氏当人だったという事実を忘れてはいけない。
www.donga.com

そして文在寅氏は大統領になり、2017年、大法院判事を経験したことのない地方裁判所の裁判官で『反日反米の裁判官の集団である「ウリ法研究会」の会長を務めた』金命洙氏を大法院長官に抜擢した。その指名の際には『2012年の大法院の判決を引用しつつ「韓国政府もそのように望んでいる」』と述べた。
その後、「大法院が朴槿恵政権の意向を汲んで徴用工の民事訴訟の進行を遅らせた容疑」で林鍾憲前法院行政処次長を逮捕した。
こうやって、用意周到に準備した上での大法院判決だ。この判決に文在寅氏の大統領としての意向が影響していないとは考えられない。
toyokeizai.net

判決内容

この判決を、日本語に翻訳した人がいるのでご紹介したい。またその労に感謝したい。

justice.skr.jp

私の以下の指摘は、リンク先の「新日鉄住金徴用工事件再上告審判決(大法院2018年10月30日判決)」に基づいている。

この判決を、日本は到底受け入れることができないと私は考える。その問題となる部分を判決から抜粋し列挙してみる。

  • 請求権協定は日本の不法な植民支配に対する賠償を請求するための協定ではないとした部分(12p)

韓国に対する植民地統治が、不法であったかという点は、日本と韓国で意見が相違している。日本は道義的な面では植民地統治の責任を持つものの、植民地化は当時の国際法に沿ったものと主張している。韓国は不法行為だと主張している。その相違を残したまま、日韓基本条約は締結された。植民地統治の不法性は韓国側の認識であり、それをこの判決は重要な法理の一部としてあげている。しかしそもそもそれは二国間条約である日韓基本条約の解釈の問題であり、一国の判断で断定できるものではない。その解釈を決定する権限は、韓国の大法院にはない。請求権協定に対する紛争は、請求権協定に定められた手順に従い解決すべきものである。

  • 具体的な不法行為を認定することなく、不法な植民地支配によって被告が「精神的苦痛を受けたことは経験則上明白である」とした部分(12p)

不法行為について具体的に認定するのではなく、不法な植民地支配によって「精神的苦痛を受けたことを経験則上明白」とし、それを損害賠償の根拠とするのであれば、今後、韓国人が植民地支配で苦痛を受けたと主張するすべての内容について、ほぼ自動的に損害賠償が認められることになる。

  • 請求権協定第1条によって支払った金銭が、同第2条の請求権放棄と法的な対価関係にはないと断定した部分(14p)

この部分は、日韓基本条約と請求権協定の本質的性質を変更することに他ならない。前述の通り、日韓基本条約の解釈を一方的に変更する権限は、韓国の大法院にはない。

  • 韓国が「他国民を強制的に動員することによって負わせた被徴用者の精神的、肉体的苦痛に対する補償」を交渉時に求めた事実は認定しつつも、韓国の要求額に及ばないことを根拠に、強制動員慰謝料請求権も請求権協定の適用対象に含まれていたとは認めがたいとした部分(15-16p)

交渉過程で補償を求め、それを前提に二国間条約である日韓基本条約とその付属協定を締結しておきながら、その額が要求に足りないという根拠でその内容を否定できるのであれば、日韓基本条約とその付随協定の安定性は著しく損なわれる。さらにこれは日韓基本条約の解釈の問題であり、再々の指摘だが、解釈を変更したり断定する権限は、韓国の大法院にはない。

上記から、日本が韓国に日韓基本条約と付随協定という条約(国際法)の順守を求め、この紛争の解決として請求権協定第3条に基づき仲裁委員会の設置を求めたのは当然といえる。しかし文在寅政権はそれを拒んでいる。

文在寅政権が日本に対して要求しているもの

文在寅氏は自らの正義を強く信じる人と前に書いた。自らの正義を強く信じるゆえ、「一度、反省の言葉を述べたから反省が終わったとか、一度、合意をしたから過去が全て過ぎ去り、終わりになるというものではない」という言葉を述べる。文在寅氏にとっての正義は、「日本は加害者として韓国が満足するまで永遠に謝罪すること」であり、その関係を作ることが「真の友好」であり「積弊清算」なのだ。
www.asahi.com
相手国に謝罪を要求し続け、日韓基本条約のような二国間関係の基本となっている条約(国際法)すら解釈を一方的に変更し決定し、その内容によって相手国に「賠償」を求める。そんな関係は一方的な従属関係としかいえない。文在寅政権は、一連の行動で、『日本に対して「従属」を要求している』といわざるをえない。
しかし、日本とて他国に「従属」を要求されれば、それを拒まざるをえない。譲歩もありえない。日本と日本国民と、将来の私たちのこどもたちのために、私たちは頑としてそれをはねのける必要がある。


オフェンシブ・リアリズム(攻撃的現実主義)の視点

徴用工問題は、ついに日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)を韓国が破棄を通告するという事態に発展した。ここに至り、徴用工問題は、東アジアの安全保障体制の問題に変化した。第2ラウンドだ。
GSOMIA破棄の理由として、文在寅政権は日本が「輸出貿易管理令」の一部を改正し、韓国をいわゆるホワイト国からはずしたことをあげているが、そもそも日韓関係の悪化の引き金となった徴用工問題も、文在寅氏自身が仕掛けた「積弊清算」の一部であり、GSOMIAも文在寅氏が積弊の一つと考えていたと思われることから、私は文在寅政権が日本のホワイト国はずしを理由にして「積弊清算」をまた一歩すすめたのだと思っている。
GSOMIA破棄は、日本と韓国の軍事協力を難しくするだけでなく、「アメリカの安全保障の利益に悪影響を及ぼす」とアメリカの高官が発言するように、アメリカの国益に真っ向から反することになる。当然、アメリカは強い怒りと不信感を韓国に向けるが、韓国もそれを予期しなかったわけではあるまい。
web.archive.org*3

韓国がGSOMIAを破棄することで、本来、徴用工問題は日本と韓国の2国間の問題であったはずが、アメリカなど周辺各国を巻き込んだ安全保障の問題に変質してしまった。その結果、今後どのようなことがおこるのだろうか? 
そこで、今後については、国際関係論の主要な理論の一つである「オフェンシブ・リアリズム(攻撃的現実主義)」の視点で分析してみたい。
なお、「オフェンシブ・リアリズム(攻撃的現実主義)」の理論は、次の記事にまとめている。以下の文章では「オフェンシブ・リアリズム(攻撃的現実主義)」の専門用語を使用するので、わからない用語があれば、この記事を参考にしてほしい。
thesunalsorises.hatenablog.com


韓国の文在寅政権が望む国際関係とは?

日本との間で、レーダー照射事件が生じたとき、レーダー照射を行った事実すら認めず、日本を強く非難した文在寅政権は、北朝鮮に対しては全く逆の態度を示している。
ここ1か月、北朝鮮は韓国が標的と思われる短距離ミサイルの発射実験を繰り返しているが、それに対しては文在寅政権は沈黙を守り続けている。
一方、文在寅氏は、8月15日の「光復節」式典の前に「北朝鮮との経済協力で平和経済が実現すれば、一気に日本の優位に追いつくことができる」と述べ、式典では「2045年の光復100年には平和と統一で一つになった国、『ワンコリア』に向けて礎を整備する」とし、「統一すれば、世界経済6位圏の国、国民所得7万~8万ドル時代が開かれるだろう」と演説した。
北朝鮮核兵器やミサイルなど、どこ吹く風だ。
文在寅氏にとって、北朝鮮との統一がとても重要な政治目標であり、統一後の「ワンコリア」に大きな期待をかけていることがわかる。民族が分断された歴史を終わらせることは、文在寅氏にとって最大の「積弊清算」なのだろう。
www.donga.com

一方、韓国は文在寅政権になってから、大きく国防費を伸ばしている。
japanese.joins.com

軍事費を増大させる一方、同盟関係の維持には配慮をしない。北朝鮮の挑発には沈黙し、統一を訴える。
これらの動きから、文在寅政権が目指している安全保障は、強い「ワンコリア」を実現し、「ワンコリア」の自国国力による安全保障ではないかと考える。これをオフェンシブ・リアリズム(攻撃的現実主義)では「内的バランシング」という。そして「内的バランシング」のもっとも強力な手段は「核武装」になる。
文在寅政権が北朝鮮の核廃棄にそれほど積極的な姿勢をみせない背景として、「ワンコリア」成立後の「核配備」を夢見ている可能性を指摘しておきたい。


アメリ

これはとても明確だ。
アメリカは、中国との覇権争いに入った。そのために、日米同盟、米韓同盟を強固にし、アメリカ、日本、韓国の3か国の力を束ねて、中国にあたろうとしている。
この戦略をオフェンシブ・リアリズム(攻撃的現実主義)では「外的バランシング」という。
さらにアメリカは、日本が提唱した「自由で開かれたインド太平洋構想」に同意し、オーストラリア、インドなどを加えて、その構想をすすめようとしている。
一貫して、アメリカは「外的バランシング」戦略によってアジアに関与しようとしているといえる。


中国

中国は、アメリカとの覇権争いの渦中にある。当初、トランプ政権との貿易摩擦を、単に貿易問題に限定したものと捉えていたようなふしがあるが、今は、覇権をかけたアメリカとの戦いの一環と認識したようにみえる。
中国にとっては、日米同盟、米韓同盟という2つの同盟関係が強固となり、アメリカ、日本、韓国の3か国が共同歩調をとればとるほど、覇権争いという観点では不利な立場となる。
したがって、今回の徴用工問題に対する判決に端を発した日韓関係の悪化と、韓国によるGSOMIA廃棄によってもたらされた米韓同盟の弱体化は、中国にとっては福音だ。

とはいえ、日本の安倍首相とアメリカのトランプ大統領の関係は極めて良好であり、日米同盟に揺るぎはみえない。
中国はかつて韓国の朴槿恵政権と協同して日本を非難し圧力をかけたことがあるが、この状況下(米中の対立激化および日米同盟が盤石な状態)でそれと同じように韓国の文在寅政権と協同して日本へ圧力をかけると、さすがに日本も態度を硬化し、アメリカと協同して中国との対立を激化させることになると思われる。それはいらぬ敵を増やすだけで、中国に実利がない。
したがって中国は、日本とは友好的な関係を作り、アメリカと中国との対立からは距離をとらせる方が賢明と考えるだろう。

一方、中国にとって、韓国の文在寅政権の一連の行動で日韓関係を損ね、米韓同盟も弱体化させつつある状況は、とても好ましい状況といえる。この状況下で、中国が韓国に対してとるであろう戦略といえば、オフェンシブ・リアリズム(攻撃的現実主義)に基づき考えると、「ベイト・アンド・ブリード(誘導出血)」戦略と「ブラックメール(脅迫)」戦略との併用ではないかと思う。

「ベイト・アンド・ブリード(誘導出血)」戦略とは、2国間の争いを誘導する戦略だ。今回の場合にあてはめると、中国は日韓の軋轢がより大きくなる方向へ誘導する行動をとると考えられる。例えば、中国の言動というのは日本にも韓国にも一定の影響を与えるので、中国が今回の日韓の軋轢について(あとでどうとでも釈明ができるあいまいさを残しつつ)日本の立場に理解を示したとする。韓国の文在寅政権はどう反応するだろうか。自らの正義を示すため、新たな手段にでてくることはありうると思う。そして日韓の軋轢は、次の段階へエスカレーションするかもしれない。
もっとも、この戦略は、かなり難易度が高いという点は指摘しておきたい。中国がどう動くのか私は注視している。

ブラックメール(脅迫)」戦略とは、文字通り「脅す」こと、すなわち強い圧力をかける戦略だ。今回の場合にあてはめると、韓国がアメリカの信頼を失って孤立したときこの戦略の効果は大きくなる。そのとき、例えば、過去、中国は、THAAD配備問題をめぐって韓国製品不買運動、中国人の韓国旅行の販売停止などを行ったが、そういった圧力をかけていくだろう。あるいは、より直接的な軍事的な圧力をかけるかもしれない。

韓国の文在寅政権のGSOMIA廃棄は、アメリカの怒りと不信をかっただけでなく、そのこと自体が中国からの「ベイト・アンド・ブリード(誘導出血)」と「ブラックメール(脅迫)」を韓国へ引き寄せる原因となる。
日本と韓国に対しては、「遠交近攻」が中国の基本戦略になると思う。


ロシア

ロシアも、中国と同様に、米韓同盟の弱体化は、歓迎すべき事態といえる。
ただし、ロシアの関心は、どうしても対EU中心にならざるをえず、東アジアにおいて中心的役割を演じる意欲には欠けるだろう。
したがって、時に中国と協同したり、あるいは他国と歩調をあわせるなど、ロシア単独ではない方法で、自国の国益を得ようとすると思う。
www.bbc.com


北朝鮮

北朝鮮の戦略も明確だ。中国とは「血の盟約」があるとはいわれているが、中国に従属することは拒否しつつ、金一族による支配体制を維持するために行っているのは、核兵器開発など徹底した軍国化である。
北朝鮮の戦略は、オフェンシブ・リアリズム(攻撃的現実主義)の用語を使えば、徹底した「内的バランシング」と言えると思う。
韓国の文在寅政権は、しきりに経済援助を北朝鮮にもちかけているが、北朝鮮文在寅政権を信じていないようだ。それもそのはずと思う。もし文在寅氏のいう「ワンコリア」となった場合、金一族による支配体制維持はより難しくなる。それは北朝鮮の戦略目標と根本的に相いれない。

その現状を鑑みつつ、過去、核兵器を開発できた国で、核兵器を破棄した国は1か国しかないということを思い出すべきだ*4
北朝鮮は、核兵器を破棄しないだろう。核兵器の破棄は、北朝鮮朝鮮戦争以来貫いてきた「内的バランシング」戦略を決定的に毀損する。それこそ、金一族の終わりにつながる。そんな選択を北朝鮮がとるはずがない。
北朝鮮は、核兵器保有したままで、アメリカと折り合える水準を探っている。

アメリカは、ICBMのようにアメリカ本土を狙えるミサイルや、IRBMのようにグアムを狙えるミサイルの実験には強く反発する。その一方、アメリカは、韓国を射程にする短距離ミサイルには反応しないことがわかってきた。北朝鮮にしてみれば、アメリカとの折り合いがつく可能性がみえているのに、孤立している韓国の文在寅政権と組む必要はない。
北朝鮮の外交の特色は、他国がどうであろうと「我が道を行く」であり続けたことを覚えておきたい。


まとめ

北朝鮮との統一に関する予想
  • 韓国は北朝鮮との統一を外交の中心においている。
  • 北朝鮮核兵器を取り込み軍事力も経済力も強い「ワンコリア」を目指しているふしがある。
  • しかしそのような強い「ワンコリア」は、周辺国のどの国も望まない。
  • 韓国との統一は、北朝鮮も望んでいない。
  • よって文在寅政権の統一構想は実現しない可能性が高い。
アメリカと中国の覇権争いに関する予想
  • 今後、アメリカと中国との覇権争いはますます激化する。
  • 文在寅政権の北朝鮮との統一に全てをかけた一連の外交により米韓同盟は弱体化しつつある。
  • 今後、中国、ロシアは、米韓同盟の弱体化につけいるよう動く。
  • アメリカと中国との覇権争いがさらに激化し、アメリカと中国との軍事的な緊張が高まると、米韓同盟は瓦解する可能性が高い。



日本がとるべきこと、やってはいけないこと

中国の圧力は韓国へ向かう

アメリカと中国が比較的良好な関係を維持している場合、例えばオバマ政権時代では、朴槿恵政権は中国と協同したいわゆる告げ口外交で日本を非難しつつ、中国の覇権を目指す圧力を日本へ「バック・パッシング」できた。
しかし、トランプ政権にかわり、アメリカと中国が覇権争いが激化した現在、文在寅政権は、朴槿恵政権以上に日本を非難する外交を展開しているが、その結果、中国の圧力は日本には向かわず、韓国へその圧力を誘引することになろう。そして韓国は孤立していく。
この差が生じた原因の第一は、アメリカと中国との覇権争いが始まったことであるが、覇権争いが激化すると韓国に圧力が加わるのは、次項にあげる3つの弱点が韓国に存在するためと指摘しておきたい。
「ベイト・アンド・ブリード(誘導出血)」戦略も「ブラックメール(脅迫)」戦略も、弱点を抱える国に効果を発揮しやすい戦略だからだ。

韓国の弱点
  • 外交問題の根本の考え方で国内の対立が大きい。

国内問題について、様々な意見があり、その意見対立が大きいという国はままあると思う。しかし、外交問題について、どの国と同盟し協力していくかという根本でその考え方に大きな相違があり、その考えを持つ政治勢力の力が拮抗し、対立が激しいのは、韓国の弱点の一つと思う。同盟すべきは、アメリカなのか、中国なのか。北朝鮮は敵国なのか、仲間なのか。そういった根本的な意見相違は、他国からつけいられる「隙」を生じさせる。

  • 安全保障体制の構築には時間がかかる。だがその時間的余裕を韓国は有していない。

どんな同盟もその同盟を機能させるには、その同盟国同士の信頼関係が必要だ。そして信頼関係は、そんなに短い年数では醸成できない。
統一(合併)はさらに難易度が上がる。
同盟とは、安全保障などお互いに協力できる分野を絞りつつ協力を約し、関係を作っていけるが、統一(合併)は経済や生活のすべてに影響する。それは安全保障の分野にとどまらないし(逆に安全保障問題が小さくみえるほど)大きな問題を生じさせる。その解決には、もっと長い時間が必要になる。
しかし、韓国の文在寅政権は、世紀に1度しかないような新たなパワー(中国)の勃興と既存パワー(アメリカ)との覇権争いという激動の時代が始まったその時に、地理的にその真っただ中で安全保障体制の大変換を行おうと考えている。当然時間が足りない。その時間の足りなさは、必ず他国から付け入られる「隙」を生じさせる。

  • 権力者とその家族に権力と富が集中している。

他国がつけいろうとするならば、私腹をこやそうとする権力者を協力者にし、意のままに操ることができるようにできれば最高だ。
権力者とその家族に権力と富が集中した状況は、その権力者にとりいろうとする他国にとって格好の「標的」になる。

日本がやってはいけないこと

端的に言えば、前述した韓国と同じような弱点を持ってはいけないということ。

  • 例えば、非武装中立という非現実的な主張や、日米同盟を破棄すべきというようなその後の安全保障体制の構築に時間が必要な主張を持つ政党、議員を多数派にしてはいけない。それらは、こういう激動期ではなく時間があるときにのみ許される議論だ。
  • 例えば、外交問題を国内の政局のために利用する、外交政策の建設的な議論ではなく大臣の辞任を求め政権の弱体化を狙うような政治家の言動を許すべきではない。外交方針の根本的な不一致は外国の利するところとなる。こういう激動期には、政府の方針に協力しつつ、その政策について建設的な議論を行うべきものだ。
  • 例えば、たとえ国内に居住していようとも、外国人、外国の機関や企業の政治的な献金、あるいは収賄を許してはいけない。権力者の金に対する汚さは、外国がつけいる格好のターゲットであり、亡国の第一歩といえる。これは激動期か否かにかかわらず、許してはいけないことだ。

ただ、幸いに、日本の政治や言論の状況は、上記を許そうとはしていない。その点は安心しているし、それは維持しなくてはならない。

日本がとるべきこと
  • 日本の力を過信しない。

どんな国もそうだが、国の力は限定的だ。他国を意のままに動かすことなどできないと知っておかねばならない。
日本も同じで、日本には韓国を動かす力はない。日本がどんな行動をとろうとも、韓国の意図に反することを韓国に強いることはできない。
特に、文在寅政権は、自らの正義を信じ、他国との妥協を許さない性質を持っているので、文在寅政権が要求してくる内容をあきらめさせる、あるいは妥協させることはできないと割り切らねばならない。
文在寅氏は正直な人とは思う。だから彼の発言の奥に、なにか違うメッセージを持っているというような幻想は持つべきではない。文在寅氏の言は、そのままその通り受け取るべきだ。

  • レッドラインは絶対に守る。

日本が韓国に従属するような妥協をしてはいけない。文在寅氏の要求が日本には受け入れがたいものであれば、平行線を保つしかない。

  • 関係国の動向を予測しその予測をもとによりよい日本の選択を見つける。

これにつきると思う。
残念ながら、韓国が、アメリカ、日本、韓国という3か国の協力体制の枠組みの中にいつまでもいるということは、期待できない。
私は、その韓国の選択が、よい悪い、あるいは正しい正しくないと評価することはできない。韓国は、韓国の考えと事情によって、日本とは異なる選択をするのが当然だ。

韓国が長らく同じ陣営で協力してくれたことに感謝しつつ、
韓国に「さようなら」を言う日に備えよう。



*1:はてなブックマークコメント」のこと。略して「ブコメ」とよばれている。ネットスラングの一つ。

*2:でも星は一つももらえなかった。それは残念に思っている。

*3:リンク切れになっていたので、リンク先をアーカイブのものに変更した。2019/11/7

*4:当初「核兵器を破棄した国はないということを思い出すべきだ」と記述していましたが、南アフリカに1例のみ存在するという指摘を受け、修正しました。指摘いただいたcider_kondoさん、ありがとうございました。