日はまた昇る

コメントを残したい方は「はてなブックマーク」を利用してください。

ウクライナ戦争をエスカレーションさせてはいけない

https://www.understandingwar.org/sites/default/files/DraftUkraineCoTMarch2%2C2022.png

はじめに

この投稿はロシアを擁護するものでは全くない。プーチンの戦争は21世紀の蛮行として長く歴史に残るのは間違いない。
ただその前に、この投稿ではロシアの軍事的なオプションを検討し、それによってウクライナがどんな被害を被る可能性があるかを検討したい。
プーチン許すまじ」
この気持ちは本当にその通りと思うのだが、だからといって「ウクライナがんばれ」とおいそれとは言えない。
ゼレンスキー大統領をはじめ、ウクライナ国民の愛国心と勇猛果敢さに畏敬の念を持つ。だからこそ、これから起こると予想する悲劇が少しでも小さくなるようにと願う。
なお、この投稿では、敬意を払いたくないと思った人物には敬称をつけていないので、ご容赦いただきたい。
 

停戦交渉(事実)

2022年2月28日、戦争5日目にメジンスキーをトップとするロシア代表団と、レズニコフ国防相ウクライナ代表団との間で停戦交渉が行われた。ロシアとウクライナの主張の差は大きく、物別れに終わった。荒っぽく言えば、ロシアの主張は「降伏せよ」であり、ウクライナの主張は「ウクライナの勝利を認めよ」なので、折り合いがつかないことは最初から分かっていた。だが次回協議を開催するという合意ができたことはよかった。ただ残念なことだが、この会談終了は、ロシアによるもっと残虐な作戦の号砲となるだろう。
www3.nhk.or.jp
 

自分語り

これを読む人に私の個人的なことなんて全く興味はないだろうが、どういう気持ちでこの投稿を書いているか説明しておきたい。
生まれる前の出来事だったから私は日本の先の戦争もキューバ危機も知らない。だが物心つく頃もまだ世の中に核戦争の恐怖が感じられる頃に育った。その後成長しゼミ全入の大学に入学したので、紆余曲折の結果、国際関係論のゼミを選んだ。
そして幼い頃からの「どうやったら核戦争が起きずに済むんだろう?」という疑問を卒論に選んだ。卒論はタネ本を丸写ししたようなしょうもないもので私の黒歴史ではあるが、それ以来ずっと「戦争はどうやったら回避できるのか?」ということを考え続けている。もっとも私のポンコツな頭脳ではそんなことは未だわからず年を重ねている。
現実はウォーゲームではない。
損害は大きかったが作戦目標を達成したので辛勝だ。そんなことがあるはずがない。
戦場にあるのは残虐な殺戮と破壊だけだ。今回のウクライナ戦争はそういう場面が広く伝わっているように思う。だからショックを受けた人も多いのではないかと思う。
私は専門家ではないので、ものすごくという量ではないが、上記の理由から一般の人よりも多く戦争や戦場について調べそれを目にしてきたと思う。
どの戦争も等しく残虐だ。そして今回のウクライナ戦争も他の戦争と同じように残虐だ。残虐なものに触れすぎたせいなのか、私は今回の戦争も怒りの気持ちは沸いてこない。ただひたすら悲しい。
祖国が戦場になって勝利なんてありえない。祖国防衛という観点で言えば、戦争を回避し続けること以外の勝利はない。誤った平和であろうと正義の戦争に勝る。そう思っている。
私は、10年ほど前から国際関係論の攻撃的現実主義という考え方に基づいて国際関係を分析するようになった。
なぜ攻撃的現実主義に行きついたかというと、アメリカがイラク戦争を開始する前、リアリストたちがイラク戦争開戦に猛反対しネオコンと激論を交わしていた事実*1を知ったからだ。その中心にいたのが攻撃的現実主義の権威、ミアシャイマー教授だった。
そこから興味を持ち調べ始めた。
戦争を回避するには、将来を予測しないといけない。
将来予測が可能な理論かつ戦争回避に繋げる理論。攻撃的現実主義はその2つの条件に合致することがわかったので勉強し、今はリアリストの端くれぐらいにはなったように思っている。
攻撃的現実主義については、過去に投稿を書いている。よかったら読んでみてほしい。
thesunalsorises.hatenablog.com
thesunalsorises.hatenablog.com
 

予測ルートとの比較(分析)

私は2月27日にロシア軍の侵略ルートなどを予測・分析した次の記事を投稿した。
thesunalsorises.hatenablog.com
その記事の中で、私はイギリス国防省が予測したルートを説明していているのでよかったら読んでみてほしい。実は私もイギリス国防省のツイートが出る1日前にほぼ同じルートを予測しはてなブックマークに書いている。
その予測侵略ルートは次の通り。


この予測ルートと、Institute for the Study of Warというシンクタンクウクライナ戦争の戦況を分析しているので、3月2日の戦況と比較した。そうするとロシア軍の侵攻はイギリス国防省の予測とほぼ一致していることがわかる。
つまりロシア軍は遅延を起こしているものの当初の作戦案通りに侵攻を続けているということだ。まだロシア軍には予備兵力もある。
thesunalsorises.hatenablog.com

 

市街戦の激化と民間人の犠牲の増大(現況)

ロシア軍は当初48時間でこの戦争が終結すると考えていたふしがある*2。しかし電撃戦には失敗した。ロシア軍は士気も練度も低い部隊が多いようで、キーウ攻撃部隊はキーウ中心部への突入を一時停止した。私もInstitute for the Study of Warの分析に同意で、今後ロシア軍はキ-ウを包囲しようとするとみる。
また、キーウの他でも、ウクライナの各都市で攻防戦が行われている。
東部の要衝ハルキウではまだ本格的な市街戦は行われていないが、その準備段階の砲撃やミサイル攻撃が続いている。
下の写真は、シリア内戦で破壊されたアレッポという町の写真だ。露悪的な言い方で申し訳ないが、私たちはこれから美しいキーウやハルキウなどが、このような瓦礫となっていく過程を見ることになる。

f:id:the_sun_also_rises:20121011175940j:plain
アレッポ 出典:Wikipedia

市街戦での防衛側は遮蔽物の陰に隠れ攻撃側に対し射撃を行うので、市街戦は防御側有利と言われている。
攻撃側が防衛側の兵士1人1人を狙って射撃するような方法だと、攻撃側に多くの損害が出る。そこで攻撃側は防衛側が隠れ潜んでいると思しき建物を建物ごと破壊することで前進しようとする。その結果、市街は瓦礫の山となっていく。建物に民間人がいる場合もあるがこの攻撃は民間人と兵士の区別をしない攻撃なので、民間人の犠牲もうなぎのぼりに増えていく。これはロシア軍だけが残虐だからだというわけではない。アメリカ軍もイラクなどで同じことをした。もっと容赦なく。どの国も戦争になれば同じことをする。例外を知らない。
既に爆撃、砲撃は開始されているが、さらに激しくなる。
このまま戦闘が続けば、キーウは外周から破壊され切り取られていく。ハルキウは中心部が破壊されるだろう。キーウの物資が枯渇したとき、この戦争の局面は大きく変わるだろう。
www.youtube.com
 

東部戦域の大包囲(予測)

さきほど紹介した2月27日の私の投稿にも書いたが、東部戦域のロシア軍の目的は、このドンバス正面のウクライナ軍主力を大包囲し、指揮命令系統を破壊し補給線を切り壊滅させることだと考えている。そして現在攻撃が行われているハルキウと、ウクライナ側の東部戦域の軍本部があるドニプロが焦点となるとみている。
この2都市をロシア軍が押さえた時、ウクライナ軍主力の大包囲は完成する。包囲戦は虐殺に近い状況になる。それは2014年のドンバス戦争で起こったイロヴァイスクの戦い*3をみればわかると思う。もし大包囲が完成すればウクライナ軍の反攻能力を徹底的につぶすため、ロシア軍は容赦ない攻撃を加えると思う。
 

ベラルーシの動きと南下作戦(予測)

更に気になるニュースが流れている。
www.msn.com
ベラルーシが国境に軍を増派している。一時、ウクライナへ既に侵入したように報道されたがこれは誤報だったようだ。ベラルーシのルカシェンコはその意思を否定している。もっともルカシェンコが信じられる人物かと聞かれれば、私は即座にノーと答えるだろうけど。
この動きから懸念される攻撃がある。下図の青矢印のような攻撃ルートだ。この攻撃がもし行われるなら、ロシア軍、ベラルーシ軍共同になるのではないかとみている。
これはウクライナ西部の中心都市であるリビウと首都キーウの連絡を切る作戦になる。アメリカやEU各国がウクライナに武器の支援をする動きがあるが、その武器をキーウに運ばせないための攻撃だと予想している。だが、戦争が始まって以来、この地域には隣国ポーランドに逃れようとするウクライナ国民が殺到している。この作戦が実施されると民間人の被害がさらに増えることになる。

f:id:the_sun_also_rises:20220303090229j:plain
キーウとリビウの連絡を切る作戦

 

核兵器の問題(予測)

核兵器の本質

次にウクライナ国民と軍の徹底的な反撃でロシア軍の作戦が失敗に終わった状況を仮定して考えてみたい。リビウと首都キーウの連絡は確保されキーウには欧米からの支援兵器がどんどん到着する。キーウのウクライナ軍はロシア軍の包囲を破り押し返している。そして東部戦域の大包囲は完成せずウクライナ軍主力は健在だ。そんな状況を仮定する。その状況であれば、十分な武器弾薬等の物資さえ集積できれば、ウクライナ軍は反撃を考えるだろう。
普通の国同士の戦争であれば、反攻勢によってウクライナの勝利がみえてくる。だが残念なことだがロシアには核兵器がある。
核兵器の本質は恐怖だ。相手に恐怖を与えることで外交や戦争を優位に展開する。そのための兵器だ。既にロシアは核戦略軍が臨戦態勢に入っている。なぜ臨戦態勢に入らせたかその目的は自明だろう。ロシアが2月中旬に核兵器使用を想定した軍事演習を計画していたことはわかっている。演習が行われたかは不明だが行われたのではないかと私はみている。ロシアの意思を疑うべきでない。
www.nikkei.com
そして核の恫喝を行っても敵が恐怖を抱かない場合、かつ敵からの核反撃の可能性が少ない場合、核兵器の実際の使用が俎上にあがってくる。

ロシアの核ドクトリン=エスカレーション抑止?

ロシアの核ドクトリンは、エスカレーション抑止論だと考えられている。私はロシアのエスカレーション抑止論についてさわりしか知らないので、ここでは小泉悠氏の次の論文に基づいて考えることにする。

ロシアの核・非核エスカレーション抑止概念を巡る議論の動向

この論文で『「エスカレーション抑止」の諸段階』としてまとめられている表から地域戦争の項を抜粋してみた。

・多数の PGMを用いた敵の目標に対する攻撃
・敵部隊に対する単発または複数の戦術核兵器の使用
戦略核兵器または戦術核兵器のデモンストレーション的な使用
・単発の核攻撃につながることを確信させる行動

エスカレーション抑止については、ロシアはそれを採用していないという懐疑論もあるようで、実際のところどのようなドクトリンで核が運用されているのかは不明である。
しかし、エスカレーション抑止についてロシア国内で議論されていることは間違いなく、ほぼ全軍に近いロシア軍が潰走するというロシアの国家を揺るがす事態を目前にして、エスカレーション抑止論を(急遽)核運用ドクトリンに適用しこれに基づいて核兵器を使用するというシナリオは、荒唐無稽とはいえないように思う。
その時、可能性が高いのは「敵部隊に対する単発または複数の戦術核兵器の使用」のように思う。
現在起こっているウクライナ戦争は、1962年のキューバ危機以来の核戦争の危機だと私は考えている。狙われているのは日本ではないので日本国内では今一つ危機感がないようだが、ロシアによる核攻撃の可能性を危機感をもって常に考えておく必要があるだろう。
www.yomiuri.co.jp
 

用兵之道、攻心為上(予測)

三国志魏延の言として残る「用兵之道、攻心為上(用兵の道は、心を攻めるを上と為す)」が、私には唯一ウクライナが勝利できる可能性のある方策のように思える。この方策が時間的に間に合うのかというと、どんなに甘く見積もっても間に合う可能性は低いと思うが可能性はゼロではないと思う。
これはロシア人の厭戦気分を大きくし、軍事作戦の遂行を困難にすることでロシア軍を撤退に追い込む作戦だ。事実、ロシア軍の士気は低く、降伏や脱走が相次いでいるという情報もある。
だがこの方策にもさきほど書いた核兵器の問題が立ちはだかる。つまりロシアの核戦略軍にも厭戦気分を拡大させなければ、核兵器の使用可能性をゼロにできないということだ。核戦略軍はウクライナから離れたところにいるので、ウクライナでのロシア軍の被害を目の当たりにすることはない。ロシアの国家指導者への忠誠心が認められなければ核戦略軍に配属されるはずもない。
ウクライナがとっている行動は、攻心為上の作戦として創意工夫に満ちていると思う。この作戦の最大の敵は時間だ。
www.afpbb.com
 

ウクライナをもてあそぶアメリカ(分析)

オバマの戦争

ウクライナは2014年に起こったクリミア併合とドンバス戦争から8年間ロシアと戦っている。今回のプーチンによる侵略は、局地戦だったドンバス戦争がウクライナ全土の全面戦争へ拡大したものと私は認識している。
クリミア併合とドンバス戦争自体はロシアの暴挙で非難すべきものであるが、一方ロシア側にしてみると、ユーロマイダン革命で当時の親ロシア派のウクライナ大統領ヤヌコーヴィチが失脚しロシアに亡命せざるをえなかったことの意趣返しといえる*4。ユーロマイダン革命の裏面で当時のアメリカ大統領オバマがその騒乱の初期から強く関与したことは広く知られている。
オバマは当時オバマドクトリンと呼ばれた不介入主義をとっていた。この不介入主義はオバマの前任であったブッシュ・ジュニアイラク戦争のような過剰な他国介入に対する反省から行われ、それ自体は批判できないものと思う。
だが不介入主義をとっていたのにかかわらず、ウクライナのユーロマイダンには介入したのはなぜか?
確かにヤヌコーヴィチはウクライナ国民からの大きな批判を浴びていたが、ウクライナの民主的な選挙によって選ばれた大統領であることは忘れてはいけない。民主的に選ばれた政権の転覆工作をオバマが行ったのはなぜか?
プーチンがこれに対して大きく反発したのは理解できる。
そしてクリミア併合とドンバス戦争を起こした。
当時のウクライナ軍は装備が旧式化しており弱体化していた。ユーロマイダン革命でできたばかりの政権はオバマに援助を求めたが、オバマウクライナ軍に資金援助と訓練での協力は行ったものの武器供与は行わなかった。
www.cnn.co.jp

リアリストはオバマ外交政策が戦争を招くと強く異を唱えた

自分語りの項に書いたミアシャイマー教授だが、クリミア併合とドンバス戦争が起こると即座にオバマの政策を強く批判する論文を書いた。しかしオバマは政策を変えなかった。そしてその警告は、オバマの後継者であるバイデンが大統領になった今、現実のものとなった。
geopoli.exblog.jp

去年の11月の状況に目を移すと、当時のウクライナのヤヌコビッチ大統領は、ウクライナの西側との統合やモスクワの影響を大きく減らすための協定にEUと合意しそうな雰囲気であった。
プーチン大統領は、それに対抗するためのウクライナにたいしてさらに有利な合意を提示し、ヤヌコビッチ大統領はそれを受け入れている。そしてこの合意が、親欧米感情が強く、モスクワ政府への反感が強いウクライナ西部で、デモを発生させることにつながったのだ。
ところがその後にオバマ政権は、このデモを支援するという致命的なミスを犯した。これによって危機はエスカレートし、ヤヌコビッチ大統領を打倒し、キエフに新しく親欧米政権が誕生したのだ。
(中略)
オバマ大統領はロシアとウクライナにたいして新しい政策を採用すべきだ。それは、ロシアの安全保障面での権益を認めつつ、ウクライナの領土の統一性を支持して、戦争を防ぐというものだ。
このような目標を達成するためには、アメリカはジョージアウクライナNATOには参加しないことを強調しなければならない。そしてアメリカが将来ウクライナで行われる選挙に介入しないことや、キエフの超反露的な政府に同情しないことを明白にすべきなのだ。

トランプはウクライナにディールを持ち掛け武器を売った

トランプはウクライナには冷たかった。とはいえ、トランプお得意のディール*5によってオバマが供与しなかった強力な武器をウクライナに売った。その中に今回の戦争でウクライナ軍を支えているジャベリン対戦車ミサイルもあった*6。トランプはウクライナを自身の政争の道具にしたが、プーチンとは気が合ったのでウクライナは小康状態が続いた。
newsphere.jp

バイデンはNATOの東進にこだわりプーチンの戦争をこまねいた

さきほどユーロマイダン革命からの戦争をオバマの戦争と書いたが実際に動いたのは当時副大統領だったバイデンだった。バイデン自身もトランプと同様にウクライナ疑惑を抱えている。
プーチンが2014年のバイデンの行動を忘れているとは思えない。当然プーチンは強く反発した。
1年前もロシア軍をウクライナ国境に集め、プーチンはバイデンにNATOを拡大しないことを要求した。バイデンは拒否した。
そこでプーチンは1年間かけて作戦計画を立案し、再度ウクライナ国境にロシア軍を終結させた。今度は極東からも部隊を移動させ、ロシア軍のほぼ3分の2、つまり使える兵力のほとんどを集め、バイデンにNATOを拡大しないことを要求した。バイデンもこのままでは戦争が起こるとわかっていたようで、プーチンに対する譲歩の代わりに、ウクライナに戦争が始まると警告を発した。
その上でバイデンはNATOを拡大しないようにというプーチンの要求を拒否した。そしてウクライナ戦争が起こった。
www.bbc.com
 

ヨーロッパの道化師たち(イギリス、フランス、ドイツ)

ウクライナNATOに加入するかどうかというのが、この戦争を引き起こした最大の要因である。そのNATOを構成するヨーロッパの主要国、イギリス、フランス、ドイツの動きはどうだったか?

イギリス

一番まともな反応を示したのはイギリスだった。イギリスは2015年以降、ウクライナ軍の再建に力を貸してきた。そしてプーチンが本気で軍を終結させていることがわかり、戦争が始まる前に武器を提供した。
武器というのは、必要な時に必要な場所になければ全く役に立たない。抑止の側面からも武器援助するなら戦争が始まる前に行うべきだ。イギリスはそうした。
www.bbc.com
昨日、ポーランドを訪問したイギリスのジョンソン首相に対し、ウクライナのキーウから逃れてきたばかりの質問者が涙ながらに訴えた会見をみてほしい。
飛行禁止区域の設定とは、NATOの戦闘機によってロシアの戦闘機等を撃墜することを意味する。それは本当に第三次世界大戦の幕開けとなる。
この訴えに、ジョンソン首相はきっぱりとできないと伝えた。質問者は失望しただろうが、できないことをできないときちんと説明することはこの緊急時には最大の誠意だと思う。
www.youtube.com

フランス

かねてからプーチンと親交があると自負していた大統領のマクロンは危機が高まるとモスクワへ飛びプーチンと会談を行った。そしてプーチンに嘘をつかれ裏切られた。それでも停戦調停に意欲を示してはいる。だがウクライナもロシアもフランスには頼っていない。
www.cnn.co.jp

ドイツ

ドイツはヘルメットを送った。
www.jiji.com
 

ウクライナの蹉跌

世界には信じられる国、信じられない国というのがある。
信じられる度合いで5段階に分けたら、最も信じられないというレベルだと私が分類するのは3か国だ。中国、北朝鮮とロシアになる。
一方、ウクライナも信じられる度で5段階中4番目、つまり中国、北朝鮮、ロシアよりましだが、信じられない国という分類をしている。
ウクライナは後に中国空母遼寧となるヴァリャーグを中国に売却した。この売却がなければ、今も中国は作戦行動ができる空母を持っていない可能性が高い。ウクライナは中国に騙されたというかもしれない。しかしそれは信じがたい。この空母売却は怪しいところ満載の売却劇だった。この売却のおかげで将来的な中国からの侵攻を日本は想定しなくてはならなくなった。
またウクライナは中国に戦闘機エンジンの提供および技術援助も行った。ウクライナには優秀な軍事産業がある。優秀な戦闘機エンジンが作れる国は本当に限られる。日本はまだ高性能な戦闘機エンジンを作れない。中国も戦闘機のエンジン開発に苦戦している。そういう中にエンジンの供与と技術援助が行われた。ウクライナの中国軍の近代化に対する貢献はとても大きいとみている。
ウクライナ人には「ロシアに軍事技術援助し兵器を売却している国を信じられるか?」と逆に問えば、私がなぜウクライナを警戒し信じられないと考えているか理解してもらえるのではないか。
今回のロシアの侵略戦争は、ウクライナの自業自得と言いたいのではない。
ウクライナは、自国の地政学的価値、そして危うさに無頓着だったと言いたいのだ。近年、中国が触手を伸ばしていた軍事産業を国有化するなど、今では中国への軍事技術移転を止めるべく動いているが、過去は変えられない。
NATO加入を求めつつ、中国の軍事力向上に協力する。
NATOアメリカがなくてはなりたたず、一方中国はアメリカの最大のライバル国だ。刻々と深刻度が増す台湾問題にウクライナも間接的に関わっているということを理解してほしい。兵器を売るということはそれを恨む国がでてくることでもある。
台湾がこのウクライナ侵略戦争について、微妙な態度をとり続けているのは、ウクライナが中国と強く結びついていることを知っているからだ。もしロシアがバルト三国、特にリトアニアに侵攻していたとしたら、台湾は大きな非難の声を上げるはずだ。
ウクライナ地政学的にとても難しい位置にある。舵取りは難しい。その失敗の代償がこの惨禍だとすると、その代償はあまりにも大きい。
 

力の信奉者、ロシア。そして中国

ロシアはソ連の成立以来、100年以上、力の信奉者であり続けている。ロシアは現在の国際法体系そのものに不満を持っている。力を背景に今後も現行の国際法体系を自国有利に変化させようとするだろう。そこに他国が交渉する余地はない。それでも世界はロシアと付き合い続けなければならない。
プーチンが悪いと個人に責を求めても意味がないと思う。
プーチンが排除されても小プーチンが現れる。ロシアはそういう地政学的位置にある国だと認識している。
そして中国も同じだ。
 

戦争は誤謬と誤算の産物

ここまで長々と書いたが、関係国がそれぞれ自国の都合で勝手に動いた結果、この侵略戦争という終着点に行きついたということを説明したつもりだ。戦争というのは、関係国の誤謬と誤算が積み重なって発生するものだと思う。これは私のポンコツな頭脳でもたどり着いた戦争の本質の一つと思う。
問題は「どうやったら関係国の誤謬と誤算が起こらなくなるのか?」という命題なのだが、これの答えが全然わからない。それがわからなければ意味ないのにね。ポンコツ頭脳なので許してほしい。
それでも、今回のウクライナ侵略戦争が回避できたかもしれない可能性は、ただ一つ、バイデンとプーチンの会談にあったのではないか?と感じている。検証も考察も不足しているので、今後の分析が待たれるところだ。
 

経済制裁

民主主義の人身御供

プーチン侵略戦争をはじめたことで、それまで日和見だったヨーロッパの各国が、まるで鶏小屋に狼を入れたような大騒ぎになった。そして次々と制裁が決まり、軍事援助が表明されていった。
軍事援助するなら開戦の前に行ってくれよと憎まれ口のひとつでも言いたくなるし、このヒステリックさは地域の安定のためにならないと危惧も持つ。
だが一斉に動くヨーロッパ諸国をみると、もしかすると、これこそアメリカがプーチンの要求であったNATO不拡大を拒否した理由かもしれないと感じた。
ウクライナの戦火がヨーロッパ諸国を一つにまとめた。ウクライナは世界中の同情を集め称えられる。兵器援助、資金援助が行われる。難民の保護も約束される。だが肝心の軍隊は派遣されない。
また露悪的な表現になるが、ウクライナはまるでヨーロッパの民主主義の人身御供に捧げられたようにみえる。

経済制裁の効果

これらの経済制裁が効果を発揮するまでには、少なくとも数か月、遅ければ数年かかるだろう。
そのときまでウクライナ戦争が続いていたら、それこそウクライナ全土が瓦礫の山となってしまう。それまでには停戦せねばならない。つまり経済制裁ウクライナ戦争の終結には直接の効果を表さないだろうと思う。

日本の安全保障の立場から

しかし日本の安全保障の立場に立つと、この経済制裁は歓迎すべきものと思われる。
民主主義国を侵略すれば、それまでバラバラと思われた国民が一致団結して国を守る。世界も一致団結して自国への悪影響を覚悟して経済制裁を発動する。
これは日本がもっとも心配すべき侵略、すなわち中国による台湾侵攻の抑止のために資すると考えられる。中国が台湾侵攻を行う際のリスクが更に高まる。これは日本にとって奇貨であろうと思う。