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ウクライナ戦争は第二段階へ

https://understandingwar.org/sites/default/files/Kyiv%20Battle%20Map%20Draft%20March%2020%2C%202022.png
(出典:IGW)

ウクライナの善戦、キーウは陥落していない

3月6日に次の投稿を書いた。それからもう2週間。様々な動きがある中で戦争は続いている。
thesunalsorises.hatenablog.com

上記の投稿を書いた2週間前。私は本気でキーウ(キエフ)の陥落を心配していた。キーウ攻防戦での破壊で多数の犠牲がでることを恐れていたし、キーウ陥落後の更なる犠牲を心配していた。
だが私の予想は外れ、キーウは持ちこたえている。ロシア軍の攻撃は停滞している。このままならキーウは持ちこたえるように思える。そのことは喜ばしい。
しかし遠距離砲撃と空襲によるキーウの破壊は進み悲劇は続いている。キーウ攻撃はまだまだ終わらない。

もっと大きな惨劇の場となったのは、南部のマリウポリだ。多数の犠牲者に言葉を失う。マリウポリはロシア軍が完全包囲しており、ロシア軍が航空優勢をとっているようだ。こうなるとロシア軍は残虐な破壊を行う*1チェチェンでもシリアでもそうだった。マリウポリは陥落するという観測が流れている*2

一方、ロシア軍は明らかに兵站に問題を抱え、東部と南部の一部の地域を除き航空優勢をとれずにいる。その結果、ウクライナ軍の反撃で消耗を続け、かなりの被害がでているようだ。
ロシア軍は極東に配備していた部隊を引き抜き、オデーサ(オデッサ)攻撃の予備部隊と見られていた海軍歩兵部隊も東部に投入しており、戦争を維持しようとしている。外国人傭兵も投入している。だが集中的に部隊を投入するのではなく、広く分散して部隊を投入しているようなので、大きな侵攻ができずにいる。
戦線は膠着し、消耗戦の段階に入ったと思う。
 

ロシアの継戦意思

この戦争の敗北はプーチンの失脚(暗殺)を意味する段階まで来た。プーチンに後はない。情報統制を強め、ロシア国内の戦争反対の声を力で封じ込めている。
ロシア国民の多数はプーチンの流す偽情報を信じ、ウクライナ戦争を支持している。
ロシア国内では経済制裁による問題が起こっているようだが、それが嫌戦ムードにつながってるかというとまだ疑問符がつく。
総合するとプーチンは戦争をまだ続けることができる国内情勢だと思う。
 

破壊と消耗、化学兵器と核攻撃の可能性

上記から総合すると、今後起こるのはロシア軍による無差別の都市攻撃と、ウクライナ軍の反撃によるロシア軍の消耗だろう。
ロシアは民間人の被害を大きくしてウクライナ国民の継戦意思をくじこうとするだろう。ウクライナの民間人の犠牲がますます増加する。先は見えない。
一方でロシア軍は消耗が続き、士気は低下し、壊走の可能性が増加していく。
ロシアの勝利はなくなったと思う。
しかしそれは直ちにウクライナの勝利を意味しない。
ロシア軍は敗北をさけるため、化学兵器核兵器を使うのでは?と強く懸念されている。
ロシア軍は「キンジャール」という核兵器搭載可能なミサイルでウクライナ西部の軍事施設を攻撃した*3
軍事的にみるとこの攻撃が「キンジャール」である必然性はないので、これはロシアによる核使用の脅しのメッセージとみるべきではないだろうか。
www3.nhk.or.jp
 

NATO軍の増派が必要だ。

もし化学兵器核兵器が使われウクライナの抗戦意思が挫かれロシア優位の停戦協定が結ばれれば、それは新たな世界秩序の始まりとなるだろう。
それは軍事力に屈服し軍事力で現状を変えることを容認する世界だ。
それでいいのか!と強く訴えたい。
その世界の行きつく先は第三次世界大戦ではないのか?と広く聞きたい。
ウクライナ軍が持ちこたえている状況で、ウクライナの政体と軍を維持したまま停戦する。それに向けてNATOはより強い態度を示すべき時ではないか?
前述のとおり、ロシア軍はありとあらゆる予備兵力をかき集めてウクライナ戦争に投入している。兵器も糧食も兵員も足りない状況と思われる。こういう時にこそ軍事圧力が効く。
NATO各軍をロシア、ベラルーシウクライナ国境に集結させ力を誇示した上で、NATO(実質的にはアメリカ)はロシアとの外交交渉を行うべきと思う*4
日本は憲法9条の制約で明確な軍事圧力を加える行動には制約があるが、オホーツク海での対潜作戦訓練を実施するなど、日本も憲法の範囲内でロシアにメッセージを送る方法はある。

バイデン大統領は1941年のルーズベルト大統領になってはいけない。
ルーズベルト大統領が1941年に日本の海外資産を凍結し石油などの全面禁輸という経済制裁を行った結果(ABCD包囲網の完成)、日本は追い詰められいろんな理由をくっつけて対アメリカ(イギリス、オランダ)戦争に突入した。
それは強力な経済制裁の結果、このままでは国が持たないとみた日本が、軍事的には手薄アメリカ、イギリス、オランダの植民地を奪うことで局面を打開しようとしたからと私は考えている。
経済制裁には軍事的な裏付けが必要だ。
さらに経済制裁の効果がでるまでは時間がかかる。
数週という期間で成果を上げるには、経済圧力だけでは足りない。
バイデン大統領は1962年のケネディ大統領をみならい勇気をもって瀬戸際外交を行ってほしい。
いまこそ西側諸国はそれを支えるべく団結すべき時ではないかと思う。
 

*1:明確に戦争犯罪である。

*2:www.understandingwar.org

*3:軍事施設を攻撃したのは他のミサイルでキンジャールは別の地点に着弾したという分析もある。

*4:3/4に決定した増派だけでなく更にNATO軍を増派すべきという意味(追記)