停戦交渉に欠けているピース(piece)をそろえよ
はじめに
これはウクライナ戦争に関する私の3つめの投稿だがこれが最後になる。この投稿が私が訴えたい結論なのでよかったら読んでほしい。
2つめの投稿(3月4日)
thesunalsorises.hatenablog.com
2つめの投稿の要旨は次の通り。
- ロシア軍の侵攻は遅れている。しかし計画通りに侵攻を続けようとしている。
- ロシア軍は遅滞を取り戻すため攻撃の仕方を変化させるだろう。
- ロシア軍は兵士と民間人とを区別しない破壊兵器を使い市街戦は激化する。その結果民間人の犠牲が増大する。
- ロシア軍による東部のウクライナ軍主力に対する大包囲の試みは継続する。
- ベラルーシが参戦する可能性がある。その場合、首都キーウとウクライナ西部の主要都市であるリビウの連絡を切断する攻撃が行われるのではないか。
- ロシア軍が劣勢に陥った場合、戦術核兵器使用の可能性がある。
- ウクライナによるロシアの厭戦気分を掻き立てる作戦はウクライナ勝利の唯一の策と考える。しかしこの作戦が効果を表すまでの時間はもう残っていない可能性が高い。
- この戦争は関係国の誤謬と誤算が積み重なった結果起こったと考える。
- アメリカのこの8年間のウクライナ政策は根本的に誤っている。ウクライナにまでNATOを拡大しようとしたことがこの地域の不安定さを招いた最大の要因だ。
- 今回もロシアがウクライナに侵攻するのを承知で、アメリカはロシアの要求=NATO不拡大を拒否した。
- ヨーロッパ諸国は危機の評価がバラバラで、危機対応が不十分だった。
- ウクライナも自国の地政学的価値と危うさの評価を誤った。
- ロシアは力の信奉者であり続けており、武力を背景に現行の国際法体系に挑戦している。
- 開戦後、アメリカはヨーロッパ諸国などの国際世論を一気にまとめロシアへの制裁を行った。しかしその制裁の効果が表れるまでは時間がかかり、この戦争の終結には直接の効果を表さないだろう。
- ウクライナへ武器弾薬の支援はあるが援軍はこない。ウクライナは民主主義の人身御供に捧げられたようにみえる。
キーウが陥落した後はどうなるか?
3月4日現在のキーウ包囲戦の状況
キーウは組織的な抵抗を続けている。ロシア軍の主攻撃軸と思われるキーウ北西からの攻撃はウクライナ軍守備網を突破できていない。しかし徐々にではあるがキーウ南西方向へ侵攻している。
ドニプロ川東岸を南下しているロシア軍は、チェルニヒフ*1を確保できずウクライナ軍防御網を突破できていない。
しかし、ウクライナ北東部のスムイからの攻撃軸において、キーウ東部に急速に侵攻しており、1、2日でキーウ東部を包囲・攻撃するかもしれない。
ウクライナ軍は善戦している。しかしロシア軍はじりじりとキーウへ迫っている。
アメリカが発信しているように数日でキーウ陥落とはならないと思うが、キーウ陥落はありうるものと考えるべきだろう。
thesunalsorises.hatenablog.com
このままだとこうなるという予想
首都キーウをロシア軍が占領したら、ロシア軍はロシア傀儡のウクライナ暫定政権を作るだろう。そして勝利を宣言するのではないかと思う。
キーウ陥落時にゼレンスキー大統領がキーウを脱出できた場合、ウクライナ西部に政権を移し抵抗を続けると予想する。ゼレンスキー大統領が拘束または殺害された場合、既にキーウを脱出し準備しているだろう後継者(最高議会議長ではないかと聞いている)が後継政権を樹立し抵抗を続けると予想する。
キーウ陥落後は、ウクライナ東部、南部の戦線でも組織的な抵抗が徐々に困難になると予想される。ウクライナ軍による組織的な抵抗ができなくなれば、市民がレジスタンス組織を構成し抵抗を続けていくだろう。
ロシアの傀儡政権がウクライナの東部、南部を支配し、ウクライナの現政権(もしくは後継政権)が西部を支配するのではないだろうか。
ロシア軍の完全勝利はありえない。だがウクライナの国土は分割され、ウクライナの国民およびインフラは甚大なる損害をこうむるだろう。
ウクライナの平原の多い国土を考えると、レジスタンスは都市型になると思われる。ロシア軍に占領された各都市で、レジスタンスの小組織あるいは個人がロシア軍の兵士、車両などを狙い攻撃を繰り返すようになると思う。
美しい町並みは瓦礫と化し、治安は強烈に悪化する。レジスタンスに対するロシア軍の反撃の巻き添えになって犠牲になる民間人も大勢でるだろうし、ロシア軍によるレジスタンス狩りによって虐殺、レイプのような残虐な事態が起こることを強く懸念する。
日本では無抵抗降伏を主張する言論があるが、その場合はロシア軍によるウクライナ軍の残党狩りによって虐殺、レイプのような残虐な事態が起こる可能性を強く懸念する。全然変わらない。
戦争では降伏後にもっと多くの被害が出ることがしばしばあることを認識しておきたい。
これが私の考える、ウクライナの一番ありうる将来像だ。もっとよい将来になるのだったら、私をののしってもらって全然問題ない。それを心から願っている。
停戦交渉に足りないピース(piece)
デモ、その声を聞く国はどこか?
戦争反対デモ
3月5日、日本に住むウクライナ人の呼びかけで東京と大阪などでウクライナ戦争に反対するデモが行われた。
www.youtube.com
インタビューを受けたウクライナ人の女性が、「日本人にウクライナの状況を知ってほしくてこのデモを行った」と説明した。それはきっと伝わっている。ウクライナ人が祖国の歌を歌う。言葉はわからなくても気持ちは痛いほど伝わる。日本人の大多数はロシアの侵略に反対しウクライナ人に同情を寄せている。私も同じだ。
一方、旧態依然とした「ウクライナから出ていけ~」というシュプレヒコール。これはいただけない。これは誰に向けて発しているのか? ロシア? 日本にいてそんなシュプレヒコールをあげてもロシアに届くわけないじゃないか。距離的にも政治的にも。
デモで訴える内容も訴える先も間違っている
デモで訴えるべきは、停戦協議に足りないピース(piece)があるという指摘だと思っている。
「アメリカよ。停戦交渉に参加し停戦をまとめよ」
そもそもはウクライナのNATO加盟の問題から端を発した戦争なので、NATOの盟主のアメリカが参加しなければどうしようもない。そして武力を前面に出すロシアと対等以上の交渉ができるのはアメリカしかない。
NATOはこの戦争に関与しなければならない。武力ではなく外交力でだ*4。
デモは、アメリカがウクライナの停戦交渉に関与するように訴えるべきだと思っている。そしてデモは、日本政府にアメリカ政府へ停戦交渉に関与するよう伝えてほしいと訴えるべきだと思う。
もしこの主張が日本だけでなく世界の人々の賛同を得るようになり世界中のデモにつながっていけば、アメリカ政府の行動も変わるかもしれない。
私は普段デモとは距離を置いているが、もしこの主張が主催者のウクライナ人に届いたら、私も参加しようと思う。
私はデモに参加しようと思ったのは人生で初めてだ。
世界が「プーチンよ軍を戻せ」と軍事援助と経済制裁に期待している間、つまりアメリカの対決姿勢を支持している間は停戦にはならないだろう。
「当事者よすべてテーブルにつけ。平和に戻せ」と訴えなければ、平和は訪れない。