日はまた昇る

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ウクライナ戦争は第二段階へ

https://understandingwar.org/sites/default/files/Kyiv%20Battle%20Map%20Draft%20March%2020%2C%202022.png
(出典:IGW)

ウクライナの善戦、キーウは陥落していない

3月6日に次の投稿を書いた。それからもう2週間。様々な動きがある中で戦争は続いている。
thesunalsorises.hatenablog.com

上記の投稿を書いた2週間前。私は本気でキーウ(キエフ)の陥落を心配していた。キーウ攻防戦での破壊で多数の犠牲がでることを恐れていたし、キーウ陥落後の更なる犠牲を心配していた。
だが私の予想は外れ、キーウは持ちこたえている。ロシア軍の攻撃は停滞している。このままならキーウは持ちこたえるように思える。そのことは喜ばしい。
しかし遠距離砲撃と空襲によるキーウの破壊は進み悲劇は続いている。キーウ攻撃はまだまだ終わらない。

もっと大きな惨劇の場となったのは、南部のマリウポリだ。多数の犠牲者に言葉を失う。マリウポリはロシア軍が完全包囲しており、ロシア軍が航空優勢をとっているようだ。こうなるとロシア軍は残虐な破壊を行う*1チェチェンでもシリアでもそうだった。マリウポリは陥落するという観測が流れている*2

一方、ロシア軍は明らかに兵站に問題を抱え、東部と南部の一部の地域を除き航空優勢をとれずにいる。その結果、ウクライナ軍の反撃で消耗を続け、かなりの被害がでているようだ。
ロシア軍は極東に配備していた部隊を引き抜き、オデーサ(オデッサ)攻撃の予備部隊と見られていた海軍歩兵部隊も東部に投入しており、戦争を維持しようとしている。外国人傭兵も投入している。だが集中的に部隊を投入するのではなく、広く分散して部隊を投入しているようなので、大きな侵攻ができずにいる。
戦線は膠着し、消耗戦の段階に入ったと思う。
 

ロシアの継戦意思

この戦争の敗北はプーチンの失脚(暗殺)を意味する段階まで来た。プーチンに後はない。情報統制を強め、ロシア国内の戦争反対の声を力で封じ込めている。
ロシア国民の多数はプーチンの流す偽情報を信じ、ウクライナ戦争を支持している。
ロシア国内では経済制裁による問題が起こっているようだが、それが嫌戦ムードにつながってるかというとまだ疑問符がつく。
総合するとプーチンは戦争をまだ続けることができる国内情勢だと思う。
 

破壊と消耗、化学兵器と核攻撃の可能性

上記から総合すると、今後起こるのはロシア軍による無差別の都市攻撃と、ウクライナ軍の反撃によるロシア軍の消耗だろう。
ロシアは民間人の被害を大きくしてウクライナ国民の継戦意思をくじこうとするだろう。ウクライナの民間人の犠牲がますます増加する。先は見えない。
一方でロシア軍は消耗が続き、士気は低下し、壊走の可能性が増加していく。
ロシアの勝利はなくなったと思う。
しかしそれは直ちにウクライナの勝利を意味しない。
ロシア軍は敗北をさけるため、化学兵器核兵器を使うのでは?と強く懸念されている。
ロシア軍は「キンジャール」という核兵器搭載可能なミサイルでウクライナ西部の軍事施設を攻撃した*3
軍事的にみるとこの攻撃が「キンジャール」である必然性はないので、これはロシアによる核使用の脅しのメッセージとみるべきではないだろうか。
www3.nhk.or.jp
 

NATO軍の増派が必要だ。

もし化学兵器核兵器が使われウクライナの抗戦意思が挫かれロシア優位の停戦協定が結ばれれば、それは新たな世界秩序の始まりとなるだろう。
それは軍事力に屈服し軍事力で現状を変えることを容認する世界だ。
それでいいのか!と強く訴えたい。
その世界の行きつく先は第三次世界大戦ではないのか?と広く聞きたい。
ウクライナ軍が持ちこたえている状況で、ウクライナの政体と軍を維持したまま停戦する。それに向けてNATOはより強い態度を示すべき時ではないか?
前述のとおり、ロシア軍はありとあらゆる予備兵力をかき集めてウクライナ戦争に投入している。兵器も糧食も兵員も足りない状況と思われる。こういう時にこそ軍事圧力が効く。
NATO各軍をロシア、ベラルーシウクライナ国境に集結させ力を誇示した上で、NATO(実質的にはアメリカ)はロシアとの外交交渉を行うべきと思う。
日本は憲法9条の制約で明確な軍事圧力を加える行動には制約があるが、オホーツク海での対潜作戦訓練を実施するなど、日本も憲法の範囲内でロシアにメッセージを送る方法はある。

バイデン大統領は1941年のルーズベルト大統領になってはいけない。
ルーズベルト大統領が1941年に日本の海外資産を凍結し石油などの全面禁輸という経済制裁を行った結果(ABCD包囲網の完成)、日本は追い詰められいろんな理由をくっつけて対アメリカ(イギリス、オランダ)戦争に突入した。
それは強力な経済制裁の結果、このままでは国が持たないとみた日本が、軍事的には手薄アメリカ、イギリス、オランダの植民地を奪うことで局面を打開しようとしたからと私は考えている。
経済制裁には軍事的な裏付けが必要だ。
さらに経済制裁の効果がでるまでは時間がかかる。
数週という期間で成果を上げるには、経済圧力だけでは足りない。
バイデン大統領は1962年のケネディ大統領をみならい勇気をもって瀬戸際外交を行ってほしい。
いまこそ西側諸国はそれを支えるべく団結すべき時ではないかと思う。
 

*1:明確に戦争犯罪である。

*2:www.understandingwar.org

*3:軍事施設を攻撃したのは他のミサイルでキンジャールは別の地点に着弾したという分析もある。

停戦交渉に欠けているピース(piece)をそろえよ

https://www.understandingwar.org/sites/default/files/DraftUkraineCoTMarch4%2C2022.png

はじめに

これはウクライナ戦争に関する私の3つめの投稿だがこれが最後になる。この投稿が私が訴えたい結論なのでよかったら読んでほしい。
 

1つめの投稿(2月27日)

thesunalsorises.hatenablog.com
1つめの投稿の要旨は次の通り。

  • ロシア軍の攻撃軸はほぼ予想通り。大きく分けると3つの攻撃軸がある。
  • キーウ(キエフ)に向かう攻撃軸は、ゼレンスキー大統領を拘束または殺害しウクライナ政府を転覆させることが目的と考える。
  • 東部の攻撃軸は、ドンバス正面のウクライナ軍主力を大包囲し壊滅させるのが目的と考える。
  • オデーサ(オデッサ)方面の攻撃軸は、海路からの支援の遮断、補給ルートの確保と沿ドニエストルのロシア軍部隊との連絡が目的と考える。
  • ロシアにとってはオバマのヤヌコーヴィチ政権の転覆への関与(2014年)とNATOの東方拡大がこの戦争の原因。
  • ロシアはアメリカの経済制裁を予測しており、ロシア主導の経済圏を作ろうとしている。

 

2つめの投稿(3月4日)

thesunalsorises.hatenablog.com
2つめの投稿の要旨は次の通り。

  • ロシア軍の侵攻は遅れている。しかし計画通りに侵攻を続けようとしている。
  • ロシア軍は遅滞を取り戻すため攻撃の仕方を変化させるだろう。
  • ロシア軍は兵士と民間人とを区別しない破壊兵器を使い市街戦は激化する。その結果民間人の犠牲が増大する。
  • ロシア軍による東部のウクライナ軍主力に対する大包囲の試みは継続する。
  • ベラルーシが参戦する可能性がある。その場合、首都キーウとウクライナ西部の主要都市であるリビウの連絡を切断する攻撃が行われるのではないか。
  • ロシア軍が劣勢に陥った場合、戦術核兵器使用の可能性がある。
  • ウクライナによるロシアの厭戦気分を掻き立てる作戦はウクライナ勝利の唯一の策と考える。しかしこの作戦が効果を表すまでの時間はもう残っていない可能性が高い。
  • この戦争は関係国の誤謬と誤算が積み重なった結果起こったと考える。
  • アメリカのこの8年間のウクライナ政策は根本的に誤っている。ウクライナにまでNATOを拡大しようとしたことがこの地域の不安定さを招いた最大の要因だ。
  • 今回もロシアがウクライナに侵攻するのを承知で、アメリカはロシアの要求=NATO不拡大を拒否した。
  • ヨーロッパ諸国は危機の評価がバラバラで、危機対応が不十分だった。
  • ウクライナも自国の地政学的価値と危うさの評価を誤った。
  • ロシアは力の信奉者であり続けており、武力を背景に現行の国際法体系に挑戦している。
  • 開戦後、アメリカはヨーロッパ諸国などの国際世論を一気にまとめロシアへの制裁を行った。しかしその制裁の効果が表れるまでは時間がかかり、この戦争の終結には直接の効果を表さないだろう。
  • ウクライナへ武器弾薬の支援はあるが援軍はこない。ウクライナは民主主義の人身御供に捧げられたようにみえる。

 

キーウが陥落した後はどうなるか?

3月4日現在のキーウ包囲戦の状況

キーウは組織的な抵抗を続けている。ロシア軍の主攻撃軸と思われるキーウ北西からの攻撃はウクライナ軍守備網を突破できていない。しかし徐々にではあるがキーウ南西方向へ侵攻している。
ドニプロ川東岸を南下しているロシア軍は、チェルニヒフ*1を確保できずウクライナ軍防御網を突破できていない。
しかし、ウクライナ北東部のスムイからの攻撃軸において、キーウ東部に急速に侵攻しており、1、2日でキーウ東部を包囲・攻撃するかもしれない。
ウクライナ軍は善戦している。しかしロシア軍はじりじりとキーウへ迫っている。
アメリカが発信しているように数日でキーウ陥落とはならないと思うが、キーウ陥落はありうるものと考えるべきだろう。
thesunalsorises.hatenablog.com

このままだとこうなるという予想

首都キーウをロシア軍が占領したら、ロシア軍はロシア傀儡のウクライナ暫定政権を作るだろう。そして勝利を宣言するのではないかと思う。
キーウ陥落時にゼレンスキー大統領がキーウを脱出できた場合、ウクライナ西部に政権を移し抵抗を続けると予想する。ゼレンスキー大統領が拘束または殺害された場合、既にキーウを脱出し準備しているだろう後継者(最高議会議長ではないかと聞いている)が後継政権を樹立し抵抗を続けると予想する。
キーウ陥落後は、ウクライナ東部、南部の戦線でも組織的な抵抗が徐々に困難になると予想される。ウクライナ軍による組織的な抵抗ができなくなれば、市民がレジスタンス組織を構成し抵抗を続けていくだろう。
ロシアの傀儡政権がウクライナの東部、南部を支配し、ウクライナの現政権(もしくは後継政権)が西部を支配するのではないだろうか。
ロシア軍の完全勝利はありえない。だがウクライナの国土は分割され、ウクライナの国民およびインフラは甚大なる損害をこうむるだろう。
ウクライナの平原の多い国土を考えると、レジスタンスは都市型になると思われる。ロシア軍に占領された各都市で、レジスタンスの小組織あるいは個人がロシア軍の兵士、車両などを狙い攻撃を繰り返すようになると思う。
美しい町並みは瓦礫と化し、治安は強烈に悪化する。レジスタンスに対するロシア軍の反撃の巻き添えになって犠牲になる民間人も大勢でるだろうし、ロシア軍によるレジスタンス狩りによって虐殺、レイプのような残虐な事態が起こることを強く懸念する。
日本では無抵抗降伏を主張する言論があるが、その場合はロシア軍によるウクライナ軍の残党狩りによって虐殺、レイプのような残虐な事態が起こる可能性を強く懸念する。全然変わらない。
戦争では降伏後にもっと多くの被害が出ることがしばしばあることを認識しておきたい。
これが私の考える、ウクライナの一番ありうる将来像だ。もっとよい将来になるのだったら、私をののしってもらって全然問題ない。それを心から願っている。

軍事支援について

ウクライナ軍を残存させたまま停戦にこぎつけるのが、ウクライナの被害を一番少なくする方法だと強く主張したい。
ウクライナ軍が組織的な抵抗を続けるには、諸外国からの支援、特に武器弾薬の提供が必要だ。既にアメリカとドイツ、スウェーデン他、各国が武器弾薬の提供を決めている。早期にウクライナに輸送する必要がある。
しかし、それだけではいつかウクライナ軍の抵抗も潰えることになる。そして前述の悲惨な状況が待っていると思う。
ロシアに対する経済制裁はロシアに打撃を与えるだろうが、それは早くても数か月後だろう。ウクライナ軍が潰えるまでに間に合うとは思えない。
 

停戦交渉に足りないピース(piece)

停戦交渉がまとまる可能性

これまでに2回の停戦交渉が行われた。ロシアとウクライナ双方の主張の差は大きく、結局決裂した。しかしこの停戦交渉でボルノバーハとマリウポリについて民間人を逃がす「人道回廊」を開設することで合意した。だが一時停戦は順守されなかったとの報道もある*2
このままでいくと、ウクライナが継戦を諦めるまで停戦交渉はまとまらないように思える。考えたくもないがロシアには最後の手段(核兵器のこと)がある。そして前述の予想に繋がっていく。
停戦交渉がまとまらない理由だが、それはこの戦争に大きな責任がある関係国があるのに、その国がこの戦争の停戦協議に参加していないからだと思っている。

アメリカの責任

2月27日の1回目の投稿でも、3月4日の2回目の投稿でも、私はアメリカのこの8年間のウクライナ政策を強く批判した。
私はアメリカがウクライナまでNATOを拡大しようとしたことが、この戦争の大きな原因だと考えている。アメリカにはウクライナ戦争に対する大きな責任がある。
ウクライナに対して軍事援助を行う。それは必要だ。
ロシアに対して経済制裁を行う。それも必要だ。
ウクライナ敗北後、レジスタンスへの援助を議会で議論する*3。今となってはそれも必要だろう。
だがそれだけでは足りない。ウクライナ敗北後のことを議論する前にやることがあるだろう!と思う。
 

デモ、その声を聞く国はどこか?

戦争反対デモ

3月5日、日本に住むウクライナ人の呼びかけで東京と大阪などでウクライナ戦争に反対するデモが行われた。
www.youtube.com
インタビューを受けたウクライナ人の女性が、「日本人にウクライナの状況を知ってほしくてこのデモを行った」と説明した。それはきっと伝わっている。ウクライナ人が祖国の歌を歌う。言葉はわからなくても気持ちは痛いほど伝わる。日本人の大多数はロシアの侵略に反対しウクライナ人に同情を寄せている。私も同じだ。
一方、旧態依然とした「ウクライナから出ていけ~」というシュプレヒコール。これはいただけない。これは誰に向けて発しているのか? ロシア? 日本にいてそんなシュプレヒコールをあげてもロシアに届くわけないじゃないか。距離的にも政治的にも。

デモで訴える内容も訴える先も間違っている

デモで訴えるべきは、停戦協議に足りないピース(piece)があるという指摘だと思っている。
アメリカよ。停戦交渉に参加し停戦をまとめよ」
そもそもはウクライナNATO加盟の問題から端を発した戦争なので、NATOの盟主のアメリカが参加しなければどうしようもない。そして武力を前面に出すロシアと対等以上の交渉ができるのはアメリカしかない。
NATOはこの戦争に関与しなければならない。武力ではなく外交力でだ*4
デモは、アメリカがウクライナの停戦交渉に関与するように訴えるべきだと思っている。そしてデモは、日本政府にアメリカ政府へ停戦交渉に関与するよう伝えてほしいと訴えるべきだと思う。
もしこの主張が日本だけでなく世界の人々の賛同を得るようになり世界中のデモにつながっていけば、アメリカ政府の行動も変わるかもしれない。
私は普段デモとは距離を置いているが、もしこの主張が主催者のウクライナ人に届いたら、私も参加しようと思う。
私はデモに参加しようと思ったのは人生で初めてだ。
世界が「プーチンよ軍を戻せ」と軍事援助と経済制裁に期待している間、つまりアメリカの対決姿勢を支持している間は停戦にはならないだろう。
「当事者よすべてテーブルにつけ。平和に戻せ」と訴えなければ、平和は訪れない。
 

creativecommons.org

*1:ロシア語っぽい読みなのだがウクライナ語の読みがわからない

*2:ロシア軍がウクライナ2都市で人道回廊、停戦順守されずとの訴えも | ロイター

*3:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/03/post-98180.php

*4:武力で関与すれば第三次世界大戦が起こってしまう。それは悪夢だ。

(投稿の補足)ウクライナ戦争 3月1日~8日の戦況

nstitute for the Study of Warというシンクタンクウクライナ戦争の戦況を分析しているので、戦況部分を翻訳*1してみた。
戦況部分をそのまま訳しているので著作権上どうなのか?とは思ったが、警告がきたらフェアユースを主張しつつ記述を削除することにして、とりあえずここに載せる。
とはいえInstitute for the Study of Warに申し訳ないので100$の寄付は行った。

3月1日現在の戦況

www.iswresearch.org
ロシアの支配地域と主な起動軸 3月1日
https://blogger.googleusercontent.com/img/a/AVvXsEgUI-Fv_XbdwSCqbNfTjHnUoZ5p5SetixRvHZRzIAW3nNU8D96Ayx6jG97T-60nwlwifcAqb2q7RZE_IBvI4hipMoJr1MQXNQFHidJOLeh3uAgus7K0SdkWPEni0shjrY7eA0H3muQYgR1NaAHkL52j1rN4dgiDyJfI8ngdISZlDiacJ2kYVdht9rGK=s16000

ロシア攻撃作戦の評価、3月1日
ロシア軍はキーウ(キエフ)の北と西で部隊の強化と補給を完了し、首都の包囲と最終的な捕獲を目的とした包囲作戦を展開しているようだ。この作戦は今後24時間から48時間の間に加速されると思われる。キーウに対するロシアの作戦は、プーチン政権の主要な作戦である。ロシア軍はまた、ハルキウ(ハリコフ)奪取、マリウポリ奪取とロストフ・オン・ドンとクリミアを結ぶ「回廊」の確保、ケルソン確保とミコライフとオデーサに向けた西への進出のための侵攻準備の3つの支援作戦を展開している。3つの支援作戦は活発で、マリウポリに対する作戦がこの24時間で最も進展している。

ロシアのキーウ攻撃は、西側からの包囲と最終的な包囲を目指す主戦力と、キーウを東側から包囲するチェルニヒフとシュミーからの支援活動で構成されていると思われる。キーウの北にあるロシアの戦闘・兵站用車両の長い隊列は、西からの包囲のための条件を整えていると思われるが、ロシア軍がキーウの北西郊外に維持している位置からキーウに直接攻撃を加えることも可能であろう。ロシア軍はキーウへの直接攻撃よりも、包囲を行う可能性が高い。

ロシア軍はハルキウ内で(スマート兵器による点攻撃ではなく)エリア攻撃兵器の使用を続け、民間インフラへの被害と民間人の犠牲を劇的に増やしている。ロシア軍はこの24時間、ハルキウに対して大規模な地上作戦を試みていないとされるが、その代わりに空爆、ミサイル、砲撃を行い、今後24~48時間以内に地上攻撃を再開するための条件を整えているようである。ロシア地上軍は、ハルキウを包囲するのではなく、北東から再び正面攻撃を行うようである。

南部のロシア軍は、ザポリージャの南で陣地を維持し、ヘルソンのウクライナ軍陣地を縮小して同市を奪取するために戦い、マリウポリを包囲して奪取の条件を整えているようである。南方でのロシアの作戦は、今後24時間以内にオデーサに差し迫った危険をもたらすとは思われない。接触線に沿って戦うウクライナ軍を遮断するために、ロシア軍がザプロジヤ付近を北上する可能性も、今後24~72時間以内には極めて低いと思われる。

ロシア軍はマリウポリを包囲したと主張し、南部のケルソン市に入ったと伝えられている。

ロシア軍は必要な物資と増援を受け取っており、今後24~72時間で、より迅速で効果的な作戦が可能になる可能性がある。しかし、キエフ周辺のロシア軍は、連隊や旅団の司令部の下で活動するのではなく、多くの異なる大隊の要素を組み合わせて、その場しのぎのグループを作っているため、まだ組織化されていない。ISWが以前報告したベラルーシとロシア西部におけるロシア軍の構成と組織の初期誤差は、キエフ周辺でのロシアの物流と作戦の失敗につながったが、これをすぐに改善することは難しく、補給問題が解決されて増援が戦場に入ったとしても、ロシアの作戦に摩擦を起こし続け、効果を低下させる可能性が高い。増援のロシア軍がもたらすであろう有効戦闘力を評価するにはまだ早すぎる。

 

3月2日現在の戦況

www.understandingwar.org
ロシアの支配地域と主な起動軸 3月2日
https://www.understandingwar.org/sites/default/files/DraftUkraineCoTMarch2%2C2022.png

ロシア攻撃作戦の評価、3月2日
ロシア軍は3月2日、キーウ包囲を支援するための攻撃活動を再開したが、支配地域の拡大はほとんどなかった。ロシア軍はキーウの北と西の部隊を強化し、補給するために72時間大きく中断した後、キーウへの両進攻軸で攻勢を再開した。キーウを包囲するためのロシアの作戦は、ロシアの主要作戦である。ロシア軍は、ハルキウ奪取、マリウポリ奪取とロストフ・オン・ドンとクリミアを結ぶ「回廊」の確保、ケルソン確保とミコライフやオデーサ方面への西進のための条件整備という3つの支援活動も行っている。ロシア軍はケルソンを占領し、マリウポリの重要な民間インフラへの砲撃を開始し、同市を降伏させようとしたようだが、ハルキウではほとんど領土を獲得することができなかった。

ロシアのキーウ攻撃は、西側からの包囲と最終的な包囲を目指す主戦力と、チェルニヒフとスミからの軸線に沿って東側から包囲する支援活動で構成されているようだ。この48時間にキーウの北で観測されたロシアの戦闘・兵站車両の長い隊列は、現在、ロシア軍がキーウの北西郊外に維持している位置からキーウへの直接攻撃を支援していると思われる。しかし、ロシア軍は今後数日間、キーウへの直接攻撃よりも、包囲を優先する可能性が高い。

ロシア軍は3月2日にハルキウへの正面攻撃を再開し、エリア攻撃兵器の使用を続け、民間インフラへの被害と民間人の犠牲を劇的に増加させた。ロシア地上軍は、ハルキウを包囲するのではなく、北東から再び正面攻撃を行う模様で、ウクライナの抵抗が長引くと見られる。

南部のロシア軍はケルソンを確保し、マリウポリの民間インフラへの砲撃を開始し、直接攻撃せずに降伏させようとしたもよう。一方、ザポリジアの南では陣地を維持しているようである。ロシア軍は今後24時間以内にミコライフへの攻撃活動を再開する可能性が高いが、オデーサに差し迫った危険はないようである。ロシア軍は、重要な民間インフラを破壊し、民間人を殺害して人道的大惨事を引き起こすことで、マリウポリを降伏させようとしているようだ。これはロシア軍がシリアで繰り返し取ってきたアプローチである。ロシア軍がザプロジヤ付近を北上し、接触線に沿って戦うウクライナ軍を遮断する可能性は、今後24~72時間以内では極めて低いと思われる。

ロシア軍は必要な物資と増援を受け取っており、今後24~72時間でより迅速かつ効果的な作戦が可能になるかもしれない。しかし、キーウ周辺のロシア軍は、連隊や旅団の司令部の下で活動するのではなく、多くの異なる大隊の要素を組み合わせて、その場しのぎのグループを作っているため、まだ組織化されていない。ISWが以前報告したベラルーシとロシア西部におけるロシア軍の構成と組織の初期誤差は、キーウ周辺でのロシアの物流と作戦の失敗につながったが、これをすぐに改善することは難しく、補給問題が解決されて増援が戦場に入ったとしても、ロシアの作戦に摩擦を起こし続け、効果を低下させる可能性が高い。増援のロシア軍がもたらすであろう有効戦闘力を評価するにはまだ早すぎる。

 

3月3日現在の戦況

3日以降は、そのまま訳すのではなく、私がかいつまんで訳すことにした。
www.understandingwar.org
https://www.understandingwar.org/sites/default/files/DraftUkraineCoTMarch3%2C2022.png

首都キーウ包囲戦

  • 北西からキーウを包囲しようとしたロシア軍は、ウクライナ軍の抵抗と反撃で更に西に追いやられた。
  • ロシア軍は、キーウ西方のジトーミル州に向けて進撃し始めた。これはキーウからはやや遠ざかる動きでこの動きを続ける場合、キーウを完全に包囲することは困難と思われる。
  • ベラルーシからドニプロ川東岸を侵攻しているロシア軍は、依然としてチェルニヒフを確保できずキーウ北東部郊外のウクライナ軍防御網を突破できていない。

ウクライナ東部(ハルキウ市街戦)

  • ロシア軍はハルキウ近郊で静止しており、砲兵、空爆、ミサイル攻撃でハルキウに壊滅的な打撃を与えている。
  • ウクライナ軍は、連隊規模のロシア軍が今後数日間ハルキウを包囲または迂回するとみている。だが連隊規模ではその作戦の成功は考えにくい。

ウクライナ南東部(マリウポリ攻防戦)

  • ロシア軍はマリウポリを包囲し、降伏か破壊するために残忍な攻撃を行っている。

ウクライナ南西部(ケルソン、ミコライフ)

  • ケルソン市長は条件付きでロシア軍に降伏し、ロシア軍はミコライフへの進撃をを再開した。
  • ウクライナ軍は、ミコライフ近郊の空港に対するロシア軍のヘリボーン作戦を撃破したと伝えられている。

 

3月4日現在の戦況

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https://www.understandingwar.org/sites/default/files/DraftUkraineCoTMarch4%2C2022.png

首都キーウ包囲戦

  • ロシア軍は、スムイ(ウクライナ北東部の都市)からキーウの東部近郊への攻撃軸において急速に侵攻しており、今後24~48時間以内にキーウのドニプロ川東岸地区を包囲・攻撃する可能性がある。

ウクライナ東部(ハルキウ市街戦)

  • ロシア軍は、ハルキウへの直接攻撃は行っていない。

ドニプロ川東岸(ザポリージャ

ウクライナ南東部(マリウポリ攻防戦)

  • ロシア軍は引き続きマリウポリを包囲し、降伏か破壊するために残忍な攻撃を行っている。

ウクライナ南西部(ケルソン、ミコライフ、オデーサ(オデッサ))

  • ロシア軍はケルソンを確保している。
  • ロシア軍はミコライフへの地上攻撃を再開した。
  • ロシア海軍歩兵部隊は、ロシア軍地上部隊がオデーサへの経路の確保が確実になった時に、オデーサ近郊へ強襲上陸作戦を行う体制を整えているようだ。

 

3月5日現在の戦況

www.understandingwar.org
https://www.understandingwar.org/sites/default/files/DraftUkraineCoTMarch5%2C2022.png

首都キーウ包囲戦

  • キーウ北西では、この24時間、ロシア軍のめだった侵攻はなかった。なおイヴァンキフ付近にヘリコプターの前進基地を設置していると分析している。また輸送隊を攻撃ヘリコプターが護衛し移動している。
  • キーウ北東では、ロシア軍はほとんど動きがない。
  • キーウ西のスムイからの攻撃軸でも、この24時間目立った動きはない。

ウクライナ東部(ハルキウ市街戦)

  • ロシア軍は、空爆、砲撃、ロケットやミサイルなどを使い攻撃を続けている。予備役3000人が動員されハルキウの戦いに投入されるのではないかと分析している。

ウクライナ南東部(マリウポリ攻防戦)

  • ロシア軍は引き続きマリウポリを包囲し、降伏か破壊するために残忍な攻撃を行っている。

ウクライナ南西部(ケルソン、ミコライフ、オデーサ)

  • この24時間、ロシア軍は次の攻撃の準備を行っているようで短時間の休息にはいっているようだ。
  • ロシア軍がケルソンの地元の女性をレイプしたという報告がある。
  • ロシア海軍歩兵部隊が大型水陸両用戦に積み込まれたという報告がある。オデーサ近郊へ強襲上陸作戦を行う体制を整えているようだ。

 

3月6日現在の戦況

www.understandingwar.org
https://www.understandingwar.org/sites/default/files/DraftUkraineCoTMarch6%2C2022.png

首都キーウ包囲戦

  • キーウ北西でロシア軍は陣地に展開し、過去24時間戦闘行動を起こしていない。最大18個の大隊戦術グループ(BTG)が展開していると報告されている。ロシア第76空挺師団の一部がキーウ中心から20km西方のビロホロードカに向けて前進しているという報告もある。キーウ西方から包囲を完成させるための近道を探していると思われるが、それが成功するかは評価できない。
  • ロシア軍は、キーウからイルピン(キーウ中心から西北西20km)を経由する民間人が避難するために使っている鉄道路線空爆、砲撃している。
  • キーウ北東のチェルニヒフへの再攻撃のため、燃料気化爆弾発射機を前進していると報告されている。
  • キーウ東のブロバルイ付近でロシア軍が再編成しており、ボルィースピリ空港に向けて進撃するのではないかと見られている。

ウクライナ東部(ハルキウ近郊)

  • ハルキウ西および北西に23個もの大隊戦術グループ(BTG)が展開しており、作戦の再開に向けて準備中である。

ウクライナ南東部(マリウポリ攻防戦)

  • ウクライナ軍が反撃し少数のロシア軍車両を破壊したが、支配地域には大きな変化はなかったと報告されている。

ウクライナ南西部(ケルソンと西部)

  • ウクライナ軍はミコライフに向かった3個大隊戦術グループ(BTG)を撃退したとしている。
  • ロシア海軍歩兵部隊がオデーサから南バグ川河口までの間に強襲上陸作戦を試みる可能性がある。

 

3月7日現在の戦況

www.understandingwar.org
https://www.understandingwar.org/sites/default/files/DraftUkraineCoTMarch7%2C2022.png

首都キーウ包囲戦

  • キーウ北西では、ロシア軍はキーウ北西20kmに位置するイルピンとそれより5km北のブチャの制圧を企図した攻撃を行っている。インフラおよび民間人を直接狙う攻撃が行われている。またキーウを包囲するため、南方向へ前進しつつある。
  • キーウ北東では、チェルニヒフに軍を集中し、街を包囲、掌握するための活動を行っている。
  • キーウ東では、ロシア軍は東部郊外に拠点を置いている。ウクライナ軍によるノヴァバサンのロシア軍の兵器庫攻撃が成功したとウクライナ軍は伝えている。この攻勢軸はサムイ方面から長い兵站戦で維持されていると思われ、兵站の維持は困難と思われる。ウクライナ軍の兵站拠点への攻撃の継続は、キーウ東部にいるロシア軍の行動妨害になる可能性がある。

ウクライナ東部(ハルキウ近郊)

  • ロシア軍は、空爆および砲撃でハルキウに攻撃を続けているが、地上軍の攻撃は再開していない。これらの攻撃は無差別な攻撃と考えられる。

ウクライナ南東部(マリウポリ攻防戦)

  • ロシア軍はマリウポリの包囲を継続し、侵入を試みている。ウクライナ軍は反撃しロシア軍の侵入を阻止したが、今もマリウポリとその周辺で激しい戦闘が行われている。

ウクライナ南西部(ケルソンと西部)

  • ロシア軍は、複数の攻勢軸に分かれて進軍、もしくは進軍を準備中である。その中で、ザポリージャへ北上する作戦を優先しているようにみえる。またロシア軍はミコライフとその近郊の町に対して激しい砲撃を行っており、地上攻撃を準備していると思われる。
  • ロシア海軍歩兵部隊がオデーサから南バグ川河口までの間に強襲上陸作戦を試みる可能性がある。

 

3月8日現在の戦況

www.understandingwar.org
https://www.understandingwar.org/sites/default/files/DraftUkraineCoTMarch8%2C2022.png

首都キーウ包囲戦

  • キーウ西では、ロシア軍はキーウ北西20kmに位置するイルピン周辺の支配を強化している。これらの地域で住民から食料、燃料、その他必需品を奪い飢餓戦術を展開している。また2個大隊戦術グループがキーウ西方50kmのビシフに侵攻した。不特定多数の大隊戦術グループがキーウ北西70kmのイヴァンキウを攻撃している。空挺師団とスペツナズの部隊がキーウ北西30kmのラキフカ付近で攻撃を開始したが撃退されたもよう。その後キーウ北西40kmのダイメル付近でも空挺師団とスペツナズの部隊がいたとされる。
  • キーウ北東では、チェルニヒフに軍を集中し、街を包囲、掌握するための活動を行っている。攻撃は確認されていない。
  • キーウ東では、ロシア軍は東部郊外に拠点を設けようとしている。ウクライナ軍はグルヒフでロシア軍の9個大隊戦術グループによる攻撃を阻止したとしている。ロシア軍はこの抵抗を排除するために兵力を結集していると思われる。最大22個の大隊戦術グループがカニフに集中しているという報告がある。

ウクライナ東部(ハルキウ近郊)

  • ロシア軍は、この24時間で支配地を拡大していない可能性が高い。ウクライナ軍はロシア軍1個旅団が戦闘能力回復のためベルゴロドに戻ったと報告している。

ウクライナ南東部(マリウポリ攻防戦)

  • ロシア軍はマリウポリの包囲を継続し、侵入を試みている。マリウポリとその周辺で激しい戦闘が行われている。

ウクライナ南西部(ケルソンと西部)

  • ロシア軍は、ザポリージャへ北上する作戦を優先しているようにみえ支配地を拡大した。またロシア軍はミコライフに迫ろうとしているが、いくつかの攻撃は撃退された。追加兵力なしにミコライフの占領は難しいだろう。ロシア軍はミコライフを迂回しオデーサへ向かう可能性がある。
  • ロシア海軍歩兵部隊がオデーサから南バグ川河口までの間に強襲上陸作戦を試みる可能性がある。

*1:DeepLで機械翻訳したのち、一部私が表現を修正している。

ウクライナ戦争をエスカレーションさせてはいけない

https://www.understandingwar.org/sites/default/files/DraftUkraineCoTMarch2%2C2022.png

はじめに

この投稿はロシアを擁護するものでは全くない。プーチンの戦争は21世紀の蛮行として長く歴史に残るのは間違いない。
ただその前に、この投稿ではロシアの軍事的なオプションを検討し、それによってウクライナがどんな被害を被る可能性があるかを検討したい。
プーチン許すまじ」
この気持ちは本当にその通りと思うのだが、だからといって「ウクライナがんばれ」とおいそれとは言えない。
ゼレンスキー大統領をはじめ、ウクライナ国民の愛国心と勇猛果敢さに畏敬の念を持つ。だからこそ、これから起こると予想する悲劇が少しでも小さくなるようにと願う。
なお、この投稿では、敬意を払いたくないと思った人物には敬称をつけていないので、ご容赦いただきたい。
 

停戦交渉(事実)

2022年2月28日、戦争5日目にメジンスキーをトップとするロシア代表団と、レズニコフ国防相ウクライナ代表団との間で停戦交渉が行われた。ロシアとウクライナの主張の差は大きく、物別れに終わった。荒っぽく言えば、ロシアの主張は「降伏せよ」であり、ウクライナの主張は「ウクライナの勝利を認めよ」なので、折り合いがつかないことは最初から分かっていた。だが次回協議を開催するという合意ができたことはよかった。ただ残念なことだが、この会談終了は、ロシアによるもっと残虐な作戦の号砲となるだろう。
www3.nhk.or.jp
 

自分語り

これを読む人に私の個人的なことなんて全く興味はないだろうが、どういう気持ちでこの投稿を書いているか説明しておきたい。
生まれる前の出来事だったから私は日本の先の戦争もキューバ危機も知らない。だが物心つく頃もまだ世の中に核戦争の恐怖が感じられる頃に育った。その後成長しゼミ全入の大学に入学したので、紆余曲折の結果、国際関係論のゼミを選んだ。
そして幼い頃からの「どうやったら核戦争が起きずに済むんだろう?」という疑問を卒論に選んだ。卒論はタネ本を丸写ししたようなしょうもないもので私の黒歴史ではあるが、それ以来ずっと「戦争はどうやったら回避できるのか?」ということを考え続けている。もっとも私のポンコツな頭脳ではそんなことは未だわからず年を重ねている。
現実はウォーゲームではない。
損害は大きかったが作戦目標を達成したので辛勝だ。そんなことがあるはずがない。
戦場にあるのは残虐な殺戮と破壊だけだ。今回のウクライナ戦争はそういう場面が広く伝わっているように思う。だからショックを受けた人も多いのではないかと思う。
私は専門家ではないので、ものすごくという量ではないが、上記の理由から一般の人よりも多く戦争や戦場について調べそれを目にしてきたと思う。
どの戦争も等しく残虐だ。そして今回のウクライナ戦争も他の戦争と同じように残虐だ。残虐なものに触れすぎたせいなのか、私は今回の戦争も怒りの気持ちは沸いてこない。ただひたすら悲しい。
祖国が戦場になって勝利なんてありえない。祖国防衛という観点で言えば、戦争を回避し続けること以外の勝利はない。誤った平和であろうと正義の戦争に勝る。そう思っている。
私は、10年ほど前から国際関係論の攻撃的現実主義という考え方に基づいて国際関係を分析するようになった。
なぜ攻撃的現実主義に行きついたかというと、アメリカがイラク戦争を開始する前、リアリストたちがイラク戦争開戦に猛反対しネオコンと激論を交わしていた事実*1を知ったからだ。その中心にいたのが攻撃的現実主義の権威、ミアシャイマー教授だった。
そこから興味を持ち調べ始めた。
戦争を回避するには、将来を予測しないといけない。
将来予測が可能な理論かつ戦争回避に繋げる理論。攻撃的現実主義はその2つの条件に合致することがわかったので勉強し、今はリアリストの端くれぐらいにはなったように思っている。
攻撃的現実主義については、過去に投稿を書いている。よかったら読んでみてほしい。
thesunalsorises.hatenablog.com
thesunalsorises.hatenablog.com
 

予測ルートとの比較(分析)

私は2月27日にロシア軍の侵略ルートなどを予測・分析した次の記事を投稿した。
thesunalsorises.hatenablog.com
その記事の中で、私はイギリス国防省が予測したルートを説明していているのでよかったら読んでみてほしい。実は私もイギリス国防省のツイートが出る1日前にほぼ同じルートを予測しはてなブックマークに書いている。
その予測侵略ルートは次の通り。


この予測ルートと、Institute for the Study of Warというシンクタンクウクライナ戦争の戦況を分析しているので、3月2日の戦況と比較した。そうするとロシア軍の侵攻はイギリス国防省の予測とほぼ一致していることがわかる。
つまりロシア軍は遅延を起こしているものの当初の作戦案通りに侵攻を続けているということだ。まだロシア軍には予備兵力もある。
thesunalsorises.hatenablog.com

 

市街戦の激化と民間人の犠牲の増大(現況)

ロシア軍は当初48時間でこの戦争が終結すると考えていたふしがある*2。しかし電撃戦には失敗した。ロシア軍は士気も練度も低い部隊が多いようで、キーウ攻撃部隊はキーウ中心部への突入を一時停止した。私もInstitute for the Study of Warの分析に同意で、今後ロシア軍はキ-ウを包囲しようとするとみる。
また、キーウの他でも、ウクライナの各都市で攻防戦が行われている。
東部の要衝ハルキウではまだ本格的な市街戦は行われていないが、その準備段階の砲撃やミサイル攻撃が続いている。
下の写真は、シリア内戦で破壊されたアレッポという町の写真だ。露悪的な言い方で申し訳ないが、私たちはこれから美しいキーウやハルキウなどが、このような瓦礫となっていく過程を見ることになる。

f:id:the_sun_also_rises:20121011175940j:plain
アレッポ 出典:Wikipedia

市街戦での防衛側は遮蔽物の陰に隠れ攻撃側に対し射撃を行うので、市街戦は防御側有利と言われている。
攻撃側が防衛側の兵士1人1人を狙って射撃するような方法だと、攻撃側に多くの損害が出る。そこで攻撃側は防衛側が隠れ潜んでいると思しき建物を建物ごと破壊することで前進しようとする。その結果、市街は瓦礫の山となっていく。建物に民間人がいる場合もあるがこの攻撃は民間人と兵士の区別をしない攻撃なので、民間人の犠牲もうなぎのぼりに増えていく。これはロシア軍だけが残虐だからだというわけではない。アメリカ軍もイラクなどで同じことをした。もっと容赦なく。どの国も戦争になれば同じことをする。例外を知らない。
既に爆撃、砲撃は開始されているが、さらに激しくなる。
このまま戦闘が続けば、キーウは外周から破壊され切り取られていく。ハルキウは中心部が破壊されるだろう。キーウの物資が枯渇したとき、この戦争の局面は大きく変わるだろう。
www.youtube.com
 

東部戦域の大包囲(予測)

さきほど紹介した2月27日の私の投稿にも書いたが、東部戦域のロシア軍の目的は、このドンバス正面のウクライナ軍主力を大包囲し、指揮命令系統を破壊し補給線を切り壊滅させることだと考えている。そして現在攻撃が行われているハルキウと、ウクライナ側の東部戦域の軍本部があるドニプロが焦点となるとみている。
この2都市をロシア軍が押さえた時、ウクライナ軍主力の大包囲は完成する。包囲戦は虐殺に近い状況になる。それは2014年のドンバス戦争で起こったイロヴァイスクの戦い*3をみればわかると思う。もし大包囲が完成すればウクライナ軍の反攻能力を徹底的につぶすため、ロシア軍は容赦ない攻撃を加えると思う。
 

ベラルーシの動きと南下作戦(予測)

更に気になるニュースが流れている。
www.msn.com
ベラルーシが国境に軍を増派している。一時、ウクライナへ既に侵入したように報道されたがこれは誤報だったようだ。ベラルーシのルカシェンコはその意思を否定している。もっともルカシェンコが信じられる人物かと聞かれれば、私は即座にノーと答えるだろうけど。
この動きから懸念される攻撃がある。下図の青矢印のような攻撃ルートだ。この攻撃がもし行われるなら、ロシア軍、ベラルーシ軍共同になるのではないかとみている。
これはウクライナ西部の中心都市であるリビウと首都キーウの連絡を切る作戦になる。アメリカやEU各国がウクライナに武器の支援をする動きがあるが、その武器をキーウに運ばせないための攻撃だと予想している。だが、戦争が始まって以来、この地域には隣国ポーランドに逃れようとするウクライナ国民が殺到している。この作戦が実施されると民間人の被害がさらに増えることになる。

f:id:the_sun_also_rises:20220303090229j:plain
キーウとリビウの連絡を切る作戦

 

核兵器の問題(予測)

核兵器の本質

次にウクライナ国民と軍の徹底的な反撃でロシア軍の作戦が失敗に終わった状況を仮定して考えてみたい。リビウと首都キーウの連絡は確保されキーウには欧米からの支援兵器がどんどん到着する。キーウのウクライナ軍はロシア軍の包囲を破り押し返している。そして東部戦域の大包囲は完成せずウクライナ軍主力は健在だ。そんな状況を仮定する。その状況であれば、十分な武器弾薬等の物資さえ集積できれば、ウクライナ軍は反撃を考えるだろう。
普通の国同士の戦争であれば、反攻勢によってウクライナの勝利がみえてくる。だが残念なことだがロシアには核兵器がある。
核兵器の本質は恐怖だ。相手に恐怖を与えることで外交や戦争を優位に展開する。そのための兵器だ。既にロシアは核戦略軍が臨戦態勢に入っている。なぜ臨戦態勢に入らせたかその目的は自明だろう。ロシアが2月中旬に核兵器使用を想定した軍事演習を計画していたことはわかっている。演習が行われたかは不明だが行われたのではないかと私はみている。ロシアの意思を疑うべきでない。
www.nikkei.com
そして核の恫喝を行っても敵が恐怖を抱かない場合、かつ敵からの核反撃の可能性が少ない場合、核兵器の実際の使用が俎上にあがってくる。

ロシアの核ドクトリン=エスカレーション抑止?

ロシアの核ドクトリンは、エスカレーション抑止論だと考えられている。私はロシアのエスカレーション抑止論についてさわりしか知らないので、ここでは小泉悠氏の次の論文に基づいて考えることにする。

ロシアの核・非核エスカレーション抑止概念を巡る議論の動向

この論文で『「エスカレーション抑止」の諸段階』としてまとめられている表から地域戦争の項を抜粋してみた。

・多数の PGMを用いた敵の目標に対する攻撃
・敵部隊に対する単発または複数の戦術核兵器の使用
戦略核兵器または戦術核兵器のデモンストレーション的な使用
・単発の核攻撃につながることを確信させる行動

エスカレーション抑止については、ロシアはそれを採用していないという懐疑論もあるようで、実際のところどのようなドクトリンで核が運用されているのかは不明である。
しかし、エスカレーション抑止についてロシア国内で議論されていることは間違いなく、ほぼ全軍に近いロシア軍が潰走するというロシアの国家を揺るがす事態を目前にして、エスカレーション抑止論を(急遽)核運用ドクトリンに適用しこれに基づいて核兵器を使用するというシナリオは、荒唐無稽とはいえないように思う。
その時、可能性が高いのは「敵部隊に対する単発または複数の戦術核兵器の使用」のように思う。
現在起こっているウクライナ戦争は、1962年のキューバ危機以来の核戦争の危機だと私は考えている。狙われているのは日本ではないので日本国内では今一つ危機感がないようだが、ロシアによる核攻撃の可能性を危機感をもって常に考えておく必要があるだろう。
www.yomiuri.co.jp
 

用兵之道、攻心為上(予測)

三国志魏延の言として残る「用兵之道、攻心為上(用兵の道は、心を攻めるを上と為す)」が、私には唯一ウクライナが勝利できる可能性のある方策のように思える。この方策が時間的に間に合うのかというと、どんなに甘く見積もっても間に合う可能性は低いと思うが可能性はゼロではないと思う。
これはロシア人の厭戦気分を大きくし、軍事作戦の遂行を困難にすることでロシア軍を撤退に追い込む作戦だ。事実、ロシア軍の士気は低く、降伏や脱走が相次いでいるという情報もある。
だがこの方策にもさきほど書いた核兵器の問題が立ちはだかる。つまりロシアの核戦略軍にも厭戦気分を拡大させなければ、核兵器の使用可能性をゼロにできないということだ。核戦略軍はウクライナから離れたところにいるので、ウクライナでのロシア軍の被害を目の当たりにすることはない。ロシアの国家指導者への忠誠心が認められなければ核戦略軍に配属されるはずもない。
ウクライナがとっている行動は、攻心為上の作戦として創意工夫に満ちていると思う。この作戦の最大の敵は時間だ。
www.afpbb.com
 

ウクライナをもてあそぶアメリカ(分析)

オバマの戦争

ウクライナは2014年に起こったクリミア併合とドンバス戦争から8年間ロシアと戦っている。今回のプーチンによる侵略は、局地戦だったドンバス戦争がウクライナ全土の全面戦争へ拡大したものと私は認識している。
クリミア併合とドンバス戦争自体はロシアの暴挙で非難すべきものであるが、一方ロシア側にしてみると、ユーロマイダン革命で当時の親ロシア派のウクライナ大統領ヤヌコーヴィチが失脚しロシアに亡命せざるをえなかったことの意趣返しといえる*4。ユーロマイダン革命の裏面で当時のアメリカ大統領オバマがその騒乱の初期から強く関与したことは広く知られている。
オバマは当時オバマドクトリンと呼ばれた不介入主義をとっていた。この不介入主義はオバマの前任であったブッシュ・ジュニアイラク戦争のような過剰な他国介入に対する反省から行われ、それ自体は批判できないものと思う。
だが不介入主義をとっていたのにかかわらず、ウクライナのユーロマイダンには介入したのはなぜか?
確かにヤヌコーヴィチはウクライナ国民からの大きな批判を浴びていたが、ウクライナの民主的な選挙によって選ばれた大統領であることは忘れてはいけない。民主的に選ばれた政権の転覆工作をオバマが行ったのはなぜか?
プーチンがこれに対して大きく反発したのは理解できる。
そしてクリミア併合とドンバス戦争を起こした。
当時のウクライナ軍は装備が旧式化しており弱体化していた。ユーロマイダン革命でできたばかりの政権はオバマに援助を求めたが、オバマウクライナ軍に資金援助と訓練での協力は行ったものの武器供与は行わなかった。
www.cnn.co.jp

リアリストはオバマ外交政策が戦争を招くと強く異を唱えた

自分語りの項に書いたミアシャイマー教授だが、クリミア併合とドンバス戦争が起こると即座にオバマの政策を強く批判する論文を書いた。しかしオバマは政策を変えなかった。そしてその警告は、オバマの後継者であるバイデンが大統領になった今、現実のものとなった。
geopoli.exblog.jp

去年の11月の状況に目を移すと、当時のウクライナのヤヌコビッチ大統領は、ウクライナの西側との統合やモスクワの影響を大きく減らすための協定にEUと合意しそうな雰囲気であった。
プーチン大統領は、それに対抗するためのウクライナにたいしてさらに有利な合意を提示し、ヤヌコビッチ大統領はそれを受け入れている。そしてこの合意が、親欧米感情が強く、モスクワ政府への反感が強いウクライナ西部で、デモを発生させることにつながったのだ。
ところがその後にオバマ政権は、このデモを支援するという致命的なミスを犯した。これによって危機はエスカレートし、ヤヌコビッチ大統領を打倒し、キエフに新しく親欧米政権が誕生したのだ。
(中略)
オバマ大統領はロシアとウクライナにたいして新しい政策を採用すべきだ。それは、ロシアの安全保障面での権益を認めつつ、ウクライナの領土の統一性を支持して、戦争を防ぐというものだ。
このような目標を達成するためには、アメリカはジョージアウクライナNATOには参加しないことを強調しなければならない。そしてアメリカが将来ウクライナで行われる選挙に介入しないことや、キエフの超反露的な政府に同情しないことを明白にすべきなのだ。

トランプはウクライナにディールを持ち掛け武器を売った

トランプはウクライナには冷たかった。とはいえ、トランプお得意のディール*5によってオバマが供与しなかった強力な武器をウクライナに売った。その中に今回の戦争でウクライナ軍を支えているジャベリン対戦車ミサイルもあった*6。トランプはウクライナを自身の政争の道具にしたが、プーチンとは気が合ったのでウクライナは小康状態が続いた。
newsphere.jp

バイデンはNATOの東進にこだわりプーチンの戦争をこまねいた

さきほどユーロマイダン革命からの戦争をオバマの戦争と書いたが実際に動いたのは当時副大統領だったバイデンだった。バイデン自身もトランプと同様にウクライナ疑惑を抱えている。
プーチンが2014年のバイデンの行動を忘れているとは思えない。当然プーチンは強く反発した。
1年前もロシア軍をウクライナ国境に集め、プーチンはバイデンにNATOを拡大しないことを要求した。バイデンは拒否した。
そこでプーチンは1年間かけて作戦計画を立案し、再度ウクライナ国境にロシア軍を終結させた。今度は極東からも部隊を移動させ、ロシア軍のほぼ3分の2、つまり使える兵力のほとんどを集め、バイデンにNATOを拡大しないことを要求した。バイデンもこのままでは戦争が起こるとわかっていたようで、プーチンに対する譲歩の代わりに、ウクライナに戦争が始まると警告を発した。
その上でバイデンはNATOを拡大しないようにというプーチンの要求を拒否した。そしてウクライナ戦争が起こった。
www.bbc.com
 

ヨーロッパの道化師たち(イギリス、フランス、ドイツ)

ウクライナNATOに加入するかどうかというのが、この戦争を引き起こした最大の要因である。そのNATOを構成するヨーロッパの主要国、イギリス、フランス、ドイツの動きはどうだったか?

イギリス

一番まともな反応を示したのはイギリスだった。イギリスは2015年以降、ウクライナ軍の再建に力を貸してきた。そしてプーチンが本気で軍を終結させていることがわかり、戦争が始まる前に武器を提供した。
武器というのは、必要な時に必要な場所になければ全く役に立たない。抑止の側面からも武器援助するなら戦争が始まる前に行うべきだ。イギリスはそうした。
www.bbc.com
昨日、ポーランドを訪問したイギリスのジョンソン首相に対し、ウクライナのキーウから逃れてきたばかりの質問者が涙ながらに訴えた会見をみてほしい。
飛行禁止区域の設定とは、NATOの戦闘機によってロシアの戦闘機等を撃墜することを意味する。それは本当に第三次世界大戦の幕開けとなる。
この訴えに、ジョンソン首相はきっぱりとできないと伝えた。質問者は失望しただろうが、できないことをできないときちんと説明することはこの緊急時には最大の誠意だと思う。
www.youtube.com

フランス

かねてからプーチンと親交があると自負していた大統領のマクロンは危機が高まるとモスクワへ飛びプーチンと会談を行った。そしてプーチンに嘘をつかれ裏切られた。それでも停戦調停に意欲を示してはいる。だがウクライナもロシアもフランスには頼っていない。
www.cnn.co.jp

ドイツ

ドイツはヘルメットを送った。
www.jiji.com
 

ウクライナの蹉跌

世界には信じられる国、信じられない国というのがある。
信じられる度合いで5段階に分けたら、最も信じられないというレベルだと私が分類するのは3か国だ。中国、北朝鮮とロシアになる。
一方、ウクライナも信じられる度で5段階中4番目、つまり中国、北朝鮮、ロシアよりましだが、信じられない国という分類をしている。
ウクライナは後に中国空母遼寧となるヴァリャーグを中国に売却した。この売却がなければ、今も中国は作戦行動ができる空母を持っていない可能性が高い。ウクライナは中国に騙されたというかもしれない。しかしそれは信じがたい。この空母売却は怪しいところ満載の売却劇だった。この売却のおかげで将来的な中国からの侵攻を日本は想定しなくてはならなくなった。
またウクライナは中国に戦闘機エンジンの提供および技術援助も行った。ウクライナには優秀な軍事産業がある。優秀な戦闘機エンジンが作れる国は本当に限られる。日本はまだ高性能な戦闘機エンジンを作れない。中国も戦闘機のエンジン開発に苦戦している。そういう中にエンジンの供与と技術援助が行われた。ウクライナの中国軍の近代化に対する貢献はとても大きいとみている。
ウクライナ人には「ロシアに軍事技術援助し兵器を売却している国を信じられるか?」と逆に問えば、私がなぜウクライナを警戒し信じられないと考えているか理解してもらえるのではないか。
今回のロシアの侵略戦争は、ウクライナの自業自得と言いたいのではない。
ウクライナは、自国の地政学的価値、そして危うさに無頓着だったと言いたいのだ。近年、中国が触手を伸ばしていた軍事産業を国有化するなど、今では中国への軍事技術移転を止めるべく動いているが、過去は変えられない。
NATO加入を求めつつ、中国の軍事力向上に協力する。
NATOアメリカがなくてはなりたたず、一方中国はアメリカの最大のライバル国だ。刻々と深刻度が増す台湾問題にウクライナも間接的に関わっているということを理解してほしい。兵器を売るということはそれを恨む国がでてくることでもある。
台湾がこのウクライナ侵略戦争について、微妙な態度をとり続けているのは、ウクライナが中国と強く結びついていることを知っているからだ。もしロシアがバルト三国、特にリトアニアに侵攻していたとしたら、台湾は大きな非難の声を上げるはずだ。
ウクライナ地政学的にとても難しい位置にある。舵取りは難しい。その失敗の代償がこの惨禍だとすると、その代償はあまりにも大きい。
 

力の信奉者、ロシア。そして中国

ロシアはソ連の成立以来、100年以上、力の信奉者であり続けている。ロシアは現在の国際法体系そのものに不満を持っている。力を背景に今後も現行の国際法体系を自国有利に変化させようとするだろう。そこに他国が交渉する余地はない。それでも世界はロシアと付き合い続けなければならない。
プーチンが悪いと個人に責を求めても意味がないと思う。
プーチンが排除されても小プーチンが現れる。ロシアはそういう地政学的位置にある国だと認識している。
そして中国も同じだ。
 

戦争は誤謬と誤算の産物

ここまで長々と書いたが、関係国がそれぞれ自国の都合で勝手に動いた結果、この侵略戦争という終着点に行きついたということを説明したつもりだ。戦争というのは、関係国の誤謬と誤算が積み重なって発生するものだと思う。これは私のポンコツな頭脳でもたどり着いた戦争の本質の一つと思う。
問題は「どうやったら関係国の誤謬と誤算が起こらなくなるのか?」という命題なのだが、これの答えが全然わからない。それがわからなければ意味ないのにね。ポンコツ頭脳なので許してほしい。
それでも、今回のウクライナ侵略戦争が回避できたかもしれない可能性は、ただ一つ、バイデンとプーチンの会談にあったのではないか?と感じている。検証も考察も不足しているので、今後の分析が待たれるところだ。
 

経済制裁

民主主義の人身御供

プーチン侵略戦争をはじめたことで、それまで日和見だったヨーロッパの各国が、まるで鶏小屋に狼を入れたような大騒ぎになった。そして次々と制裁が決まり、軍事援助が表明されていった。
軍事援助するなら開戦の前に行ってくれよと憎まれ口のひとつでも言いたくなるし、このヒステリックさは地域の安定のためにならないと危惧も持つ。
だが一斉に動くヨーロッパ諸国をみると、もしかすると、これこそアメリカがプーチンの要求であったNATO不拡大を拒否した理由かもしれないと感じた。
ウクライナの戦火がヨーロッパ諸国を一つにまとめた。ウクライナは世界中の同情を集め称えられる。兵器援助、資金援助が行われる。難民の保護も約束される。だが肝心の軍隊は派遣されない。
また露悪的な表現になるが、ウクライナはまるでヨーロッパの民主主義の人身御供に捧げられたようにみえる。

経済制裁の効果

これらの経済制裁が効果を発揮するまでには、少なくとも数か月、遅ければ数年かかるだろう。
そのときまでウクライナ戦争が続いていたら、それこそウクライナ全土が瓦礫の山となってしまう。それまでには停戦せねばならない。つまり経済制裁ウクライナ戦争の終結には直接の効果を表さないだろうと思う。

日本の安全保障の立場から

しかし日本の安全保障の立場に立つと、この経済制裁は歓迎すべきものと思われる。
民主主義国を侵略すれば、それまでバラバラと思われた国民が一致団結して国を守る。世界も一致団結して自国への悪影響を覚悟して経済制裁を発動する。
これは日本がもっとも心配すべき侵略、すなわち中国による台湾侵攻の抑止のために資すると考えられる。中国が台湾侵攻を行う際のリスクが更に高まる。これは日本にとって奇貨であろうと思う。
 

ロシアのウクライナ侵略は新たな世界秩序の始まりか?

https://pbs.twimg.com/media/FLzf135XoAESGXA?format=jpg&name=small

はじめに

ロシアのウクライナ侵略に強く抗議する。力によって他国を従わせる。こういったことを許してはいけない。ウクライナが既に受けた被害、これから起こるであろう受難に心を痛める。私は言葉を発することしかできない。だからせめて気は心だけでもとウクライナへのシンパシーを示したい。
私もJSF氏にならい、今後、ウクライナの地名のカタカナ表記については今後ウクライナ語由来のものに統一したいと思う。なお従来のロシア語由来表記については初出時に( )書きとして表記する。調べつつ書くので間違うかもしれないが間違いがあれば直していきたい。
news.yahoo.co.jp

ロシアの進撃ルート

2022年2月24日、ロシアはウクライナを侵略した。イギリス国防省が2月17日にロシアの侵略ルート予測をツイートしたが、この予測はほぼ正しいようでロシアは主に3つのルートで戦っているように思える。


3つのルートとは次の通り。

  1. ロシアとベラルーシ国境から侵攻しキーウ(キエフ)を東西から攻撃するルート
  2. ロシア国境とドンバスの親ロシア派支配地から侵攻しドニプロ(ドニエプロペトロフスク)を目指す攻撃ルート
  3. クリミアから侵攻しオデーサ(オデッサ)を目指す攻撃ルート

上記の3は、イギリス国防省の予測図では点線で書かれているが、既にオデーサ州で戦闘が発生しているという複数の情報がある*1*2

実はイギリス国防省がツイートする1日前に、私も次のようなはてなブックマークコメント(以降「はてブ」と省略)を書いた。イギリス国防省の予測とほぼ一致しているのがわかると思う。

【詳しく】緊張続くウクライナ ロシアが侵攻したら何が起きる? | NHKニュース

露の軍事作戦は①露とベラルーシの両方の国境からキエフに向け東西から攻撃、②ドンバスの支配地を拡大、③オデッサを奪取し沿ドニエストルの回廊を確保。この3作戦の集合体と見ている。ここに示されたどれでもない

2022/02/16 14:05
b.hatena.ne.jp

この投稿では私はなぜこのような侵略ルートだろうと予想したか、その理由を説明することで、ロシア(プーチン大統領)の意図を考えることにつなげていきたい。

キーウへの侵略

ロシアとウクライナの緊迫度が増し、ロシアによるウクライナ侵略の可能性が高いと考え始めたのは、2021年12月ごろからだった。そしてロシアによる侵略が起こるとしたらどのようなものか考え始めた。
考えをまとめながら12月10日に私が書いたはてブが次のものだ。

米露首脳会談でも止まらない ロシアによるウクライナ侵攻の危機(小泉悠) - 個人 - Yahoo!ニュース

僕はベラルーシの動きを注視している。露軍が正攻法で侵攻すればドニエプル川が防壁となる。電撃的な侵攻のためにベラルーシ側からも侵攻を行うのではないか?ウクライナは外交的な戦争回避の努力を続けるべきだろう

2021/12/10 15:09
b.hatena.ne.jp

なぜロシアは電撃的な作戦をとると考えたか

ロシアは領土拡大を望んでいるわけではないと考えた。プーチン大統領が起こしたこの侵略は明らかに国際法違反で不正義と思うが、その前に2014年にウクライナで起こったユーロ・マイダン革命で親ロシア派のヤヌコーヴィチ大統領(当時)が失脚しロシアに亡命せざるをえなかったことを思い出すべきと思う。この革命の裏面でアメリカのオバマ政権(当時)がその騒乱の初期から強く関与したことは今では広く知られている*3
ウクライナのユーロマイダン*4は、市民運動という性質ももちろん持つが、一方、当時のヤヌコーヴィチ政権もまたウクライナでの民主的な選挙によって成立した政権であることは考慮すべきだろう。
民主的な手続きによって成立した政権に反対する市民運動に他国が強く関与する。これは内政干渉ではないか。大統領選の不正などに対する立場等によって見方は変わると思うが、プーチン大統領がこれは内政干渉であり国際法違反と強く反発するのは理解できる。アメリカは他国の市民の不満を煽り政権を転覆する。それはロシアでも起こりうる。そのように強い警戒心を持つのも理解できる。
ロシアの戦争目的は「二度とウクライナアメリカが手をだせなくする」ことだと考えた。その前提でロシア側に立って考えると、戦争開始後、ウクライナのゼレンスキー政権がキーウから逃れ、例えば北西部のリヴィウに臨時政府を移し抗戦を続けることは避けたいと考えるだろうと思った。
そのためには電撃的な作戦を行いキーウを制圧し、ゼレンスキー大統領および要人を捉えあるいは殺害し、ウクライナ政府を転覆することが最重要目標になる。それがロシアが電撃戦を考えるだろうと予想した理由だ。

キーウの主要施設は市街西部にある

ある国の政府を転覆する。当事国の軍や武装勢力が行えばクーデターと呼ばれ、市民勢力が行えば革命と呼ばれることが多いが、その時に狙われる施設はおおよそ決まっている。元首府、議事堂、政府機関、放送局、空港などだ。そこで私はGoogle Mapを使って、キーウのそれらの施設の場所を調べてみた。
キーウは特徴的な都市で、市街の真ん中をドニエプル川という大河が流れている。Google Mapは衛星写真があるのでそれを使いキーウ市街および近郊のドニエプル川の東西をつなぐものを調べると、6つの道路橋、1つのダム堤と2つの鉄道橋があるのがわかる*5。そして元首府、議事堂、政府機関、放送局、空港などの主要施設の多くは、市街の西側に位置することがわかった。
もしロシア軍がロシア国境から侵略すればドニエプル川が自然の要害となる。冬季は凍結しているので舟艇は使えない。戦車など重量物は氷の上を渡れない。臨時橋を架けるにはドニエプル川は大きすぎる。つまり橋などの渡河地点を破壊すれば進軍は大きく阻害されるということだ。それを避けるためにはドニエプル川の西側からキーウを攻撃するしかない。こう考えるとベラルーシの協力なしにはこの作戦は成立しないと思った。ベラルーシへも外交的働きかけは行われたと思っているがロシアとベラルーシの同盟の強固さだけが印象に残った。

アントノフ空港へのヘリボーンとキーウ西部への軍展開

ロシア軍がドニエプル川西岸から攻撃をするとは予想したが、ロシア軍がキーウ北西のアントノフ空港へヘリボーン(ヘリコプターを使って兵員を運ぶ強襲作戦)を行ったのは少し驚きがあった。
ヘリボーン作戦は比較的少数の兵力しか送れず、一旦目標を占拠しても強い反撃を受けることが多く、リスクのある作戦だからだ。
情報が錯そうしていて現状はつかみづらいが、アントノフ空港はウクライナ軍が一旦奪回したものの、ロシア軍が再奪取して現在はロシア軍の占領下にあるようだ。
もしそうならばアントノフ空港に兵力を空輸してキーウ西部のロシア軍の兵力が時間と共に増強される可能性が高い。
真偽はわからないがロシアはキーウ西部を封鎖したと発表した。ロシアとウクライナの停戦が合意されなければ、キーウ西部からロシア軍が突入し市街戦となるだろう。これがこの戦争の最大の焦点となると思う。
市街戦は大きな被害がでる。特に一般住民の被害が心配だ。停戦合意が待たれる。
この投稿を書いている2月27日現在、キーウのウクライナ軍は組織的な抵抗を行っている。だがロシア軍とウクライナ軍の戦力差は大きく、いずれロシア軍が制圧することになると思われる。
nordot.app
www.nikkei.com

ハルキウ(ハリコフ)攻撃とドニプロを目指した侵攻(東部戦域)

侵略者にも大義名分は必要だ。2014年のクリミア併合とドンバスでの戦争において、ロシアはロシア系住民の保護を理由にあげた。今回のウクライナ侵略も同じ理由をあげている。それも予想通りだった。つまりドンバスを守る*6ことはロシアの大義であり、ドンバス周辺への攻撃は必ず行われるものと予想した。

ロシア軍の配置の情報

このロシアによるウクライナ侵略は、アメリカが積極的に情報を提示したこと、SNSによる個人の情報発信、商業衛星の画像などによって、事前のロシア軍の配備状況がかなり正確にわかった。
これは特筆すべきことと思う。私はこれらの情報があったので、ウクライナ東部での侵略ルートをある程度予想できた。
代わりに意図的な偽情報も多く出回っている。ロシアは様々な偽情報を流している。私もできる限り偽情報をつかまないようにしているつもりだが、もし偽情報をつかんでいたら申し訳なく思う。その時には記述を修正したいと思う。
www.bbc.com

ロシア軍の東部戦域の主たる攻撃目標がハルキウとドニプロと考えた理由

キーウに対する攻撃がゼレンスキー政権の瓦解を目指したものであるのに対し、東部戦域の攻撃理由は、ウクライナ軍の継戦能力の破壊にあると考えた。短期的にはウクライナ軍の指示系統と補給体制の破壊であり、長期的には軍備能力(軍事工場)の接収もしくは破壊になる。

ハルキウには、マールィシェウ記念工場*7があり、ウクライナ陸軍の主力戦車であるT-84などを製造している。長期的な視点では、ロシアがハルキウの軍事工場を接収あるいは破壊すればウクライナ軍の再建は困難になる。またハルキウには陸軍および空軍基地があり、ドニプロの項にも書いたがウクライナ軍東部作戦司令部傘下の部隊の大包囲を行うために攻撃は不可避だろうと予測した。

  • ドニプロ

ドニプロには、ウクライナ陸軍の東部作戦司令部(1個戦車旅団、4個機械化歩兵旅団、1個砲兵旅団他)の本部がある。またドニエプル川の渡河地点でもある。ドニプロはウクライナ東部の要衝であり、ロシアはハルキウを経由した軍と、ドンバスからの軍によってウクライナ東部のウクライナ軍を大きく包囲することを狙うと考えた。包囲されれば補給路を断たれることになるので、ウクライナ東部のウクライナ軍は壊滅するだろう。ドニプロは、ロシア軍にとって東部戦域の最終目標と思う。

現状

情報は錯そうしているが、ドンバス正面のウクライナ軍は頑強に抵抗しており、ロシア軍は足止めされているようだ。
一方、クリミアから北東への部隊移動が確認され、さらにマリウポリ西部にロシア海兵隊が上陸したという情報がある。南からの攻撃の方が早いかもしれない。
www3.nhk.or.jp

オデーサと沿ドニエストルへの回廊

ウクライナの継戦能力を奪うために、ロシアはウクライナに対する外国からの支援ルートを遮断することを考えるだろうと思った。
黒海には常駐の黒海艦隊に加え、北海艦隊、バルト海艦隊からも艦船を引き抜き集結させているので、それらの艦船を使い黒海からの支援ルートは遮断していると思うが、それに加えオデーサの港湾も押さえることで、ロシア軍の補給ルートを確立する一方、外国からの支援ルートを完全に遮断できると考えた。
さらに隣国モルドバドニエストル川東岸の細長い地域*8は、沿ドニエストル共和国*9を自称するモルドバに対する反政府組織が実質的に支配している。この組織は親ロシアであり、小規模(2個大隊)とはいえロシア軍も駐留している。ウクライナと戦争状態になれば沿ドニエストルに駐留する軍が孤立するので、回廊を確保する動きはあるだろうと考えた。
とはいえ、キーウに対する侵略や東部戦域に比べると小さな部隊での侵略とは思うが、その2つとは別の目的と考えたので、分けて考えている。
 

プーチン大統領の意図を推測する

プーチン大統領のリスク

この侵略における最初の目的は、ウクライナのゼレンスキー政権の転覆であることは間違いないだろう。そして親ロシアの政権を擁立し、ウクライナNATOとの緩衝地帯にすることを目指している。ここまでについては、識者の分析もほぼ一致していると思う。
しかしこれだけのためにプーチン大統領は大きな賭けにでたのだろうか?
もしこの軍事作戦に失敗すれば、プーチン大統領の求心力は大きく損なわれ、クーデターが起こるかもしれない。クーデターを防いでも次の大統領選挙で勝てる見込みはほとんどなくなる。政権を失えば戦争犯罪人として裁判にかけられるかもしれない。憲法を停止して政権を固守しても求心力がなくなった状況では暗殺されるかもしれない。国際法違反と欧米からの強い反発をうけることを理解したうえで、さらに失敗の大きなリスクも抱える。プーチン大統領ウクライナの政権を交代させるためだけにそのリスクを抱えたのだろうか?

ミアシャイマー教授の「Getting Ukraine Wrong」論文

ここで2014年のウクライナ騒乱の時に、ミアシャイマー教授がオバマ大統領(当時)の政策を批判して書いた論文を提示したい。シリアとアフガニスタンアメリカの関与が失敗に終わったことで逆にロシアの協力が必要なくなったことを除くと、8年経った今でもこの論文の指摘内容は生きている。
geopoli.exblog.jp

そして将来のウクライナの政府にたいしては、少数派の民族の権利、とくに公用語としてのロシア語の立場を尊重するように求めるべきなのだ。

この論文の発表から6年後の2020年、ウクライナはロシア語の広告を禁止する法を制定した*10

オバマ大統領はロシアとウクライナにたいして新しい政策を採用すべきだ。それは、ロシアの安全保障面での権益を認めつつ、ウクライナの領土の統一性を支持して、戦争を防ぐというものだ。

オバマ大統領(当時)は政策を変えなかった。そしてオバマ政権の副大統領であったバイデン氏が大統領になり、オバマ大統領(当時)の政策に戻した。バイデン大統領は地政学ではなくNATOの開かれた条約という大義に忠実だった。そしてついに戦争は起きてしまった。この戦争が終わったのち、ウクライナの領土の統一性は維持できているのだろうか?

ロシアと良好な関係を維持することは致命的に重要だ。なぜならアメリカは(中略)中国に対抗するという意味において、モスクワ政府の助けを必要としているからだ。
アメリカにとって唯一のライバルとなる本物の可能性を持っているのは、中国だからだ。

ロシアはアメリカと対決し中国と協調する道を選んだようにみえる。アメリカはヨーロッパと東アジアと両面で同盟国に対する義務を果たすことが可能なのだろうか?

オバマ大統領(当時)がはじめた戦争

私はウクライナは2014年から8年間ずっと戦争を戦っていると思っている。そしてその戦争はオバマ大統領(当時)がはじめ、プーチン大統領が拡大した戦争だと考えている。
ウクライナアメリカの代理戦争を戦っている。だがアメリカ軍が派兵されることはない。この戦争にウクライナの利益はない。それなのに、多くの兵士が死に、一般人にも多くの犠牲が出ることになる。ウクライナ国民の愛国心には心が震える。だからこそ一層痛ましく思う。
一方、プーチン大統領の側からみると、ロシアはウクライナではなくアメリカと戦っていると考えていると思う。これが私が言いたかったことだ。
NATOを拡大するなと開戦の直前までプーチン大統領が警告していたことを忘れてはいけない。それを拒否したのはアメリカだ。この侵略戦争の最大の責任はロシアにある。それは間違いはない。だからロシアを強く非難する。だがこの戦争の8年間の経緯をみれば、アメリカにも責任があると考える。アメリカはウクライナ政策を間違ったのだ。

新COMECON経済圏構想

ロシアはアメリカと戦っているという認識だと分析した。もしその分析が正しいのであれば、ロシアは(アメリカ主導の)貿易ルールから排除されることを覚悟していると思う。国が立ち行かなくなってはいけないので、アメリカから排除される以上、ロシア主導の貿易ルールで貿易できる経済圏の成立を目指すと考える。それをこの投稿では「新COMECON経済圏」構想と呼ぶことにする。
ロシアの主要な輸出産品は天然ガスで、これが輸出総額の半分弱を占める*11。現在天然ガスは高止まりしており、輸出先さえ確保できれば利益をあげることができるだろう。ヨーロッパ、特にドイツはロシアの天然ガスに依存しているので、ロシアからの天然ガス輸入を止めるわけにはいかないと思う。SWIFTから排除*12されても、金決済で輸入を続けることは十分考えられる。またヨーロッパと並ぶ輸出先である中国とは人民元決済に移行するだろう。中国は中国で強力な経済を背景とした人民元決済圏、それを私は「新朝貢国経済圏」と呼びたいのだが、そういうブロック化を企図しているようにみえる。
ロシアは旧ソ連圏の諸国を「新COMECON経済圏」としてまとめる一方、ロシアの天然ガスを必要とするヨーロッパの国と制裁逃れを画策しつつ、中国とは人民元決済を行うのではないだろうか。
アメリカとEU諸国、および日本などが行うロシアへの制裁は、「ドルを主軸通貨とする経済圏」と「新COMECON経済圏」、「新朝貢国経済圏」の3つの経済圏成立の始まりの出来事となるかもしれない。
制裁には対策があると考えるべきだ。

戦後パッケージ

ロシアはロシア主導の「新COMECON経済圏」構想を持っているならば、それに加えたいと考えるのは旧ソ連圏の国となるだろう。それらの国に厳しい条件を出したら、「新COMECON経済圏」には加わるはずもない。
ウクライナに対してもこの戦争の終結後、「新COMECON経済圏」入りを期待しているのではないだろうか。
私は、ゼレンスキー大統領の交代、中立化、ウクライナ軍の縮小、クリミアのロシア編入とドンバスの独立の承認(ドンバス戦争終結)を前提に、ロシアはウクライナとの間で天然ガスの安定的な供給を約束し、ウクライナの復興と経済支援をパッケージにするのではないかと考えている。ロシアはこの戦争を相当準備して開戦した。戦後のことも準備していると考えても不思議ないだろうと思う。
この戦争の帰趨はほぼ揺るがない。ウクライナはその現実を受け入れてよりよい条件をロシアから引き出す方が賢明に思える。この戦争が終結すれば、日本も他国もウクライナの支援に乗り出すことができる。捲土重来。今は国力を蓄えるべき時だ。
 

日本にとっての教訓

ミアシャイマー教授は、2015年に「ウクライナ危機は中国を利す*13」と日本での講演で警告している。その警告は今も有効だ。日本にとってもアメリカにとっても一番警戒すべきはロシアではなく中国であるのはいうまでもない。
ロシアによるウクライナ侵略は「自国を守る力がない国は他国から侵略される」ことがあるという有史以来続いていた世界秩序が21世紀の今も続いているという、当たり前でありふれた警告を与えていると思う。冷戦終結から続いたアメリカ一強の時代、パクスアメリカーナの時代は去った。
残念ながら憲法9条は日本が侵略戦争を起こさないための制約であって、他国はそれに縛られない。ロシアは冷戦終結によって封印されたパンドラの箱を開けてしまった。これからは(日本は侵略戦争を行わないが)他国から侵略されることもありうるものと想定して安全保障政策を考えなければならない。具体的には、東アジアで最大の軍隊である中国軍からどうやったら日本を守れるかという議論が必要になるだろう。そのためには、対中国の軍事戦略を練らないといけない。中国との間には大きな経済力の差と人口の差がある。中国と同じ軍備はできない。その前提で軍事戦略を考え、それに必要な法整備(憲法を含む)と軍備を整える必要があろう。
私は、日本版の接近阻止・領域拒否戦略*14を策定し、それを実行できる軍備*15を整える必要があると考えている。
そして何よりも「日本は日本国民自身で守る」という気概を持たないといけないだろう。
その気概があってこそ日米同盟が力を持つことになる。
 

*1:ウクライナ政府「首都キエフ狙ったミサイル攻撃続く」…米紙「オデッサに露軍が上陸」 : 国際 : ニュース : 読売新聞オンライン

*2:CNN.co.jp : 6枚の地図が明らかにするロシア・ウクライナの衝突

*3:ウクライナ危機はなぜ終わらないのか〜欧米vsロシア、相容れない「正義」の論理(廣瀬 陽子) | 現代ビジネス | 講談社(2/4)

*4:ユーロマイダン - Wikipedia

*5:見落としがあれば指摘いただきたい。

*6:ここではロシア側の予測をしているので、あえてロシア側に立った文になっていることをご理解いただきたい。不快に思う人がいることも理解するが、どうかご容赦いただきたい。

*7:www.malyshevplant.com

*8:一部西岸も支配している

*9:沿ドニエストル共和国

*10:ウクライナ、ロシア語広告禁止 影響力排除狙いか:東京新聞 TOKYO Web

*11:第5節 ロシア及び中央アジア:通商白書2018年版(METI/経済産業省)

*12:ロシアのSWIFT排除決定間近か、「数日内」とユーロ圏の中銀幹部 | ロイター

*13:【15-01】ウクライナ危機は中国を利す ミアシャイマー氏が警告 | SciencePortal China

*14:接近阻止・領域拒否 - Wikipedia

*15:具体的には、中長距離地対艦ミサイル、地対地ミサイル、地対空ミサイル、潜水艦などの軍備増強が必要と考えている。