(投稿の補足)ウクライナ戦争 3月1日~8日の戦況
nstitute for the Study of Warというシンクタンクがウクライナ戦争の戦況を分析しているので、戦況部分を翻訳*1してみた。
戦況部分をそのまま訳しているので著作権上どうなのか?とは思ったが、警告がきたらフェアユースを主張しつつ記述を削除することにして、とりあえずここに載せる。
とはいえInstitute for the Study of Warに申し訳ないので100$の寄付は行った。
3月1日現在の戦況
www.iswresearch.org
ロシアの支配地域と主な起動軸 3月1日
ロシア攻撃作戦の評価、3月1日
ロシア軍はキーウ(キエフ)の北と西で部隊の強化と補給を完了し、首都の包囲と最終的な捕獲を目的とした包囲作戦を展開しているようだ。この作戦は今後24時間から48時間の間に加速されると思われる。キーウに対するロシアの作戦は、プーチン政権の主要な作戦である。ロシア軍はまた、ハルキウ(ハリコフ)奪取、マリウポリ奪取とロストフ・オン・ドンとクリミアを結ぶ「回廊」の確保、ケルソン確保とミコライフとオデーサに向けた西への進出のための侵攻準備の3つの支援作戦を展開している。3つの支援作戦は活発で、マリウポリに対する作戦がこの24時間で最も進展している。ロシアのキーウ攻撃は、西側からの包囲と最終的な包囲を目指す主戦力と、キーウを東側から包囲するチェルニヒフとシュミーからの支援活動で構成されていると思われる。キーウの北にあるロシアの戦闘・兵站用車両の長い隊列は、西からの包囲のための条件を整えていると思われるが、ロシア軍がキーウの北西郊外に維持している位置からキーウに直接攻撃を加えることも可能であろう。ロシア軍はキーウへの直接攻撃よりも、包囲を行う可能性が高い。
ロシア軍はハルキウ内で(スマート兵器による点攻撃ではなく)エリア攻撃兵器の使用を続け、民間インフラへの被害と民間人の犠牲を劇的に増やしている。ロシア軍はこの24時間、ハルキウに対して大規模な地上作戦を試みていないとされるが、その代わりに空爆、ミサイル、砲撃を行い、今後24~48時間以内に地上攻撃を再開するための条件を整えているようである。ロシア地上軍は、ハルキウを包囲するのではなく、北東から再び正面攻撃を行うようである。
南部のロシア軍は、ザポリージャの南で陣地を維持し、ヘルソンのウクライナ軍陣地を縮小して同市を奪取するために戦い、マリウポリを包囲して奪取の条件を整えているようである。南方でのロシアの作戦は、今後24時間以内にオデーサに差し迫った危険をもたらすとは思われない。接触線に沿って戦うウクライナ軍を遮断するために、ロシア軍がザプロジヤ付近を北上する可能性も、今後24~72時間以内には極めて低いと思われる。
ロシア軍はマリウポリを包囲したと主張し、南部のケルソン市に入ったと伝えられている。
ロシア軍は必要な物資と増援を受け取っており、今後24~72時間で、より迅速で効果的な作戦が可能になる可能性がある。しかし、キエフ周辺のロシア軍は、連隊や旅団の司令部の下で活動するのではなく、多くの異なる大隊の要素を組み合わせて、その場しのぎのグループを作っているため、まだ組織化されていない。ISWが以前報告したベラルーシとロシア西部におけるロシア軍の構成と組織の初期誤差は、キエフ周辺でのロシアの物流と作戦の失敗につながったが、これをすぐに改善することは難しく、補給問題が解決されて増援が戦場に入ったとしても、ロシアの作戦に摩擦を起こし続け、効果を低下させる可能性が高い。増援のロシア軍がもたらすであろう有効戦闘力を評価するにはまだ早すぎる。
3月2日現在の戦況
www.understandingwar.org
ロシアの支配地域と主な起動軸 3月2日
ロシア攻撃作戦の評価、3月2日
ロシア軍は3月2日、キーウ包囲を支援するための攻撃活動を再開したが、支配地域の拡大はほとんどなかった。ロシア軍はキーウの北と西の部隊を強化し、補給するために72時間大きく中断した後、キーウへの両進攻軸で攻勢を再開した。キーウを包囲するためのロシアの作戦は、ロシアの主要作戦である。ロシア軍は、ハルキウ奪取、マリウポリ奪取とロストフ・オン・ドンとクリミアを結ぶ「回廊」の確保、ケルソン確保とミコライフやオデーサ方面への西進のための条件整備という3つの支援活動も行っている。ロシア軍はケルソンを占領し、マリウポリの重要な民間インフラへの砲撃を開始し、同市を降伏させようとしたようだが、ハルキウではほとんど領土を獲得することができなかった。ロシアのキーウ攻撃は、西側からの包囲と最終的な包囲を目指す主戦力と、チェルニヒフとスミからの軸線に沿って東側から包囲する支援活動で構成されているようだ。この48時間にキーウの北で観測されたロシアの戦闘・兵站車両の長い隊列は、現在、ロシア軍がキーウの北西郊外に維持している位置からキーウへの直接攻撃を支援していると思われる。しかし、ロシア軍は今後数日間、キーウへの直接攻撃よりも、包囲を優先する可能性が高い。
ロシア軍は3月2日にハルキウへの正面攻撃を再開し、エリア攻撃兵器の使用を続け、民間インフラへの被害と民間人の犠牲を劇的に増加させた。ロシア地上軍は、ハルキウを包囲するのではなく、北東から再び正面攻撃を行う模様で、ウクライナの抵抗が長引くと見られる。
南部のロシア軍はケルソンを確保し、マリウポリの民間インフラへの砲撃を開始し、直接攻撃せずに降伏させようとしたもよう。一方、ザポリジアの南では陣地を維持しているようである。ロシア軍は今後24時間以内にミコライフへの攻撃活動を再開する可能性が高いが、オデーサに差し迫った危険はないようである。ロシア軍は、重要な民間インフラを破壊し、民間人を殺害して人道的大惨事を引き起こすことで、マリウポリを降伏させようとしているようだ。これはロシア軍がシリアで繰り返し取ってきたアプローチである。ロシア軍がザプロジヤ付近を北上し、接触線に沿って戦うウクライナ軍を遮断する可能性は、今後24~72時間以内では極めて低いと思われる。
ロシア軍は必要な物資と増援を受け取っており、今後24~72時間でより迅速かつ効果的な作戦が可能になるかもしれない。しかし、キーウ周辺のロシア軍は、連隊や旅団の司令部の下で活動するのではなく、多くの異なる大隊の要素を組み合わせて、その場しのぎのグループを作っているため、まだ組織化されていない。ISWが以前報告したベラルーシとロシア西部におけるロシア軍の構成と組織の初期誤差は、キーウ周辺でのロシアの物流と作戦の失敗につながったが、これをすぐに改善することは難しく、補給問題が解決されて増援が戦場に入ったとしても、ロシアの作戦に摩擦を起こし続け、効果を低下させる可能性が高い。増援のロシア軍がもたらすであろう有効戦闘力を評価するにはまだ早すぎる。
3月4日現在の戦況
首都キーウ包囲戦
- ロシア軍は、スムイ(ウクライナ北東部の都市)からキーウの東部近郊への攻撃軸において急速に侵攻しており、今後24~48時間以内にキーウのドニプロ川東岸地区を包囲・攻撃する可能性がある。
ドニプロ川東岸(ザポリージャ)
3月5日現在の戦況
首都キーウ包囲戦
- キーウ北西では、この24時間、ロシア軍のめだった侵攻はなかった。なおイヴァンキフ付近にヘリコプターの前進基地を設置していると分析している。また輸送隊を攻撃ヘリコプターが護衛し移動している。
- キーウ北東では、ロシア軍はほとんど動きがない。
- キーウ西のスムイからの攻撃軸でも、この24時間目立った動きはない。
3月6日現在の戦況
首都キーウ包囲戦
- キーウ北西でロシア軍は陣地に展開し、過去24時間戦闘行動を起こしていない。最大18個の大隊戦術グループ(BTG)が展開していると報告されている。ロシア第76空挺師団の一部がキーウ中心から20km西方のビロホロードカに向けて前進しているという報告もある。キーウ西方から包囲を完成させるための近道を探していると思われるが、それが成功するかは評価できない。
- ロシア軍は、キーウからイルピン(キーウ中心から西北西20km)を経由する民間人が避難するために使っている鉄道路線を空爆、砲撃している。
- キーウ北東のチェルニヒフへの再攻撃のため、燃料気化爆弾発射機を前進していると報告されている。
- キーウ東のブロバルイ付近でロシア軍が再編成しており、ボルィースピリ空港に向けて進撃するのではないかと見られている。
3月7日現在の戦況
首都キーウ包囲戦
- キーウ北西では、ロシア軍はキーウ北西20kmに位置するイルピンとそれより5km北のブチャの制圧を企図した攻撃を行っている。インフラおよび民間人を直接狙う攻撃が行われている。またキーウを包囲するため、南方向へ前進しつつある。
- キーウ北東では、チェルニヒフに軍を集中し、街を包囲、掌握するための活動を行っている。
- キーウ東では、ロシア軍は東部郊外に拠点を置いている。ウクライナ軍によるノヴァバサンのロシア軍の兵器庫攻撃が成功したとウクライナ軍は伝えている。この攻勢軸はサムイ方面から長い兵站戦で維持されていると思われ、兵站の維持は困難と思われる。ウクライナ軍の兵站拠点への攻撃の継続は、キーウ東部にいるロシア軍の行動妨害になる可能性がある。
3月8日現在の戦況
首都キーウ包囲戦
- キーウ西では、ロシア軍はキーウ北西20kmに位置するイルピン周辺の支配を強化している。これらの地域で住民から食料、燃料、その他必需品を奪い飢餓戦術を展開している。また2個大隊戦術グループがキーウ西方50kmのビシフに侵攻した。不特定多数の大隊戦術グループがキーウ北西70kmのイヴァンキウを攻撃している。空挺師団とスペツナズの部隊がキーウ北西30kmのラキフカ付近で攻撃を開始したが撃退されたもよう。その後キーウ北西40kmのダイメル付近でも空挺師団とスペツナズの部隊がいたとされる。
- キーウ北東では、チェルニヒフに軍を集中し、街を包囲、掌握するための活動を行っている。攻撃は確認されていない。
- キーウ東では、ロシア軍は東部郊外に拠点を設けようとしている。ウクライナ軍はグルヒフでロシア軍の9個大隊戦術グループによる攻撃を阻止したとしている。ロシア軍はこの抵抗を排除するために兵力を結集していると思われる。最大22個の大隊戦術グループがカニフに集中しているという報告がある。