いつも選挙で争点にならない各党の「安全保障政策」分析
参議院選挙が終わり様々な分析や感想が投稿されている。私も次の記事をブログに書いて投稿した。
thesunalsorises.hatenablog.com
私は、各党の政策のうち、外交、安全保障政策を重視するのが常だが、外交、安全保障政策については、選挙の争点になることがほとんどない。安全保障政策が国政選挙の勝敗を左右したことは過去一度もなかったのではないかと思っている。
それでも台湾周辺や東シナ海における中国軍の活動は近年より活発、攻撃的、挑発的になってきており、外交、安全保障政策の重要性は年々増していると主張したい。
そこで、今回の参議院選挙で主要政党が掲げた外交、安全保障政策をまとめ、評価してみたいと思う。
立憲民主党
「専守防衛に徹しつつ、日米同盟を深化させます。」
立憲民主党の政策パンフレット*1に書かれたキャッチフレーズなのだが、トランプ大統領相手にこんなことできるのか?が最初の感想だった。
トランプ大統領は、片務的な日米安全保障条約に繰り返し不満を表明している。トランプ大統領は日米安全保障条約を双務的にすることを求めているのは自明と思うのだが、立憲民主党はトランプ大統領の不満、要求に対しては完全にゼロ回答し、その上で日米同盟を深化させると主張している。
支持者はここに矛盾があると感じないのだろうか?
私には、立憲民主党には、従前のいわゆる護憲勢力、専守防衛に必要な最小限の戦力を保持する*2と主張する人々と、昨今の中国の軍事力増強を受けて日本も対抗できる防衛力が必要だと考える人々が存在し、この2つの人々の間には防衛政策について根本的な不一致があるのではないか?と疑っている。
www3.nhk.or.jp
次に各党の安全保障政策で賛否が分かれるものについてまとめておきたい。
出典*3
国民民主党
国民民主党の安全保障政策は、主に北朝鮮の核兵器開発を念頭に、拡大抑止つまりアメリカの核兵器による抑止(いわゆる核の傘)を最初に主張しているところに特徴がある。その一方で争点と思われる長距離対地ミサイル(いわゆる敵基地攻撃能力)の保有を含め、通常戦力をどうするか記載が見当たらない。
核の傘によって通常戦争を抑止できるかについては議論がある。しかし中国が日本の領土に通常爆弾でミサイル攻撃したとしても、アメリカ軍が核兵器で反撃するかと言われればNoだろう。日本の国土は日本が守る。国民民主党も尖閣諸島など固有領土を守り抜くと政策には書いている。一方守るためには通常兵器は必要なはずなのだが、どのような通常兵器をどういう戦略に基づき準備しするか書いていないのは責任ある国政政党といえるのか疑問に思う。
出典*4
参政党
参政党は今回の参議院選挙ではじめて有力な国政政党になったばかりだ。安全保障政策に限らず他の政策も大雑把な方向性しか示していない。
「人権侵害や法の支配を破壊する(力による一方的な現状変更を試みる)国家に対しては、日本の地政学的状況と国益を踏まえて毅然とした対応をとる。」とは書かれているものの、毅然とした対応とはどういうものかはあいまいだ。神谷代表が著書で主張している「自衛軍」による抑止とは具体的などのようなものか、今後、安全保障政策をより詳細化する必要があるだろう。
出典*5
日本維新の会
日本維新の会の安全保障政策の柱は、防衛費のGDP比2%の肯定であろうと思う。しかし、このGDP比2%の防衛費をどう使うべきかという主張がないようにみえる。唐突にアメリカとの「原子力潜水艦の共有」*6のようなトピックが出てくるが、これは核シェアリングのことを言っているのかもしれない。しかし断定はできない。安全保障政策全体を通じて、あいまいな印象を受ける。
出典*7
日本共産党
知っている人も多いと思うが、日本共産党の政策に防衛力による「安全保障政策」は存在しない。日中関係についても、外交によって「互いの脅威にならない」という2008年の合意を順守するよう中国に働きかけるとしている。その一方で、防衛費は大幅に削減することを主張している。
出典*8
れいわ新選組
戦争ビジネスには加担しないというスローガンのもと、防衛力による安全保障政策は否定している。政策には「アメリカと中国が対立を深める中でも、平常心を保ち、経済成長と平和外交で国民経済を豊かにします。」と書いている。日本が平常心を保つと、なぜアメリカと中国が対立を深めても平和が維持できるのか、ツッコミどころはとても多い。「中国との関係を重視し、緊張する米中関係の橋渡し役を担い、緩和に努める」とも書いているので、旧民主党鳩山政権時代の「友愛の海」*9外交に近い考え方のように思える。
- 双務的な日米同盟:反対(安保3文書廃止)
- 長距離対地ミサイル保持:反対
- 核兵器シェアリング:反対(アメリカの核の傘も反対)
- 辺野古新基地建設:反対(それにとどまらず南西諸島と沖縄本島のミサイル部隊と弾薬庫の撤去を主張)
出典*10
公明党
連立与党である自民党の安全保障政策に反対はしていない。しかし、公明党としての明確な安全保障政策も公表していない。専守防衛、平和外交を主張*11しているので、党としての本音は左派政党と同様なのかもしれないが、他の政策実現を優先し、自民党に追従している。
出典*12
自由民主党
防衛3文書*13といわれる現在の「国家安全保障戦略」・「国家防衛戦略」・「防衛力整備計画」については、2022年に自民党政権によって策定された。選挙公約には詳細な記述はなくても、自民党の安全保障政策は、防衛3文書に書かれていると考えてよいと思う。この防衛3文書について、私は現実的な防衛戦略と評価している。
おわりに
ここまで各党の安全保障政策についてまとめていたが、共産党やれいわのように防衛3文書を完全否定する党はあっても、自民党以外に防衛3文書に賛同することを明確に書いている党はない。防衛3文書に問題があると主張するなら、立憲民主党のようにどの部分に反対かを明確にすればいいのにと思うが、国民民主党も日本維新の会も参政党も明確にしていない。
外交、安全保障政策を重視する私が自由民主党支持なのは、他に選択できそうな安全保障政策を主張している党がないからだ。
日本の安全保障政策議論は、全く深まらない。
中国が荒々しく台頭する中、残り時間は少なくなっていると思うのだが、日本国内の危機感は薄い。
*1:自由貿易をリードする 日本の平和を守る - 立憲民主党
*2:立憲民主党 政策集2025「外交・安全保障」 - 立憲民主党に「現行の安保法制については、立憲主義および憲法の平和主義に基づき、違憲部分を廃止する等、必要な措置を講じ、専守防衛に基づく平和的かつ現実的な外交・安全保障政策を築きます。」と記載されている。
*3:立憲民主党 政策集2025「外交・安全保障」 - 立憲民主党
*4:政策各論 2.自分の国は「自分で守る」 | 国民民主党 第27回参議院議員通常選挙 特設サイト
*5:政策各論 2.自分の国は「自分で守る」 | 国民民主党 第27回参議院議員通常選挙 特設サイト
*6:アメリカが保有する原子力潜水艦には、攻撃型潜水艦、戦略潜水艦、巡航ミサイル潜水艦の3種があるが、どのタイプの潜水艦の共有なのかによって性質は全く違うと思う。
*7:https://o-ishin.jp/policy/pdf/ishin_8saku2025.pdf
*8:https://www.jcp.or.jp/cms/wp-content/uploads/2025/06/202506_sanin_seisaku.pdf
*9:asahi.com(朝日新聞社):鳩山首相「東シナ海を友愛の海に」 日中首脳会談で提言 - 2009政権交代
*11:【主張】公明党の安保政策 専守防衛の中で国民の安全守る | ニュース | 公明党
*13:防衛省・自衛隊:「国家安全保障戦略」・「国家防衛戦略」・「防衛力整備計画」
*14:防衛省・自衛隊:「国家安全保障戦略」・「国家防衛戦略」・「防衛力整備計画」
*15:https://storage2.jimin.jp/pdf/pamphlet/202507_manifest.pdf