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【2021総選挙】国民は迷いつつも明確な意思を示した選挙

はじめに

2021年総選挙が終わった。
立憲民主党共産党などが一本化した候補は激戦を演じたが、立憲民主党共産党議席を減らしてしまった。政権交代は遠かった。
自民党議席を減らしたが激戦区の多くを制し単独で絶対安定多数を確保した。大善戦と言っていい。第二次岸田政権は安定的な運営ができるだろう。
さらに注目すべきは維新の会の躍進だ。自民党にお灸を据えたい。しかし左翼政党はいやだ。そういう人たちが流れた先が維新の会だったのだろう。自民と維新の改憲勢力の合計は300を超えた。改憲発議に必要な3分の2である310を視野に入れている。
国民にとって大いに迷った選挙だった。しかし迷いながらも示した意思は明確と思う。

野党共闘は効果があったと思う。しかしそれだけでは政権交代に繋がらないという限界も示した。野党は安倍政権と菅政権批判で選挙を戦おうとしたが、自民党が岸田氏に総裁を代えたことでそれらの批判は尻すぼみになり風は吹かなかった。立憲民主党市民連合の政策を丸呑みし実態以上に左傾化した政策を掲げたことは失策だったと思う。共産党と組んだことも左傾化の印象をさらに強くした。それに対する拒否感は自民党への拒否感以上に大きかった。立憲民主党55年体制社会党のように万年野党になるのか、それとも政権交代を実現できる政党になるのか、次の総選挙がその分かれ目となる選挙となるだろう。

長期政権党となった自民党への目も冷たかった。経済政策やコロナ対策に評価できる点もあるが、不満は更に大きい。なによりも長期政権の弊害と思われる説明不足の政治が続きすぎた。モリカケなど醜聞も多かった。本当は自民党に猛省させたい。だが代わりの政党がない。左傾化した立憲民主党には政権を任せられない。だが自民党にも勝たせたくない。そんな国民の迷いが渦巻いていたことを強く認識すべきと思う。それが維新の会を躍進させた原動力になっている。
今回の総選挙は立憲民主党の失策によって消去法で自民党が選ばれたと考えるべきだ。自民党とその支持者にはそれを強く自覚し自省してほしい。私も自民党支持者なので自省したいと思う。

この投稿では、与党第一党である自民党野党第一党である立憲民主党の選挙公約を比較しながら、第二次岸田政権でどのような政策を行ってほしいか整理した。また自民党立憲民主党の選挙公約の問題点も指摘したいと思う。
 

目次

 

新型コロナ対策

新型コロナ対策については、奇しくも「命と暮らしを守る」と自民党立憲民主党の選挙公約の文言がほぼ同じだった。公約のトップにしているのも同じだった。
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ところで、私は今回の新型コロナパンデミックを5つのフェーズに分けて考えている。それは状況が変化することで課題とその優先順位が変化し、あるべき政策が変わると考えるからだ。
私が考えている5つのフェーズは次のようになる。主にワクチンの開発、認可、接種状況でフェーズを分けているが、これはワクチンがこのパンデミックのゲームチェンジャーであるという認識があるからだ。

  1. 未知の病気だったフェーズ*1
  2. ワクチンを開発、治験するフェーズ*2
  3. ワクチンが承認され接種するフェーズ*3
  4. ワクチン接種が概ね完了し脱コロナを模索するフェーズ*4
  5. アフターコロナのフェーズ*5

これまでフェーズを先取りした政策は概ね不評で批判を招いたと思う。例えばGoToキャンペーンなどだ。GoToキャンペーンは「4.ワクチン接種が概ね完了し脱コロナを模索するフェーズ」で行うべき政策だったが、これを「2.ワクチンを開発、治験するフェーズ」で行ったことから大きな批判を招いた。オリンピック・パラリンピック開催も同様と思う。*6
今回の総選挙は、「3.ワクチンが承認され接種するフェーズ」から「4.ワクチン接種が概ね完了し脱コロナを模索するフェーズ」への移行期に行われた。
それをふまえると、私は、今回の総選挙での公約は「4.ワクチン接種が概ね完了し脱コロナを模索するフェーズ」を踏まえた政策であってほしいと考えている。

両方のフェーズで共通の課題となるのは次の2つの課題と考えている。

  • 新型コロナ感染症の治療体制を更に強化する
  • 困窮者を援助する

この共通課題については、自民党立憲民主党も大きな立場の差はない。両党の公約の内容はうなずけるものがほとんどだと思う。

「3.ワクチン接種が概ね完了し脱コロナを模索するフェーズ」に重視される課題は次の3つと考える。

  • ワクチンの接種スピードを高める
  • 接触機会の減少策と検査の拡充などを通じ感染者数を抑える
  • 経済を守る

一方、「4.ワクチン接種が概ね完了し脱コロナを模索するフェーズ」では次の2つの課題が重視されると思う。

  • ワクチンの接種率を高める
  • 経済を回復させる

「3.ワクチン接種が概ね完了し脱コロナを模索するフェーズ」から「4.ワクチン接種が概ね完了し脱コロナを模索するフェーズ」にかけて(つまりちょうど今頃)ワクチンの効果等により感染数は抑えられるだろうと予想していた。実際と比較すると私の予想より早く感染者数が減り、予想より感染者数が少なくなったのでびっくりしているが、今年の秋に感染数は減るだろうと予測するのはそんなに難しくはなかったと思う。接種はほとんど終わったのだから、前フェーズで課題だったワクチンの接種スピードは既に課題とはいえないし、感染者数が減ったのだから、前フェーズで課題だった感染者数抑制も大きな課題とならない。つまりフェーズ3特有の課題は、既に過去の課題だということだ。
経済を守るという課題と、経済を回復させるという課題の差はわかりにくいかもしれないが、補助金等によってこれ以上ひどくならないようにするのを「経済を守る」と表現し、経済の自発的な拡大を促すことを「経済を回復させる」と表現した。これもフェーズ3の課題は重要度が下がっていくと思う。

上記の整理を行った上で、上記にリンクがあるので自民党立憲民主党の政策を比べて読んでほしい。一言でいえば、立憲民主党の政策は「3.ワクチン接種が概ね完了し脱コロナを模索するフェーズ」で行うべき政策で、自民党の政策は「4.ワクチン接種が概ね完了し脱コロナを模索するフェーズ」を踏まえた政策になっていると思う。立憲民主党脱コロナを模索することに腰が引けている。
公約から判断すると、経済を回復させるためのアクセルと感染抑制のためのブレーキをどうしていくか与野党で議論が分かれるだろう。経済を回せば感染数は増える。これは仕方がない。だからこそ感染数が増えても重症化させないために、ワクチン接種率の向上策はとても重要だ。
そこで自民党は「電子的ワクチン接種証明等を活用して(ワクチン接種率向上の)インセンティブを付与」といわゆる「ワクチンパスポート」を掲げ、今後頭打ちになるワクチン接種率の向上策を考えている点は評価できる。一方、立憲民主党インセンティブを与えてワクチン接種率を上げるということには消極的な印象を受ける。もしそういうインセンティブ、特に「ワクチンパスポート」に対し反対*7するのなら、ワクチン接種率向上策の対案を出すべきだ。本来は公約として出してほしかったが今からでも遅くない。その対案提示こそ立憲民主党政権運営能力を示すことに繋がる。
「5.アフターコロナのフェーズ」に移行するには、新型コロナ感染症の重症化率や死亡率をインフルエンザと余り変わらない水準に抑える必要がある。そのためには国民のほとんどがワクチンなどで新型コロナウイルスに対する中和抗体を保有する状況にするのが必要と重ねて指摘したい。それでもブレイクスルー感染は起こる*8ので、重症化を抑える治療薬を開発し、重症化を抑える治療法を確立する必要がある。その促進も図ってほしい。
 

経済政策

自民党

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まずは自民党の公約について考えてみたい。まず公約に書かれている「新しい資本主義」とは何か、それがよくわからない。だがとりあえず何をしたいのか公約にあるのでそれをみて判断したい。

  • 財政の単年度主義を是正

これはよいことだと思うので賛同する。

  • 国土強靭化、危機管理投資

これは安倍政権、菅政権でも主張されていたことで、コロナで傷んだ経済を回復させるには積極的な財政は必要なので賛同する。

  • 成長投資

これについても異論はない。問題は本当にできるのか?という実現可能性だろう。安倍政権、菅政権でも成長投資は主張されていたが、今一つ成果がでていない。これは成果が問われる。

  • 中小企業支援

従来から行われている支援の継続が中心。自民党は中小企業も支持基盤なので、その政策は心配していない。

  • 分配政策

自民党が外交右派、経済左派といわれるゆえんの政策だと思う。自民党の分配政策は企業に対する賃上げのインセンティブ付与と個人事業主に対するセーフティネットの構築が主体。この2つは歓迎したい。残念なのは所得税について書かれていないこと。日本の所得税の仕組みは、再配分機能が不十分と思うのでそこに踏み込んでほしい。

  • 全世代の安心感の創出

よくわからない言葉だがここに幼児教育・保育の無償化などがまとめられている。妥当な政策と思うが、これで日本経済が成長するとかあるいは悪化するという政策は見当たらない。粛々と行ってもらえばよいものと思う。

  • 女性の活躍

これは内容が薄い。マイクロ波マンモグラフィー以外は具体性に乏しいと思う。この分野は具体化が必要だ。

総じていえば、自民党の経済政策は、よくも悪くも堅実と思う。悪く言えば新味がない。キャッチフレーズの「新しい資本主義」という言葉はよくわからないが、公約に書かれている内容は理解しやすい。そのほとんどは当面必要な政策であることも認める。ただ将来の夢となるようなものは特に見当たらない。及第点だが高評価でもない。そんな経済政策と思う。

立憲民主党

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次は立憲民主党の経済政策について考えてみたい。どの選挙でもそうだが立憲民主党の経済政策は薄い。自民党の「新しい資本主義」というのも何かよくわからなかったが、立憲民主党の公約はさらに訳判らない用語のオンパレードだ。「地域分散・分権(内需主導)型経済」「ベーシック・サービス」「金融政策による成長条件整備」「公益資本主義」等々。それって何? 少なくともその手の論者しかわからない用語は使うべきではないと思うよ。とはいえ、気を取り直して内容を吟味してみよう。

  • 地域分散・分権(内需主導)型経済

この用語もよくわからないよね。総合すると地方に産業を興すという意味にとれるけど、実現可能性に疑問があるし、仮に実現しても数年以上先と思われるものが多い。

  • ベーシック・サービスの充実

ベーシック・サービスって何? ほんの一握りの学者が唱える造語を公約にいれられても理解できないよ。ここに書かれている内容を読むと福祉の拡充なのでは?と思える。もしその理解でよいのなら、福祉を拡充すればなぜ経済成長に繋がるのか機序がわからない。

所得税減税、消費税減税、低所得者への現金給付、最低賃金上げ。これは左派的な経済政策として自民支持者としては支持しないが理解はできる。問題は財源とマクロ経済への影響だろうね。マクロ経済への影響は短期的な効果は期待できるものの長期的な影響についてはディテール次第で経済成長にも経済悪化にもなると思う。だからこの政策はディテールこそ大事なはずだがそれは書いていない。特に所得税減税だが所得700万円以下の人はそもそもあまり所得税を負担しておらず可処分所得増効果はあまりないだろう。公約を作るにあたってきちんとシミュレーションしているのかは問いたい。

  • 労働法制・取引適正化

大枠は賛同する。もっともこれはマクロ経済に対してはマイナスに働くのではないかと思われるので、これもディテールが大事と思うが書いていない。

  • 金融政策による成長条件整備

この項は何度読んでも理解できないよ。もしこれが金融緩和政策の見直しのことを示すのであれば、コロナで傷んだ経済下でそれを実施すれば確実に日本経済は悪化する。金融緩和政策の見直しはいずれ必要だが時期を間違ってはいけない。それは今ではないのは確実だ。

  • 新たな産業の創出

これはできたらいいなと思う。でも自民党の公約の方が詳細だ。もう少し具体化してほしい。そうでないと評価が難しい。自民党の公約と同じく本当にできるか?という実現可能性が問題になる。

立憲民主党がやりたいのは結局これなのだろうなと思う。所得再分配機能の強化自体は多くの国民が必要性を感じている。だがやり方がまずいと経済を悪化させるのでディテールと時期が大事だ。だがここであげられている政策は問題がありそうなものが多い。特に法人税の超過累進税率はマクロ経済には確実にマイナスに働くと思う。賃金を上げたいと考えるのはよくわかるし同感だが、日本経済を牽引する企業にペナルティを与え活力を奪うよりも、インセンティブを与えて経済の活力と賃上げと両方実現する方がよいと思わないか? 立憲民主党の公約は持つ者、稼ぐ者に対して懲罰的な印象を受ける*9。これらの政策は本当に効果的な政策なのか? その疑問を投げかけたい。

総じていえば、立憲民主党の経済政策は、この選挙で政権を任せる期間(3~4年)で何か経済成長に繋がると思われるものがほとんどない一方*10①実現困難もしくはよくても効果が現れるまで数年以上かかりそうなもの②内容次第ではマクロ経済悪化に繋がると考えられるものが多い。この経済政策で実現するのは、経済格差は縮小するものの国民全体がより貧しくなる将来にみえる。なので評価できない。立憲民主党にはマクロ経済への影響も考慮してより具体化した経済政策立案を望む。そうでなければいつまでも政権を任せられない。

まとめ

経済政策については、自公連立政権以外に選択肢がない状況と思う。第二次岸田政権はまずは公約を粛々と実現してほしい。経済政策は国民の望む政策の一丁目一番地であることを忘れないでほしい。
 

外交・安全保障政策

自民党

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私は国際関係論でのリアリズム(現実主義)*11に基づいて外交、安全保障を考えている。自民党の外交、安全保障政策は国際関係論でのリアリズム(現実主義)に沿ったものとなっており評価している。
中国による台湾への圧力は更に高まると考えるし、米中対立は今後更に激化すると予測している。その結果、台湾とその近海、すなわち台湾海峡バシー海峡宮古海峡などのチョークポイント*12を中心に南シナ海東シナ海の緊張はますます高まっていくだろう。その状況で戦争を抑止するには、日本も一定規模の軍備増強が必要だ。それらを見据えている点で自民党の政策は評価できる。自民党の政策は、国際関係論でのリアリズム(現実主義)の用語を使うと、防御的な同盟を結成し危険な敵を封じ込めるという「外的バランシング」という戦略に沿っていて一貫している。今は「外的バランシング」が日本に最も適した外交戦略だと思う。
なお、国際関係論でのリアリズム(現実主義)のひとつ、オフェンシブ・リアリズム(攻撃的現実主義)については、7年前にその理論をまとめているので参考にしていただきたい。
thesunalsorises.hatenablog.com

立憲民主党

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立憲民主党は「現実的」外交と書いているが、どういう意味で「現実的」と書いているのはとても気になる。少なくとも立憲民主党の政策は、国際関係論でのリアリズム(現実主義)には則していない。リアリズム(現実主義)の対立概念は、アイディアリズム(理想主義)といい、国際社会における道義や倫理、国際法や国際機関を重視した理論だ。立憲民主党外交政策は明らかにアイディアリズム(理想主義)に近い。ただし、立憲民主党外交政策は冷戦時代の社会党の政策(考え)とあまり変わらず中国の台頭と民主主義への圧力、米中対立の激化という近年の国際情勢の変化を踏まえていないように思える。立憲民主党アイディアリズム(理想主義)に基づく外交政策を改めるべきとは思わないがアップデートは必要だ。そのためには、アメリカやヨーロッパのアイディアリズム(理想主義)の政治家や国際関係学者などの考えを取り入れるべきだろう。またアジアの政治家、研究者などの意見も聞くべきだ。今後日本を巡る国際情勢は、台湾問題がより重要になると考えるので、特に台湾の政治家、研究者などの意見は重視すべきだろう。外交や安保政策は、他の国の情勢や考えをきちんと踏まえたものにしなければおよそ「現実的」とはいえないことを強く意識してもらいたい。

台湾問題について

中国は一国二制度というイギリスとの約束を反故にして、香港の民主主義にとどめをさしつつある。新疆ウイグル自治区での人権弾圧も世界各国から強く非難されている。南シナ海での拡張主義的な動きも非難を招いている。台湾に対する軍事圧力はエスカレーションするばかりだ。10月月初、台湾の防空識別圏に過去最大の戦闘機、爆撃機などを進出させたことは耳に新しい。しかし中国は世界各国からいかに非難をされようとその態度を改めようとしない。
www.bbc.com
中国の、全方位恫喝外交ともいえる姿勢は、オフェンシブ・リアリズム(攻撃的現実主義)でいえば、中国がブラックメール(脅迫)戦略をとっている現れとみる。孫子の言を借りれば、「戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり」という考えの現れとみる。
sonshi-heihou.com
戦わずに勝つには、人の心を攻める。台湾問題に関して言えば、中国は台湾人の心を挫くことを目指しているとみる。中国が圧力をかける地域は台湾の軍事力の弱点となる場所になる。東シナ海はまだ日米の軍事力が中国をしのぐ。だから中国は海軍や空軍ではなく日本の海上保安庁にあたる海警部隊を使って圧力をかけている。一方東シナ海よりも中国に軍事バランスが傾いている地域が南シナ海だ。特に台湾が実効支配している東沙諸島近辺は、中国の軍事力が台湾の軍事力を凌駕している。アメリカ海軍、空軍も常時展開できる地域ではない。

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中国が軍事圧力を加えている地域(台湾の国防部の発表から抜粋)

台湾では台湾アイデンティティ*13が定着し、長く中国から軍事圧力を加えられていることから軍事圧力慣れをしている。こういった状況なのでそうたやすく台湾人の心は折れないと思われるが、中国は一貫して台湾を政治的に孤立させ軍事圧力を加え台湾人の心を折れさせようとしている。
中台の軍事バランスがどんどん中国有利に傾いていく中、中国の東沙諸島奪取が現実味を帯びてくる。そしてその次に待つのは中国の台湾本島侵攻かもしれない。
ますます緊迫感が増す国際情勢の中、もし台湾有事の際どの国も台湾を助けないという状況、すなわち台湾の孤立が避けられないものになれば、さすがに台湾人も心が折れることになるだろう。だからアメリカは台湾の防衛にコミットを強めつつある*14。イギリス、カナダ、オランダ、オーストラリアなども東アジア情勢に軍事的に関与する姿勢を示している*15。台湾を孤立させないことは、アジアの安全保障のために重要なことは自明と思う。
このような情勢の中、日本は台湾有事の際、専守防衛に徹し台湾への関与をしないのか? ある意味台湾を見捨てる選択をとるのか? それが問われている。
自民党の政策は明らかで日本は台湾有事の際アメリカ軍と行動を共にすることになるだろう。そのために必要だったので解釈改憲をして集団的自衛権行使を行えるようにした。
立憲民主党はどうなのか? 公約をみる限り集団的自衛権行使に反対しているようなので、台湾有事の際にはその事態に関与せずある意味台湾を見捨てる選択をとるのだろうか? 立憲民主党はこういった今後起こりえる事態に対する想定、議論が足りないのではないか? そう思えた。それとも立憲民主党は台湾を孤立させ中国が戦わずして勝つことに貢献したいのだろうか?
 

最後に

新型コロナ対策、経済政策、外交・安全保障政策以外の政策については、長くなるので今回は詳述するのは控えたいと思う。
総じていえば自民党の政策は現状追認的であり、立憲民主党の政策は(よく言えば)理想主義的だった。
自民党の政策は現状追認的であるため高く評価もできないが現実的とは思う。
立憲民主党のその他の政策については、エネルギー政策を批判的にみる。選択的夫婦別姓ジェンダー問題などの政策について、総論としては私は批判も賛同もしない。国民の多数が望むならそれでよいと思う。
しかし、私は新型コロナ対策、経済政策、外交・安全保障政策を重視しているのであって、その他の政策の是非で投票先を変えたりしない。そういう人は多かったのではないか。
立憲民主党がもし選択的夫婦別姓ジェンダー問題などの政策を実現したいと思っているのなら、なおさら次の選挙に向けて経済政策と外交・安全保障政策を見直すべきと思う。
その2つこそ、国の根幹にかかわる政策であると強く認識すべきだ。
自民党はこの実質的な勝利におごらず謙虚な心で政権運営にあたるべきだ。コロナからの回復は絶対に必要だし、台湾問題など国際情勢は今後困難を極めてくる。立憲民主党外交政策が変わらない限り、次の総選挙で政権交代すれば日本の将来にとって痛恨の極みになるだろう。心して政権運営してほしい。
 


備考

*1:フェーズ1は、既に人から人への感染力を持った新型コロナウイルスが存在し感染が生じていたが、そのウイルスを発見していなかった段階と定義したい。私はおおむね2019年秋~2019年12月がフェーズ1だと考えている

*2:フェーズ2は、新型コロナウイルスを発見したものの投与できるワクチンが存在しなかった段階と定義したい。私はこのフェーズは、中国がWHO中国事務所に最初に感染報告を行った2019年12月31日から、イギリスが世界に先駆けてワクチンの緊急使用許可を行った2020年12月2日までと考えている。

*3:フェーズ3は、ワクチンの投与が開始されワクチン投与がおおむね完了するまでと定義したい。ワクチン投与状況は国によって大きく異なるし、ワクチンを忌避する人などもいてワクチン接種は100%にはならないので、このフェーズの終了時期は明確にはならないと思うものの、日本の場合おおむね2021年11月中旬にこのフェーズを終えると思う。

*4:フェーズ4は、接種を希望する人に対するワクチン投与がおおむね終わり、パンデミックから脱する方法を模索する段階と位置付けている。このフェーズの終わりは人の行動を制約するものが概ねなくなり、人々が新しい行動様式を受け入れ、新しい行動様式にもとづいて生活をはじめた時と考えている。

*5:フェーズ5は、人々が新しい行動様式を受け入れ、その行動様式に基づいて生活をしている状況と捉えている。この段階になれば新型コロナ感染症パンデミックは終わったといえると思う。

*6:オリンピック・パラリンピックは「4.ワクチン接種が概ね完了し脱コロナを模索するフェーズ」または「5.アフターコロナのフェーズ」で行うべき政策だったが「3.ワクチンが承認され接種するフェーズ」で行われたことから批判を招いた。

*7:河野ワクチン担当相に申し入れした時に反対を表明している。ワクチンPT第2次提言を河野ワクチン担当大臣に申し入れ - 立憲民主党

*8:中和抗体があれば感染しにくくなるが感染を数割減らす程度の効果のようだ。一旦感染すると他者へ感染させることになる。参考:ワクチン2回接種しても簡単に家族にうつす=新型ウイルスの英研究 - BBCニュース

*9:アメリカや中国のように富を寡占するような富豪は日本にはあまりいない。世界的な大企業も少なくなってしまった。

*10:立憲民主党の公約はこの経済政策以外に「財務金融・税制」「経済産業」という項もあるのだがそれを読んでも同じ評価。例えば「経済産業」のページにある「中小企業の社会保険料事業主負担分の軽減」という政策は国民に社会保障への不安を増させ規模によっては社会保障制度の破綻を招きかねず問題が大きいと思う。その他、賛同できない政策が多い。

*11:リアリズム(現実主義)についてはいろんな意味で使われることがあるので、あえて国際関係論でのリアリズム(現実主義)と書いた。特に立憲民主党は「現実的外交」と書いているが明らかに国際関係論のリアリズムとは無縁の政策のためその区別は必要と思う。

*12:チョークポイント - Wikipedia

*13:台湾アイデンティティと「一つの中国」− 李登輝政権の対中政策の展開

*14:米国、台湾の自衛支援にコミット=駐台代表 | ロイター

*15:【最新国防ファイル】英空母「クイーン・エリザベス」に存在感 “自由で開かれたインド太平洋”のためアジア太平洋地域に大遠征 (1/2ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト