日はまた昇る

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トランプ政権についての9つの予測

はじめに

先日、「トランプ政権発足。それは新たな世界秩序の始まり」という投稿をして、9つの予測を書いた。
予測を書いた理由は、自分なりの予測を明らかにすることで、予測が違えばすぐ自分の考えを修正できるようにと考えたからなのだけど、投稿が長文で予測部分を探すのが一苦労なので、予測部分だけを抜粋して再投稿することにした。
以下にまとめた予測について、なぜそう考えたのか詳細はこの投稿にないので、必要であれば下の投稿を読んで頂きたい。
thesunalsorises.hatenablog.com



予測1:トランプ政権の二面性

この予測は、トランプ政権の閣僚・高官の人事から予測したものである。

予測その①
トランプ政権は「オルタナ右翼」的側面と「リアリズム派」的側面と二面性を持つ。
個別の政策では、この二つが混在する形で表れてくる。
私は、トランプ政権では、「移民、国境管理、入国審査」「国内治安対策」「メディア対策」などでは「オルタナ右翼」的政策が中心となり、「外交」「安全保障政策」「通商政策」などでは「リアリズム派」的政策が主となると予測する。
総じていえば、国内向けには「オルタナ右翼的側面」が、対外向けには「リアリズム派的側面」が前面に出てくると予測する。




予測2:貿易交渉の主な対象国は4カ国

次に、就任演説、基本方針とピーター・ナヴァロ国家通商会議委員長の書いた『米中もし戦わば』という本との共通点を探し、貿易政策を考えた。

予測その②
トランプ政権が行う二国間貿易協定交渉では、雇用を取り戻すことと並んで貿易赤字の削減が目的になる。
貿易交渉の主たる対象国は、中国、ドイツ、日本、メキシコだろう。特に問題視しているのは、中国であると考えられる。一方、最も交渉を行いにくい相手と考えているのも中国と思う。
まずは、交渉相手国に交渉上の弱みがある日本とメキシコを優先して交渉する。その際、為替と関税をちらつかせ、交渉を優位に進めようとするだろう。
中国とは、十分に準備を整えてから、貿易戦争辞さずという強い態度で交渉に臨むと予測する。

米中もし戦わば

米中もし戦わば



予測3:軍事上の主たる仮想敵国は中国

貿易政策と同じく、就任演説、基本方針と『米中もし戦わば』から、軍事政策を予測した。

予測その③
トランプ政権の軍事政策では、最大の仮想敵国は、ロシアではなく中国になると予測する。
中国に対しては、軍事的により強い対応をとるようになる。
その主たる舞台は、南シナ海東シナ海、それに宇宙とサイバー空間になるだろう。
なお、軍事政策は技術的な部分が大きく影響するため、その政策実行はマティス国防長官が代表する専門家チームに任されると予測する。



予測4:国内治安政策はオルタナ右翼的

ホワイトハウスホームページに掲載された6つの政策ポイントのうち、国内の治安政策は他の5つと比べて異質であると考えられる。
その異質さと予測1から、国内治安隊政策を予測した。

予測その④
トランプ政権の「治安政策」は「オルタナ右翼」の主張が前面に表れたものになる。
その結果、トランプ政権の「治安政策」は、アメリカのリベラル層を中心に強烈な反発を招く。その一方で、共和党支持者を中心に支持、評価も広がる。
アメリカは更に分断し、深刻な亀裂を抱えることになる。
いずれそのこと自体が、アメリカの治安を脅かすことになると予測する。トランプ政権であり続ける限り、騒動は絶えない。
そして、それは世界を巻き込んでいく。




予測5:イスラム過激派のテロ対策は思惑が混在する

イスラム過激派のテロ根絶」対策については、7カ国国民の入国禁止と、シリア・イエメンの安全地帯という2つの動きから、次の予測を考えた。

予測その⑤
イスラム過激派のテロ根絶政策は、「オルタナ右翼」的政策と、「リアリズム派」的政策が、混在一体となった政策が打ち出されていく。
その一見わけがわからない組み合わせの裏側では、アメリカ国民の比較多数の支持を狙い、演出がなされていく。
それによって稼いだ時間を使い、同盟国だけでなくロシアとの協同も行いつつ、軍事作戦を遂行する。トランプ政権は、イスラム過激派に対する軍事力行使を躊躇しないと予測する。
ISなどのテロ組織は、ダメージを被る。
しかし、テロリズムはより細胞化し、ホームグロウンテロの脅威*1は、世界中に広がると思う。



予測6:環境よりシェールオイル増産

アメリカの経常収支赤字額と石油の輸入額等、各種統計を見た上で、ホワイトハウスホームページに掲載された6つの政策ポイントのうち「エネルギー政策」と見比べて、次の予測を考えた。

予測その⑥
トランプ政権は、シェールガス・オイルの開発の障害となっている規制を撤廃していく。オバマ政権時代の環境保護政策は、全否定される。
それは、環境保護を訴える人の反発を招き、トランプ政権との衝突は激化していくと予測する。



予測7:原油価格は弱含みに推移

世界第2位の石油輸入国であるアメリカがシェールオイル増産により石油の輸入量を減らす。そのことから次の予測を導いた。

予測その⑦
原油価格は、生産国の生産調整で一旦上昇すると思われるが、アメリカのシェールガス・オイルの増産が進むにつれ、弱含みとなると予測する。
それは、原油生産国の経済にとりダメージとなる。
原油価格が弱含みで、原油がだぶつき気味になる状況は、ロシアの外交にも影響を及ぼす。ロシアの石油輸出先がヨーロッパ主体である(現在約6割)状況は変化しないだろうが、ロシアは中国と日本への石油輸出を増やすよう動くだろう。
一方、OEPCの影響力は減少すると思う。



予測8:対日政策は貿易政策で曇り、安保政策で晴天

トランプ大統領の過去の発言やツィートと、貿易政策や軍事政策での予測を踏まえて、対日政策の予測をした。

予測その⑧
日本は二国間貿易協定の交渉を受けざるをえない。アメリカからの要求は強く大きく交渉は難航すると予測する。交渉では日本もアメリカに大きく要求した方がよいし、交渉が進むにつれそうなっていくだろう。
二国間貿易交渉が難航することでトランプ大統領の攻撃(口撃?)は何度もあるだろうが、日米関係全体を悪化させることはないと思う。
なぜなら安全保障と日米同盟に対する認識は一致しており、安全保障上の日米関係は良好な状態が続くと考えられるからだ。
但し、今後アメリカと中国との関係悪化が予想される。その結果、自衛隊もアメリカ軍も大きな緊張を強いられる状況になり、それが続くと予測する。



予測9:世界全体はリーダー国なき世界になる

予測その⑨
トランプ大統領は、厄災の詰まったパンドラの箱を開けた。
そして、「リーダー国なき世界」という混沌が飛び出た。
それは、たとえトランプ大統領が早期に罷免され退場したとしても、もう箱の中に戻らない。
世界は、混沌という新たな秩序(?)の時代になった。
せめて、パンドラの箱の中に、「希望」が残っていますように。

(最後は予測じゃなくて願望を書いてしまいましたね。申し訳ありません。)



トランプ政権発足。それは新たな世界秩序の始まり

トランプ大統領誕生

2017年1月20日。アメリカのトランプ大統領が就任した。
トランプ氏の支持者には申し訳ないが、世界中のかなり多数の人が、就任後の世界に不安を感じていると思う。
私もその1人だ。

どんな就任演説を行うのか、アメリカの大統領の就任演説をはじめてリアルタイムで見た。今回のトランプ大統領の就任演説は、夜遅いのに関わらずどんなことを言うのか見なければ眠れないと強く感じた。だからテレビの中継をずっと見ていた。高揚感は全くなく不安だけがあった。オバマ大統領の就任演説は、後日文章でしか読まなかったが、その時とは大違いだ。

そして就任から10日余りが過ぎ、さまざまな情報が断片的に報道されてきた。正直に言って、いろんな情報が錯そうし混沌としていてよくわからない。
だがトランプ氏が本気なことは伝わってきた。トランプ氏は世界を変えるかもしれない。
それは、一民間人の私にも影響があるかもしれない。だからこそ、現在わかっている情報から自分なりに予測をしてみようと思った。トランプ氏がもたらす変化によって私自身が被る被害を、少しでも少なくしたいという思いからだ。

就任演説の内容

www.huffingtonpost.jp
世界中が注目したトランプ大統領の1月20日の就任演説を要約すると次の通りになる。まずは評価を加えず、内容を把握しようと思う。

アメリカ第一

  • 貿易、税、移民、外交問題に関するすべての決断は、アメリカの労働者とアメリカの家族を利するために下す。
  • (産業の)保護主義(注:保護貿易の意ではない)が偉大な繁栄と強さにつながる。
  • アメリカは、雇用を取り戻し、国境を取り戻し、富を取り戻し、夢を取り戻す。

国を再建する

  • 新しい道、高速道路、橋、空港、トンネル、そして鉄道を、国の至る所につくる。
  • アメリカのものを買い、アメリカ人を雇用する。

同盟と安全保障

  • 古い同盟関係を強化し、新たな同盟を作る。
  • 過激なイスラムのテロを地球から完全に根絶する。
  • 私たちの政治の根本にあるのは、アメリカに対する完全な忠誠心だ。
  • 私たちは、軍隊、法の執行機関によって守られている。

アメリカを再び偉大に

  • 私たちは大きく考え、大きな夢を見るべきだ。
  • 全てのアメリカ人に、二度と無視されることはないと伝えたい。団結を呼びかけたい。



ホワイトハウスHPに掲載された基本方針

トランプ政権発足直後、ホワイトハウスのホームページに次の6つの基本方針が掲載された。これはトランプ政権の政権移行チームが準備したものと思われるので、トランプ政権の今後の方針を考えるうえで重要だと思う。これもまた、まずは評価を加えず、要約して内容を把握しようと思う。

エネルギー政策のポイント

外国の石油への依存から脱却する。

  • シェールガス、オイルの採掘の増産。そしてその収入を、道路、学校、橋、公共インフラの再構築に使う。
  • きれいな石炭技術の開発。石炭産業の復活。
  • OPECや敵対国の石油への依存から脱却する。及び反テロ戦略の一環として湾岸諸国と協力する。
  • きれいな空気と水の保護。自然の生息地を保護し資源を保護する。

外交政策のポイント

力による平和を指向する。

  • ISISや他の過激なイスラムのテロ群を倒すことが最優先事項。必要な場合には共同軍事行動や軍事提携を行う。
  • 国際的な協力を行い、テロリストへの資金を断ち切る。
  • 情報を共有して、ネットでのプロパガンダと人員募集を中断させるサイバー攻撃を行う。
  • アメリカ軍を再建し、軍の優位性を確保し続ける。(別項で更に説明している)
  • 全てのアメリカ人のための貿易協定(別項で同様の内容を再度説明している)

雇用政策と成長政策のポイント

今後10年間で2500万人の新規雇用を創出し、年間経済成長率を4%にする。

  • 労働者と企業を支援するために成長促進税制改革を行う。
  • 各税率区分でアメリカ国民の税率を下げ、税法を簡素化し、世界最高水準の法人税率を下げる。
  • 雇用に関する新しい連邦規制の一時停止を提案し、その間に廃止すべき雇用規制を特定する。
  • 貿易相手国に、違法もしくは不公平な取引慣行をさせない。

国防政策のポイント

軍を再建し、軍の優位性を確保し続ける。軍人と退役軍人に対するケアを拡充する。

  • 他国の軍事力がアメリカを上回ることを許さない。最高水準の軍備を維持する。
  • 軍予算の強制削減処置を停止し、新たな予算処置をとる。軍指揮官に必要な軍備を計画させる。
  • イランや北朝鮮などの国からのミサイル攻撃を防ぐ最新のミサイル防衛システムを開発する。
  • 国家安全保障の秘密とシステムを保護する防衛的で攻撃的なサイバー能力を保持、拡充する。
  • 軍人とその家族に、従軍中だけでなく退役時にも、最良の医療、教育、支援を行う。
  • 退役軍人が必要なケアを必要な時にいつでも提供する。

安政策のポイント

法執行力(警察力)を強化し、犯罪や暴力をなくす。

  • 殺人などの凶悪犯罪を減少させる。
  • 憲法修正第2条、つまり銃保持の権利の規定を維持する。
  • 不法入国を阻止し犯罪者と違法薬物の流入を止めるため、国境の壁を建設する。
  • 国境法を制定することに加え、不法移民を保護するサンクチュアリシティを終結させ、不法移民の流入を止める。
  • アメリカにいる凶悪犯罪を犯した不法外国人を追放する。

貿易政策のポイント

アメリカ労働者とビジネスを優先した貿易交渉を行う。これにより雇用をアメリカに戻し、賃金を増やし、アメリカの製造業を支援する。

  • 太平洋横断パートナーシップ(TPP)から撤退する。
  • 新たに貿易協定を締結する際にはアメリカの労働者の利益になることを確かめる。
  • 北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を必ず行う。もし該当国が交渉を拒むなら脱退する。
  • 貿易協定に違反する国を徹底的に取り締まる。



トランプ政権の閣僚・高官からみるトランプ政権の性質

次にトランプ政権の閣僚・高官の中から、数人注目している人をピックアップして、トランプ政権の性質を考えてみたい。
www3.nhk.or.jp
www.johoseiri.net

スティーブン・バノン首席戦略官兼上級顧問

「オルタナ右翼」の定義はとてもあいまいだ。強いて言えば、既存の保守主義にあきたらない人としか言いようがない。少なくとも「オルタナ右翼」に思想的統一性はない。
それをふまえてもなお、トランプ政権の「オルタナ右翼」的側面を指摘せざるをえないと思う。
トランプ政権での「オルタナ右翼」の代表格は、バノン首席戦略官兼上級顧問と思う。バノン氏は最近こんな発言をして注目を浴びた。
digital.asahi.com魚拓

「オルタナ右翼」は「新保守主義ネオコン)」を嫌っている。
「オルタナ右翼」は「旧保守主義(ペイリオコン)」とは比較的相性がよいが、宗教的厳格さでは「旧保守主義(ペイリオコン)」と意見を異にする。
「オルタナ右翼」は「新自由主義リバタリアン)」と共通する要素も多いが、自由貿易や移民政策では「新自由主義リバタリアン)」と意見を異にする。
「オルタナ右翼」の排他的な言動や露骨な嫌悪感情に目が行きがちだが、政策を予測するにはそれだけでは不十分だ。
「オルタナ右翼」に思想的統一性はないが、「反グローバリズム」「反移民」「反自由貿易」「反エリート」「反リベラル」という特徴があり、その考えが、トランプ政権に影響を及ぼすのは間違いないだろう。
www.newsweekjapan.jp

ピーター・ナヴァロ国家通商会議委員長とジェームズ・マティス国防長官

バノン氏のような「オルタナ右翼」と思われる閣僚・高官がいることと同時に注目すべきことは、トランプ政権には、ナヴァロ国家通商会議委員長、マティス国防長官のように「国際関係論でいう現実主義」(以降「リアリズム派」と統一して記述する)と思われる閣僚も相当数存在しているということだ。
ナヴァロ氏は対中強硬派といわれるし、マティス氏は狂犬マティスとよく報道される。彼らの強面(こわもて)な部分に注目が行きがちだが、その根本となる考え方は、バノン氏のような人とは異なる。この違いを認識すべきだ。
www.bbc.com
jp.wsj.com
なお、「国際関係論でいう現実主義」、すなわち「リアリズム派」についての説明は、次の文章がわかりやすいように思う。

第8章 国際関係理論とは何か?(PDF)
国際関係論 <第2版> 弘文堂 (立ち読みとして公開している)

トランプ政権の性質

トランプ氏自身はともかく、トランプ政権を「オルタナ右翼」政権とだけレッテル張りするのは、偏った見方だと思う。トランプ政権は「リアリズム派」が支えている。彼らが実務で主導権を握れば、トランプ政権は「リアリズム派」政権の性質が強くなり、「オルタナ右翼」と思われる閣僚が主導すれば、トランプ政権は「オルタナ右翼」政権の性質が強くなる。
各閣僚・高官の考え方、政治的立ち位置を把握した上で、その閣僚が責任を持つ分野に注目すべきと思う。その観点から導いた、私のトランプ政権の予測その①は次の通り。

予測その①
トランプ政権は「オルタナ右翼」的側面と「リアリズム派」的側面と二面性を持つ。
個別の政策では、この二つが混在する形で表れてくる。
私は、トランプ政権では、「移民、国境管理、入国審査」「国内治安対策」「メディア対策」などでは「オルタナ右翼」的政策が中心となり、「外交」「安全保障政策」「通商政策」などでは「リアリズム派」的政策が主となると予測する。
総じていえば、国内向けには「オルタナ右翼的側面」が、対外向けには「リアリズム派的側面」が前面に出てくると予測する。



『米中もし戦わば 戦争の地政学』の内容(まとめ)

米中もし戦わば

米中もし戦わば

トランプ政権の政策を考える上で、この本は必読だと思う。トランプ政権は、経済重視の政策をとってくると思う。私はその際、トランプ大統領によって強い権限を持って新設された「国家通商会議」が重要な役割を果たすと考えている。その「国家通商会議」の委員長が自ら書いた本であることが、この本を重要だと思う理由だ。

この本は、原題を“Crouching Tiger: What China's Militarism Means for the World”(飛びかかろうとする虎 世界における中国の軍国主義の意味)という。
中国がとびかかってくると危機感を露わにしている分、原題の方が邦題より、この本の内容をよく表しているようにみえる。

邦題を読んだだけでは、アメリカの方が中国と戦争をしたがっている好戦的な本と誤解する人がいるかもしれない。それは誤りだ。
この本の主題は、米中戦争の回避にある。

ここではまず『米中もし戦わば 戦争の地政学』を簡単にまとめておきたい。
そして項を改めて、この本の内容と、前述のトランプ大統領の就任演説、およびホワイトハウスHPに掲載された方針とを比較しながら、トランプ政権の「リアリズム派」的側面を分析したいと思う。

構成

この本は、第一部~第六部の六部構成になっている。

  • 第一部:中国が軍国主義をとる理由を3つ挙げている。
  • 第二部:中国の持つ軍事力を、全部で14個のトピックで分析している。
  • 第三部:アメリカと中国が戦争になるとすれば、どのようなことで生じるのか、全部で10個のシチュエーションで分析している。
  • 第四部:アメリカと中国が戦争になった場合、どのような戦争となるのか、全部で5つのトピックで分析している。
  • 第五部:アメリカと中国の戦争を交渉で回避する可能性について、全部で6つのトピックで分析している。
  • 第六部:アメリカと中国の戦争を回避し、平和を維持する方法について、全部で6つのトピックで分析している。

第一部「中国は何を狙っているのか?」

中国が軍事力を増強している狙いは3つあると考えられる。2つは平和的な目的だが、1つはその意図に疑念を持たざるをえない。
中国の狙いは、次の3つと考えられる。

  • 侵略を受け続けた屈辱の100年間を繰り返さず、2度と侵略されないため。
  • 現在の経済成長を支える海上貿易のシーレーンを守るため。
  • 現状の国際関係における中国の立場に不満があり、経済成長と軍事力をアジアにおける影響力拡大に利用するため。

第二部「どれだけの軍事力を持っているのか?」

中国は、近代化の進む通常兵器(機雷、ミサイル、空母、戦闘機)だけでなく、アジアのパワーバランスをラジカルに変える恐れのある、破壊力の極めて大きい軍事技術の数々を保有している。
それは、まず対艦弾道ミサイル、次に多種類の対人工衛星兵器、そして戦闘機を墜落させたり航空管制や銀行ネットワークや地下鉄システムなど敵国内の民間施設を麻痺させる能力のあるコンピュータ・マルウェアなどである。
現状変更意図を持つ中国の軍事力が増大し続けるにつれて、紛争が起きる可能性も増大し続ける。中国は間違いなく、アジアの平和と安定にとって脅威になる。

第三部「引き金となるのはどこか?」

米中戦争の引き金となる可能性がある事象は、具体的には、台湾併合、北朝鮮尖閣諸島西沙諸島、九段線、中国のEEZの領海化、水不足のインド、中国のナショナリズム、中国の地方官僚の暴走、中露軍事同盟成立などである。
中国とその周辺国の現状には、不確実なことが増大しており、これもまた将来米中間で戦争が起こる可能性を年々増大させている原因でもある。

第四部「戦場では何が起きるのか?」

もし米中間で戦争が起こった場合、質で勝るアメリカ軍に対して、中国軍は量で対抗する。質についても、中国軍の技術力が進歩し、その差は年々縮まっている。
今後アメリカ軍のとるべき戦略は、「エアシーバトル戦略」(中国本土への攻撃も視野に入れて、前線、特に海空で戦う)なのか、「オフショア・コントロール戦略」(チョークポイントで海上封鎖し中国の通商路を絶つ)なのか、あるいはその「ハイブリッドな戦略」なのか。

比較検討をしてみたが「エアシーバトル戦略」も「オフショア・コントロール戦略」も「ハイブリッドな戦略」も問題を抱えており、米中間に戦争が起これば短期間で勝利できる可能性はほとんどないと考えられる。米中間の戦争がもし生じれば、戦争は長期化する。更に核戦争にまでエスカレートする可能性は十分にある。被るダメージを考えれば戦争は論外だ。だからこそ戦争にならない方法を見つけ出す必要がある。

第五部「交渉の余地はあるのか?」

クリントン政権は、中国を欧米流の平和的民主国家に変えるためのツールとして中国との経済的関わりを促進し、中国のWTO入りの道を開いた。
WTO加盟後、産業界は一斉に生産拠点を中国へ移しはじめ、アメリカでは産業の空洞化が進み、貿易赤字が膨れ上がった。
中国に相応の市場開放をさせることなく、アメリカの市場を開放したことは、結果として中国共産党の独裁体制の強化と、中国軍の軍事力増強を強力に推進することになった。それにより戦争の危険は増大し続けている。

軍事的な抑止、つまり核兵器による通常戦争抑止についても、中国には効きにくい。例えばオバマ大統領のアメリカのように、アメリカが合理的で穏当な判断を行うと中国が確信すればするほど、例え中国が通常戦争を起こしても、それによってアメリカが核兵器で報復しないと考えるようになる。
さらに中国は、軍の意図や軍備などを不透明にし、危機時のコミュニケーション手段をアメリカに与えず、中国は何をしでかすかわからないとアメリカに思わせることで、アメリカの報復意図を挫こうとしている(マッドマン・セオリー)。

更に中国は、自国の利益のために、公然と条約を破ることも辞さない。
中国との交渉は非常に困難だ。
ならば中国との平和を維持するには、力を利用した平和以外の選択肢はないと思われる。

第六部「力による平和への道」

中国は、単に軍事力だけではなく、「総合国力」の視点から世界を見ている。
「総合国力」とは、軍事力という「ハードパワー」だけでなく、経済力、労働力の熟練度、政治体制の安定度、天然資源、教育制度、技術革新、その国の同盟の性質や強度といった「ソフトパワー」も重視している。
「総合国力」というコンセプトは、「戦わずして勝つ」という孫子の格言に根ざしている。「戦わずして勝つ」といっても、全く戦わないということではない。政治戦、経済戦、科学技術戦、外交戦など、ありとあらえる手段を使い中国の勝利を手に入れるという考え方だ。

アメリカは、「総合国力」を保たねば平和を維持できない。

まず「経済を健全化しなければ、アメリカは中国に対抗できない」ということだ。
そのために必要な第一の戦略は、対中貿易の不均衡の是正である。アメリカが、中国製品を買えば買うほど、中国の軍事力増強に手を貸すことになる。インフレ率の上昇を招いても、貧困層に負担が偏るという左派からの批判をうけても、自由貿易を信奉してきた右派からの批判をうけても、対中貿易赤字を放置してはならない。
第二の戦略は、税制改革である。アメリカの世界一高い法人税は、製造業と雇用が国外へ流出する原因となっている。政治的論争を引き起こすだろうが、法人税率の引き下げは重要だ。
第三の戦略は、現在中国に略奪されるがままになっている、軍用及び民間の知的財産権の保護である。企業秘密や軍事機密の窃盗を中国に一切許してはならない。
最後に、教育制度の再建も必要だ。奨学金という多額の負債を生徒自身に負わせることなく将来の職業人を育てる必要がある。

次に軍事力の強化が必要だ。中国がアジアで軍事的優位に立てば、それはさらなる侵略行為に繋がる。それを防ぐには、中国の対抗戦略のターゲットにされているアメリカの戦略の脆弱性をなくすことだ。
第一に、脆弱性を持つアメリカ軍基地人工衛星資産を強化すること。中国の人工衛星ネットワーク破壊のための兵器の開発だ。これは比較的安価にできると考える。
第二に、制空権の確保を続けるということだ。これは戦闘機の価格の高騰の問題があり、多額の予算が必要と思われる。
第三に、潜水艦戦と機雷戦が抑止力の鍵を握るということだ。これは中国の対処戦略をそのまま逆に中国にしかけるという効果がある。

アメリカは同盟国を守るという鉄則を貫く必要がある。
もしアメリカが尖閣諸島を守らなければ、アメリカの深刻なダメージになる。アジアの平和と繁栄を持続させるためには、台頭する中国の力を相殺してバランスを取るための同盟が必要だ。
さらにアメリカは中国の脅威を直視する必要がある。中国は、多額の費用を支払い多数のロビイストを使うことで、アメリカの政治プロセスに直接介入している。
また中国に対するマスコミの論調を和らげるために、中国は巨額の広告費を使っている。中国をネガティブに書かなくなったという自主規制の動きは、マスコミだけでなく、ハリウッド映画にも、研究・教育機関にも広がっている。

(まとめおわり)

補足

先にも書いたが、この本は「国際関係論でいう現実主義」に基づき書かれている。ここでいう「現実主義」とは一般的な意味の「現実主義」ではないので注意してほしい。実際この本にも訳者注としてこんな記述がある。

国際関係論で言うリアリズムは、日常用語としての現実主義とはかなり異なっている。(p312)



就任演説、基本方針と『米中もし戦わば』の共通点

経済政策

トランプ政権は、2500万人の雇用と4%の経済成長を掲げた。
『米中もし戦わば』では、『「総合国力」を保たねば平和を維持できない』と指摘し、そのために「経済を健全化しなければ、アメリカは中国に対抗できない」と指摘している。
経済成長を約束するのはどの政権も同じであるが、『インフレ率の上昇』や『貧困層に負担が偏る』ことや『自由貿易』を制限してでも(中国との)貿易赤字を削減する意欲を見せているのは、トランプ政権の特長である。
貿易赤字については、この本では中国に対する貿易赤字を問題にしているが、実際上は中国だけの貿易赤字を問題視することはありえないので、貿易赤字の大きい*1、中国、メキシコ、日本と名指ししているのだろうと思う。なおドイツに対するアメリカの貿易赤字は、日本より大きいので、いずれ標的になると思う。
(追記:この記述は2015年の数値に基づき書いた。この投稿を書いた後、2月8日に2016年のデータが発表された。2016年のアメリカの貿易赤字額は日本の方がドイツより大きかった。)
その他、法人税の削減など、細かな点で一致点は多い。

予測その②
トランプ政権が行う二国間貿易協定交渉では、雇用を取り戻すことと並んで貿易赤字の削減が目的になる。
貿易交渉の主たる対象国は、中国、ドイツ、日本、メキシコだろう。特に問題視しているのは、中国であると考えられる。一方、最も交渉を行いにくい相手と考えているのも中国と思う。
まずは、交渉相手国に交渉上の弱みがある日本とメキシコを優先して交渉する。その際、為替と関税をちらつかせ、交渉を優位に進めようとするだろう。
中国とは、十分に準備を整えてから、貿易戦争辞さずという強い態度で交渉に臨むと予測する。

軍事政策

「他国の軍事力がアメリカを上回ることを許さない」という強い決意は共通である。
アメリカ軍の脆弱性の防衛強化と、それを実施するために必要な予算処置が政策の柱になると思う。
『米中もし戦わば』では、制空権の確保と潜水艦戦・機雷戦の重視があげられているが、それを踏まえたと思われるトランプ大統領の動きもある。
www.nikkei.com
diamond.jp

予測その③
トランプ政権の軍事政策では、最大の仮想敵国は、ロシアではなく中国になると予測する。
中国に対しては、軍事的により強い対応をとるようになる。
その主たる舞台は、南シナ海東シナ海、それに宇宙とサイバー空間になるだろう。
なお、軍事政策は技術的な部分が大きく影響するため、その政策実行はマティス国防長官が代表する専門家チームに任されると予測する。

なお、軍事政策のうち、イスラム過激派に対するものは、別項で考えることにする。


異質な政策=治安政

トランプ政権のとてもエキセントリックな雰囲気から受ける印象とは異なり、ホワイトハウスHPに掲載された基本方針のうち、雇用政策、成長政策、貿易政策、外交政策、国防政策、そしてエネルギー政策の一部については、(実現困難度は別として)目的は十分理解可能と思う。「アメリカ第一」のフレーズが独り歩きしているきらいはあるが、アメリカがアメリカの国益を追求することは責められないし、当然と思う。

しかし、ホワイトハウスHPに掲載された基本方針の中で、他とは異質な政策がある。
「治安政策」である。

ここでもう一度「治安政策」のポイントを記載しようと思う。以下の通り。

  • 殺人などの凶悪犯罪を減少させる。
  • 憲法修正第2条、つまり銃保持の権利の規定を維持する。
  • 不法入国を阻止し犯罪者と違法薬物の流入を止めるため、国境の壁を建設する。
  • 国境法を制定することに加え、不法移民を保護するサンクチュアリシティを終結させ、不法移民の流入を止める。
  • アメリカにいる凶悪犯罪を犯した不法外国人を追放する。

上記から、注目すべきキーワードをひろうと次のようになる。
「銃保持の権利維持」
「国境の壁」
サンクチュアリシティの終結」
「不法外国人の追放」

これらについては、少し考えただけでも、様々な問題や疑問が出てくる。
例えば、
アメリカに広く蔓延する銃が、逆に凶悪犯罪やテロの温床になっているのではないか?
国境の壁を建設することで、本当に不法入国を阻止できるのか?
サンクチュアリシティは、本当に不法移民の天国なのか? それを終焉させれば、本当に不法移民はなくなるのか?
不法移民を追放することが、本当にアメリカの国益になるのか? 憲法違反ではないのか? 等々だ。

この投稿は、これらの是非を考えるのが趣旨ではないので指摘に留めるが、これらの問題、疑問に対して、アメリカ国内のコンセンサスはないと認識している。これらはアメリカ国民のそれぞれの政治的立ち位置により、完全に見解がわかれるものだ。
つまり「治安政策」は「党派性」が強くでているものになっていると言える。
「治安政策」こそ、トランプ政権の「オルタナ右翼」的側面が強く出ているものと思う。それはアメリカの分裂を更に広げることになるだろう。

予測その④
トランプ政権の「治安政策」は「オルタナ右翼」の主張が前面に表れたものになる。
その結果、トランプ政権の「治安政策」は、アメリカのリベラル層を中心に強烈な反発を招く。その一方で、共和党支持者を中心に支持、評価も広がる。
アメリカは更に分断し、深刻な亀裂を抱えることになる。
いずれそのこと自体が、アメリカの治安を脅かすことになると予測する。トランプ政権であり続ける限り、騒動は絶えない。
そして、それは世界を巻き込んでいく。

正直に言うと、この予測は外れてほしい。アメリカが深刻な亀裂を抱える前に、和解し、団結と協力体制が築かれることを望んでいる。ただとても残念なことは、もしトランプ政権がこの政策を取りやめれば、リベラル層は快哉を叫ぶだろうが、そのことがまたアメリカの断裂を深めるだろうと思えることだ。続けても断裂を深め、止めても断裂を深める。この問題の場合、続けるでもなく、止めるでもない答えというのは、そもそも存在するのだろうか?


イスラム過激派のテロ根絶政策とイスラムフォビア

イスラム過激派のテロ根絶」こんな強い言葉は、日本の政治家には言えないなと半ば感心しつつ、例えアメリカでもそれは相当困難だろうと思う。
なぜならば、テロ根絶の決定打は未だ見つかっておらず、テロ防止の手段も限られたものしかないからだ。
外交政策のポイントにあげられたテロ対策は次の通り。
「共同軍事行動や軍事提携」
「テロリストへの資金を断つ」
「プロパガンダと人員募集を中断させるサイバー攻撃

これらの対策は、妥当なもので効果も期待できるが、残念ながら即効性のある決定的な対策ではない。そういった対策の効果をトランプ大統領は気長に待つのだろうか?
答えは「NO」だろう。

トランプ大統領がテロ対策に対して性急に成果を求めたとき、トランプ政権の持つ二面性から、2つの異なった動きがでるのではないかと考える。
それを垣間見せるできごとが既にあった。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170130/k10010857481000.htmlwww3.nhk.or.jp
トランプ政権は、明らかにイランに対して対立の姿勢を見せていて、その姿勢からこれまでオバマ政権の対応に不満を持っていたサウジアラビアから譲歩を引き出しやすくなっていると思う。
サウジアラビアと、同じスンニ派の国であるアラブ首長国連邦を説得して、シリアとイエメンで安全地帯を作るという構想について支持をえた。またトルコはもともとこの安全地帯構想を支持している。
イエメンの紛争はもう少し長引きそうだが、シリアでの安全地帯の設定構想は、シリアの紛争の幕引きを見据えた動きと考えるべきだろう。
シリアでは、ロシアの支援するアサド政権側が優勢となっている。その現状をサウジアラビアに認めさせ、シリアのスンニ派の生き残る場所を確保しつつ、アサドを支援しているロシアと取引を行う前段階の動きと考える。
(もともとそんな理念はトランプ氏にはなかったと思うが)オバマ政権時代の『「アラブの春」による民主化の戦い』という理念を捨て、シリアの紛争を「世界vsテロ組織」という一軸の対立構造に整理し、ISとアルカイダ系組織を叩くことだけに集中する。この一連の流れはとても「リアリズム派」的だなと思う。

一方で、悪評高い「イスラム7か国の入国禁止」を命じる大統領令も同時に出した。
この入国禁止令にテロを防止する効果はないと思う。それすらわからないほどトランプ大統領は愚かなのだろうか? それすら指摘できないほどトランプ政権の閣僚、高官たちは愚かなのだろうか?
これもまた、答えは「NO」と考えるべきと思う。
では何を狙ったのか?

一つめの仮説は、なぜ入国禁止対象とした国に、イランが入っており、サウジアラビアが入っていないのか?ということを考えることによって導いた。入国禁止の大統領令によってイランとの対決を明確にすることで、オバマ政権時代にイランと接近したことで傷ついたサウジアラビアとの関係を修復し、同盟強化を呼びかけているように思える。
そして、二つめの仮説だが、トランプ政権の支持層の持つイスラムフォビアをなだめるために出したというものだ。この仮説は「そんなもの誰でもわかってるよ」と言われると思うが、私は心の片隅で「アメリカ国民の多数は、こんな乱暴な政策に反対するだろう」という予断を持っていたようで、この仮説を否定していた、いや否定したかったのだと思う。
ところが、ロイターの世論調査を見て、私は正直びっくりしてしまった。
jp.reuters.com
トランプ大統領は、正しくアメリカ国民の現状をみている。
この入国禁止令は、「オルタナ右翼」的政策といえる。だが「オルタナ右翼」な人がアメリカ国民の半数もいるとは思わない。この政策は、多様性のあるアメリカ国民の比較多数に届いている。
そしてこの政策で時間をかせぎ、ロシアとの交渉などの準備を行い、軍事作戦を行うのだろうと思う。

予測その⑤
イスラム過激派のテロ根絶政策は、「オルタナ右翼」的政策と、「リアリズム派」的政策が、混在一体となった政策が打ち出されていく。
その一見わけがわからない組み合わせの裏側では、アメリカ国民の比較多数の支持を狙い、演出がなされていく。
それによって稼いだ時間を使い、同盟国だけでなくロシアとの協同も行いつつ、軍事作戦を遂行する。トランプ政権は、イスラム過激派に対する軍事力行使を躊躇しないと予測する。
ISなどのテロ組織は、ダメージを被る。
しかし、テロリズムはより細胞化し、ホームグロウンテロの脅威*2は、世界中に広がると思う。



シェールオイル開発と環境対策

アメリカの経常収支の赤字額は、4840億ドル(2015年)*3
石油輸入額は、1325億ドル(2015年)*4
トランプ政権の貿易赤字を削減するという政策目標を掲げているが、原油を増産し輸入額を削減することができれば、この目標を達成できると考えるのが自然だ。

安全保障上も、中東の石油に依存しなくなることは、有利に働く。
トランプ政権のエネルギー政策は、経済政策とも軍事政策とも整合性がとれている。

逆に、大きな矛盾を抱えるのが、環境保護だろう。
トランプ政権は、オバマ政権時代の環境保護政策を全否定し、シェールガス・オイルの開発に障害となっている規制をとりはらっていくと思う。

予測その⑥
トランプ政権は、シェールガス・オイルの開発の障害となっている規制を撤廃していく。オバマ政権時代の環境保護政策は、全否定される。
それは、環境保護を訴える人の反発を招き、トランプ政権との衝突は激化していくと予測する。

予測その⑦
原油価格は、生産国の生産調整で一旦上昇すると思われるが、アメリカのシェールガス・オイルの増産が進むにつれ、弱含みとなると予測する。
それは、原油生産国の経済にとりダメージとなる。
原油価格が弱含みで、原油がだぶつき気味になる状況は、ロシアの外交にも影響を及ぼす。ロシアの石油輸出先がヨーロッパ主体である(現在約6割)状況は変化しないだろうが、ロシアは中国と日本への石油輸出を増やすよう動くだろう。
一方、OEPCの影響力は減少すると思う。



対日政策

就任前の発言も含めて、トランプ大統領が日本に要求した主な項目は次の通り。
自動車産業非関税障壁をなくせ」
「為替を操作し円安誘導するのをやめろ」
日米安保条約へのタダ乗りはやめろ」

さて、これらの発言だが、就任後10日余りが過ぎ、トランプ大統領の暴言とも思われる一連の発言について、単なるはったりではなく、本気でやろうとしていることだと考えを変えた人は多いと思う。

アメリカのTPP離脱は決定的で、トランプ大統領が翻意するとも思えないので、トランプ大統領が求める二国間貿易協定の交渉に、日本は応じざるをえないと思う。
www.yomiuri.co.jp
アメリカに誤認識があるものについては、それを正していく必要はあるだろうが、そんなに誤認識はないと思う。トランプ大統領自身は、首脳会談で二国間貿易協定の交渉を要求するだけに留め、交渉そのものは交渉担当者が任命されると思うからだ。

トランプ政権が考える二国間貿易協定の目的は、貿易赤字削減とアメリカの雇用確保である点を忘れないようにしたい。
貿易赤字削減について、アメリカ側が日本に自動車産業非関税障壁撤廃を求めるなら、逆に日本はアメリカに日本がほしいものを輸出するよう要求すべきではないだろうか。
例えば、今後増産するはずのシェールオイル。日本も原油輸入先の多角化は国益に沿う。
あるいは、iPhoneなど高付加価値の電子通信機器工場をアメリカに取り戻すよう要求し、それを輸入することでもいい。
トランプ大統領は、交渉相手に大きく要求し、自分の望む取引をしようとするだろう。日本もアメリカに大きく要求しなければ、ずるずると譲歩を迫られることになる。

「日米成長雇用イニシアチブ」はよいアイディアと思うが、トランプ政権はそれだけでは満足せず、貿易赤字削減策を日本に飲ませようとするのは必定と思う。
jp.reuters.com

為替については、トランプ政権が導入しようとしている「国境税調整」の導入等で大きく動くものであり、「国境税調整」がどんな内容なのかわからない状況では予測のしようがない。もっとも「国境税調整」が導入されれば、自動車産業などは否応なくアメリカでの現地生産を進めざるをえなくなるので、交渉もそこそこに導入するのかもしれない。申し訳ないが、未決定事項が多いため、この件は保留にしたい。

一方、安保タダ乗り論についてだが、この件はそんなに心配していない。
トランプ政権には「ラスボス」中国との交渉が待ち構えている。
その交渉において、アジアにおけるアメリカ軍のプレゼンスの確保はアメリカにとり重要なものであり、日本が日米同盟でアメリカに対して貢献しているものは、地政学的な意味においても、駐留経費負担の意味においても、とても大きいものだと思われる。
逆に、軍国主義に突っ走る中国に対抗するため、日本も自衛隊装備を充実させ対応力を強化することが必要であり、それはアメリカの国益にも一致するので、歓迎されると思う。
トランプ政権になっても、安全保障分野では、日米関係は良好な状態を保てるだろう。

予測その⑧
日本は二国間貿易協定の交渉を受けざるをえない。アメリカからの要求は強く大きく交渉は難航すると予測する。交渉では日本もアメリカに大きく要求した方がよいし、交渉が進むにつれそうなっていくだろう。
二国間貿易交渉が難航することでトランプ大統領の攻撃(口撃?)は何度もあるだろうが、日米関係全体を悪化させることはないと思う。
なぜなら安全保障と日米同盟に対する認識は一致しており、安全保障上の日米関係は良好な状態が続くと考えられるからだ。
但し、今後アメリカと中国との関係悪化が予想される。その結果、自衛隊もアメリカ軍も大きな緊張を強いられる状況になり、それが続くと予測する。




対中政策

対中政策は、前述した『米中もし戦えば 戦争の地政学』に書いていることがどれだけ実行されるか見守ることにして、予測しないでおこうと思う。
再度指摘しておきたいのは、『米中もし戦えば 戦争の地政学』は、「国家通商会議」の委員長が自ら書いた本ということだ。中国との通商交渉で、ナヴァロ委員長自身が陣頭指揮をとるなら、それは相当強硬な要求になるだろうと思う。



対ロシア政策

ロシアとの関係改善が一気に進むとは思わない。一気に進めると、トランプ大統領のスキャンダルが持ち出されるかもしれないという点も抑制的な動きに繋がる。
しかし、オバマ政権と違って、いずれロシアとは融和的になるだろう。
トランプ政権は、中国と強く対決しようとしていると思う。そんなときに、中露両国と対立するのは得策でないし、中露を接近させてしまったら、中国との交渉に差し支えがでる。



トランプノミクスの行方

トランプ政権の経済政策によって、アメリカ経済が成長するのかしないのか、今の時点では予測はできない。
二国間貿易交渉の行方、国境税調整の中身などに大きく影響するからだ。

二国間貿易交渉がアメリカのよいように締結できれば、アメリカの経済は成長するだろう。

国境税調整は、一般的にはドル高が進みインフレになると言われる。輸入品の価格が上昇するため、アメリカ国内におけるアメリカ製品の価格競争力が上がり、製造業の雇用が増えるかもしれない。だがインフレになれば消費が落ちるという悪影響がある。その一方で、税収は上がると考えられ、それをインフラ再構築(公共事業)に使うことで経済成長に繋がる可能性がある。国境調整税は、アメリカの経済成長にプラスの面とマイナスの面があり、影響の予測が難しい。少なくとも、具体的な内容が決まるまでは、効果を予測することができない。

法人税減税と所得税減税は、経済成長にはプラスになる。それからシェールオイルの増産は、少なくとも短期的には経済成長にプラスだろう(長期的には環境保護の対策費が増大し経済成長にマイナスの影響がでる可能性はある)。

未決定事項が多すぎて、現時点で予測するのは不可能だ。申し訳ない。



トランプ大統領は、パンドラの箱を開けた

トランプ大統領は、厄災の詰まったパンドラの箱を開けた。パンドラの箱の中身はトランプ大統領が詰め込んだわけでない点は、大事なことなので強調しておきたい。
厄災を詰め込んだのは、冷戦終結後の歴代の大統領と政権だ。

クリントン大統領は、パンドラの箱に「軍国主義化し脅威となる中国」を詰めた。
ブッシュJr大統領は、パンドラの箱に「イスラムの人々の怒りと悲しみ」を詰めた。
オバマ大統領は、パンドラの箱に「大量難民という問題」を詰めた。
3人の大統領が、パンドラの箱に「富の偏重と格差拡大」を詰めた。
3人の大統領が、パンドラの箱に「アメリカからの製造業の流出」を詰めた。
3人の大統領が、パンドラの箱に「忘れられたアメリカ人の怒り」を詰めた。
そして、パンドラの箱の中には「リーダー国なき世界」という混沌が育った。

予測その⑨
トランプ大統領は、厄災の詰まったパンドラの箱を開けた。
そして、「リーダー国なき世界」という混沌が飛び出た。
それは、たとえトランプ大統領が早期に罷免され退場したとしても、もう箱の中に戻らない。
世界は、混沌という新たな秩序(?)の時代になった。
せめて、パンドラの箱の中に、「希望」が残っていますように。

(最後は予測じゃなくて願望を書いてしまいましたね。申し訳ありません。)



追記:トランプ大統領との交渉について

トランプ大統領は、敵認定すると容赦ないと思われる。それは同盟国であってもだ。
同盟国といっても、その国の影響力とアメリカに対する貢献の差で、本音レベルでは同じ扱いであるはずもない。それでもこれまでの大統領であれば、儀礼的に対応していたであろうが、トランプ大統領は「儀礼などくそくらえ」であろうと思う。交渉の中で、トランプ大統領の考えと真っ向から異なるものをぶつけられると、即座に敵認定される。
「正しいものは正しい」そういう外交を選ぶのもよいが、アメリカとの良好な関係がその国の国益に繋がるのであれば、交渉方法はおのずと限られる。
たぶん、その観点では、ドイツのメルケル首相はトランプ大統領と徹底的に合わない。
オーストラリアのターンブル首相の考え方、主張は全く正当なものと思うけれど、国益を考えたときにどう対処すべきであったかは、意見がわかれるところだろう。
トランプ大統領は、扱いづらい。
だが、1国を背負う以上、うまく付き合うしか方法はないと思う。あれでも「自由陣営」の盟主なのだから。
www3.nhk.or.jp


追記その2:対EU(特に対ドイツ)政策について

www.newsweekjapan.jp
本文にも書いたが、アメリカは対ドイツとの貿易で、対日本以上の貿易赤字を出している。
トランプ政権の政策から考えると、貿易赤字削減を求めて、日本やメキシコに対するのと同じか、それ以上の強い圧力を加えてくるだろう。
ただドイツが有利な点は、日本とメキシコとは違い、通貨がユーロという多くの加盟国のある統一通貨であることだ。ユーロがドイツを守っている。ナヴァロ氏の「ユーロは過小評価されている」という批判は、ドイツに対しては正しく、イタリアやスペイン、ギリシャなどの南欧諸国に対しては正しくないと思う。私は、ユーロはドイツには通貨安で、南欧諸国には通貨高だと思う。
南欧諸国は、本来通貨安にして経済的な苦境を脱出したいと考えるはずだが、統一通貨であるゆえに思い通りにいかない。その一方でドイツは輸出で優位にたつ。
「ドイツはもっと支援すべきだ」との批判は南欧諸国からもでている。
一方、ドイツ国民は、なぜ自分たちの税金で南欧諸国を支援し続けねばならないのかと考えている。
アメリカのトランプ政権は、ドイツは不公正な貿易を行っていると見ている。
この状態が長続きするようには見えない。
ナヴァロ氏はその綻びをついたのだろう。
トランプ政権が、ユーロの崩壊を目的にしているとは思わない。だが、目的にしている「ドイツの対米貿易黒字の削減」を目指す対応が、ユーロの崩壊を招きかねないのは事実と思う。
上記のニューズウィークの記事は、目的と結果を逆転して書いているように思う。



アパホテルの行為に対する私のコメの真意

id:hima-ariさんへ

id:houjiT さんへ。(はてなハイク)

上記のハイクでIDコールをいただき、ハイクの記事だけでなくブクマタワーも含めて全部読ませていただきました。私の考えをご理解くださったこと、本当にありがとうございました。

私は、南京事件を否定していません。
したがって、アパホテルの代表の見解に、賛同していません。
その観点から、昨日別のコメで下のように書いた通り、私はアパホテルを避けています。

和泉徹彦 Tetsuhiko IZUMIさんのツイート: "TLにアパホテル終わったとか、微博で5500万再生とか流れてたので何かと思って調べたら、客室内の冊子に南京大虐殺否定の記事があったそうな。それ

こういう会社が社会的制裁を受けることについて僕は容認するよ。批判は当然と思う。それにしても客商売らしからぬバカな会社だなと思う。ちなみに僕はアパホテルを一度も利用したことはない。今後利用する気もない。

2017/01/17 16:02
b.hatena.ne.jp


にも関わらず、id:houjiT氏のように、偏見に満ちた見方をする人が一定数出てくるのですよね。
それに関しては、私の考え方を否定したいという気持ちが特に強い人に、特徴的なものと思っています。そういう人を私は「はてサ」と呼んでいます。
特に「はてブ」では、私はギリギリのラインを狙ってコメを残しているため、また字数に限りがありどうしても端折らざるをえないこともあり、「はてサ」たちは私が意図していない行間を読み「曲解」するのだと思います。
疑義があれば、真意をコールなりで聞けばよいのにと思いますが、きちんと適切な内容と表現で真意を聞いてくる人はとても少ないですね。今のところ数人です。そういう聞かれ方をすれば、私は都度都度丁寧に考えを説明しているのですけれどね。ちょうどこの投稿のように。

でも「はてサ」たちは、いきなりポリコレ棒をふるってくるのですよ。「お前は間違っている」(注:今回の場合は「南京事件否定論を僕が肯定している」って批判の文脈で指摘されたこと。誤解があるみたいなので1/20に追記)ってね。罵倒されたり蔑視的な表現を使われることもよくあります。本当に彼らは単純だなと思います。
もっとも私は以前から「はてサ」たちの癇に障るようなコメをわざと残して、そういう反応を楽しんでいることもあり、私自身へ直接ふるわれるポリコレ棒は、いわば私の望むところ(自業自得?)と思っています。
そういう底意地の悪さ(その点は自覚しています)も、「はてサ」たちの癇に障るのでしょう。

今回、hima-ariさんが期せずして、そんな不毛なやり取りに巻き込まれてしまった点について、申し訳なく思います。
ここからは、不毛なやり取りを私に引き取らせていただければと思います。


(hima-ariさんにあてた文章はここまでです)

昨日の私のコメの真意

経緯

以下は、昨日の私のコメに対するhima-ari氏とhoujiT氏のやりとりを引き取るための説明です。

次のコメが問題になった昨日の私のコメです。

客室設置の書籍について | 【公式】アパグループ

政治主張は言論の自由で守られる。それは正しい。一方批判するのも言論の自由で守られる。更に宿泊しない自由の行使は誰もができる。当然中国人も。この件はアパホテルのホスピタリティの欠如の証左と僕は考えている

2017/01/17 18:17
b.hatena.ne.jp
これに対しid:kyo_ju氏がつぎのように私にIDコールをしてきました。
客室設置の書籍について | 【公式】アパグループ

突っ張るなら「このたび中国語版も設置することとしました」ぐらい書いてみろ。/id:the_sun_also_rises この人達にホスピタリティがあったらどんな対応になると?

2017/01/17 18:53
b.hatena.ne.jp
それに対しhima-ari氏が、メタブクマで次のようにコメしました。
はてなブックマーク - 客室設置の書籍について | 【公式】アパグループ

黒い日の丸の人はどう考えてもアパホテルに対して良い感情を持ってないと思えるコメント出してるのに、トンチンカンなIDコールに星いっぱいなの見るに党派性メガネって怖いですね感しゅごい。

2017/01/17 22:08
b.hatena.ne.jp
このコメにhoujiT氏がhima-ari氏に次のようにIDコールしたことからブクマタワーが積み重なったようです。後述の説明を読んでいただければわかると思いますが、houjiT氏の解釈は曲解です。
はてなブックマーク - 客室設置の書籍について | 【公式】アパグループ

id:hima-ari 批判ってか具体的にどんな対応を想像しているか聞いてるだけじゃ?「政治にも学術的にも逆行した作文をおもてなしの心で披露すれば問題ない、ってどんな披露の仕方よ?」っつう。

2017/01/17 23:39
b.hatena.ne.jp
その後いくつかやりとりがあったようで、最終hima-ari氏のハイクの次の文に繋がります。

アパホテル側の政治的思想に賛意を示している」
という前提があるから
「意見者は提供方法の問題を指摘している」
という解釈上の縛りが発生するのではありませんか?

アパホテル側の政治的思想に賛意を示していない」
という可能性を鑑みれば
「そもそもそんなモノを置いておくのがオカシイ」
という解釈に行き着くのが自然だと思うのです
id:houjiT さんへ。(はてなハイク)

hima-ari氏の指摘は過不足なく私の真意を説明しているのですが、やり取りを引き取るにあたって、もう少しくわしく説明することにします。

コメの真意

コメの100字制限をはずし、私の真意を説明すると次のようになります。

私はアパホテルの代表の見解に賛同していない。
しかし、賛同しない見解だからといって、民主主義国である日本では言論の自由があり、アパホテルの代表には、代表の政治主張を表明する権利がある。本の出版について言論の自由だと主張することは正しい主張だ。
一方で、その見解について批判するのも、当然言論の自由で守られるわけで、今回の炎上は自業自得と思う。
代表の見解に対する賛否を譲ったとしても、経営者であれば経営している会社の利益を上げることが責務であり、中国人のみならず他の顧客も宿泊をボイコットするような動きを招いた「客室に本を置く」という経営判断を行ったのは、経営者として失格だという批判は免れない。
アパホテルは、ホテル業でもっとも大切なもの、ホスピタリティの欠如したホテルだと思う。

もっとも真意をきちんと説明しても、「はてサ」たちの中には、「私がウソをついている」あるいは「後出しじゃんけんだ」と信じようとしない頑固者もいそうなのが残念です。

歴史問題に対する私のブコメのスタンス

私は、歴史問題についてのブコメは、次のスタンスで臨んでいます。

  1. 歴史問題を政治的に利用することについて、そもそもそれ自体を批判的に見る。
  2. そしてその考えや行動が、日本の国益に反すると考えられる時、ブコメで批判コメを残す。

16000以上のコメを書いているので、上記の原則に反するコメもいくつかあるかもですが、歴史問題に対するほとんどのコメはこの原則を守っていると思っています。

(国際関係論でいう)現実主義

今回のアパホテルの(代表の)行動は、上記の1、2両方に当てはまるので、批判コメを残しました。
上記の原則に、「歴史問題の解釈の是非」は入っていないのが、私の考え方の特徴だと思っています。
善悪を物差しとせず、国益を物差しにする考え方は、(国際関係論でいう)現実主義の特徴なのですが、どうもそれを「はてサ」たちは受け入れたくないようです。
そして「はてサ」たちが最も大事だと思う「歴史問題の解釈の是非」を私が基準にしないのは、「はてサ」たちが批判している解釈を私が内心では肯定していると決めつけるようです。今回のhoujiT氏の私のコメに対する解釈もそれに該当しそうです。

はてなブックマーク - はてなブックマーク - はてなブックマーク - 客室設置の書籍について | 【公式】アパグループ

id:hima-ari いや、そういう前提ではないですね。ただ否定論をデマ等でなく言論としたのを見て、最後の一文は「客に出すやり方を間違えたから炎上した」と個人的には解釈しました。賛同してないけど認めてはいる的な

2017/01/18 00:48
b.hatena.ne.jp

もっとも上記の原則に従うと、必然的に、日本に対する批判コメより、中国と韓国に対する批判コメが圧倒的に多くなるため、上記のような偏見を持つのかもしれません。

民族主義に対する私のブコメのスタンス

今回のアパホテルの(代表の)行動は、日本の行き過ぎた民族主義が引き起こした事例とみることもできるかと思います。
そこで最後に「民族主義」について、私の見解を書いておきます。
私は、「民族主義」だけでなく、「全体主義」「社会国家主義」「共産主義」「国際主義」「現実主義」「理想主義」など全ての主義について、正負両面があると考えています。
民族主義」の最もよい面は、「民族主義」がその人のアイデンティティの確立によい影響をもたらすという点だと考えています。
民族主義」の最も悪い面は、「民族主義」が行き過ぎると他の民族へ攻撃性が高まることと思います。
正直に言って、私は現在の日本と周辺国の「民族主義」については、負の要素が大きいと考えるので、あまり肯定的にみていません。

私は「民族主義」だけでなく、「どんな主義でも、それに傾注するのが行き過ぎると、その主義に引きずられて事実の認知が歪む」という負の影響があると考えていますが、韓国の「民族主義」は既に国全体としてその段階にきているのではないかとみているため、韓国には辛辣なコメが多くなっています。それも「はてサ」たちには気に入らないのかなと思います。

付け加えると「民族主義」についてのブコメは、次のスタンスで臨んでいます。

  1. 行き過ぎた民族主義について、そもそもそれ自体を批判的に見る。
  2. そしてその行き過ぎた民族主義が起こした事柄が、日本の国益に反すると考えられる時、ブコメで批判コメを残す。

上記の原則に照らしても、アパホテルの(代表の)行動に対しては、批判コメを残すということになります。

なお、日本の「民族主義」に対する批判コメが私のブクマで少ないのは、内容はともかくとして、意外と日本の国益に反するものが多くないとみているからです。


昨日のコメに対する説明は、以上の通りです。


追記

kyo_ju氏のIDコールには次のように返答しておきました。

突っ張るなら「このたび中国語版も設置することとしました」ぐらい書いてみろ。/id:the_sun_also_rises この人達にホスピタリティがあったらどんな対応になると? - kyo_ju のコメント / はてなブ

id:kyo_ju ホスピタリティがあれば「部屋に本を置く」などというバカなことは行わないよ。君のコメを起点になぜかブクマタワーが積みあがったようなのでブログに説明記事を書いたから読んで→https://goo.gl/0vhQlo

2017/01/18 15:54
b.hatena.ne.jp

追記その2

やり取りを引き取った後の顛末

kyo_ju氏と、ハイクでやり取りしました。
以下の通りです。

kyo_ju氏

ブコメを書いた人が誰だろうと、
「(オーナーが書いた歴史修正主義本をホテルの客室に備え付ける行為は)ホスピタリティの欠如という点で問題だ」と言われたら、
その人はこの案件に対して「メッセージの内容に問題はないが、TPOや伝え方に問題がある」という立場、
つまり「オーナーの主張内容には賛成か、少なくとも強く反対はしないが、不快に思う客もいることを考えたらホテルの部屋に置くのは好ましくないんじゃないの?」という立場なんだなぁ…と普通に理解しますが。

「××という行為は○○という点で問題だと思う」という言明は、暗に「他の点では特に問題ではない」という意味を含むものです(そうでなければ、「○○という点でも問題だ」と書くでしょう)。

私はこの案件について、他の国家や民族を攻撃するような内容でさらには虚偽の内容を書いた本を客室に置いて誇示する行為自体が客や当該の国家、民族に対する威圧や侮辱になることが問題なのだと認識していました。おそらくこの問題でアパホテルを批判している人の多くがそうなのではないかと思います。
対して、id:the_sun_also_rises氏の「ホスピタリティの問題だ」という意見は、そうではなく客への配慮不足の問題にすぎないのだ、と言っているように聞こえます。だから真意を問うたわけです。

それにしても、もし「ホスピタリティの問題」としてアパホテルを批判したとして、「むしろ本を置くことがわが社なりのホスピタリティの発露なのだ」とか「少数の客を不快にしないことより『歴史の真実』を伝える方が優先する」と言われたら、「ホスピタリティの問題だ」という批判は無効になるでしょう。
「ホスピタリティの問題。ちゃんと客に配慮せよ」という批判の仕方は、アパホテルの経営者のような思想的にかたくなであろう相手に言うことを聞かせる方便としてすら機能しないように思えますが、どうなのでしょうかね。
http://h.hatena.ne.jp/kyo_ju/299869465187079104

僕は「ホスタビリティが欠落した会社だ」という批判は、ホテル業の会社に対する「最大の批判」と思っているんだ。
だからあのコメだったのだけどね。
代表がどのような思想を持つかは自由だと僕は考えている。
ただし経営者としての責務からは逃れられない。だからこそ、経営者としての問題点を指摘したのがあのコメの真意。
僕のブログ投稿を読んでも理解できなかったのかい?
このコメントを読むと、そう感じるよ。
ブログ投稿に対するブコメは重箱の隅をつつくようなものだったしさ(笑)
http://b.hatena.ne.jp/entry/316544581/comment/kyo_ju
なお君の最初の質問コールそのものは、僕は気にしていないよ。
http://h.hatena.ne.jp/the_sun_also_rises/316617226769275358

kyo_ju氏

ホテル経営者として「ホスピタリティが欠けているかどうか」は確かに重要でしょうが、ホスピタリティは本質的に主観的なものなので、アパホテルのオーナーが「これぞホスピタリティの発露だ」と心底信じていればそこで試合終了であること、上のハイクでも述べたとおりです。
一方、ホテル経営者として「他国や他国民を威圧したり侮辱したりしないかどうか」も負けず劣らず重要でしょう。で、威圧や侮辱かどうかは客観的に判断可能なわけです。

あなたのブログ記事に対してのブコメで記事の一部にしか言及していないのは、単純に私が興味を持ったのがその箇所だけであることと、返答が必要な箇所はないと考えたことからです。
私はこの問題でホスピタリティを云々するのは本質を外していないか?と考えたから質問したわけですが、ブログ記事を読んで「やはり本質を外しているのだな」と思いましたし(どう本質を外しているのかはこのハイクと上のハイクで述べたとおり)、私はそもそもあなたが「アパホテル側の政治的思想に賛意を示している」という前提に立って質問を投げかけてなどいないので、はてサガーと言っている部分については誤爆ないしもともと対象外ですし。

取り急ぎ返信まで。
http://h.hatena.ne.jp/kyo_ju/279638451995090551

代表がいくらホスタビリティについて強弁したとしても、会社の業績は数字として出る。
それこそ「客観的」と思わないのかい?
そもそもあのブクマは、会社のリリースに対するものなのを忘れてないか?
だからこそ、その会社の経営者としての問題点指摘を行ったのだが、それを「本質的でない」と考えるのは、相当ゆがんだ認識と思うよ。
「威圧」や「侮蔑」が客観的という考えも同意できない。
それこそ正に主観的なものだ。
http://h.hatena.ne.jp/the_sun_also_rises/81796727899638787

kyo_ju氏

ホテルの来客数を決定する大きな要因として需給がある以上、ホスピタリティで会社の業績は決まりません。
また、会社の業績がどんなに順調でも、反社会的な行為(たとえば他国や他民族への威圧や侮辱)を行なっている会社がそのことについて社会的制裁を受けるべきである点には変わりありません。

客観的な犯罪の事実認定が可能であることを前提とした近代刑法典において侮辱罪や脅迫罪という犯罪類型が存在していることからもわかるように、他人を威圧する行為や侮辱する行為は客観的に認定することが可能です。

以上です。
http://h.hatena.ne.jp/kyo_ju/299851874076326425

この件は、侮辱罪や脅迫罪という犯罪に該当しないよ。日本の刑法をきちんと調べたのかい?
だけど君は犯罪類型の存在をもって客観的といっている。論理破たんをおこしているよ。
犯罪に当たらなくても、侮辱や脅迫になることはあるのはわかっている。
ただ、それはとても主観的なものだ。

それからアパホテルの件だが、中国の旅行社が取引を拒んでいる。中国政府も批判している。このような状況下では、業績の悪化は必至だろうよ。
そういった客観的な評価を君はできているのかい?
これこそ「ホスピタリティの欠如による業績悪化」といえるだろうに。
http://h.hatena.ne.jp/the_sun_also_rises/81814320355374628

kyo_ju氏

侮辱や脅迫という行為が客観的に認定可能なものだから、それが犯罪類型の一つとして規定されているわけです。
私の文面はこのことを指摘したものであり、「すべての侮辱や脅迫が犯罪に該当する」などと言っていないのは一読すれば明白ですよね。

今回の案件に対する反応としての中国政府の批判や中国の旅行会社の取引中止が、あなたには「ホスピタリティの欠如による業績悪化」に見えるのですか。
私には、「他国や他民族への威圧や侮辱という反社会的行為に対する社会的制裁の結果としての業績悪化」に見えますが。見解の相違ですね。
http://h.hatena.ne.jp/kyo_ju/83467986020285669

この件は、犯罪じゃないのだよ?
日本の刑法によって客観的に認定すれば、侮辱でも脅迫でもないという結論を得る。
これを侮辱や脅迫と君は主張しているのだろうが、それを認定する規定はないよ。
規定がないから、僕はこれを主観的と言っているのだが、君が客観的とする根拠はなにか?

業績悪化するということは認めるのだね。
2つ前の君のコメ「ホテルの来客数を決定する大きな要因として需給がある以上、ホスピタリティで会社の業績は決まりません。」というのは、撤回するということでよいのかな?
それであれば、君と僕とは、見解の相違ということでよいよ。
見解の相違はあるが、僕も君も問題のない認識をしているということだね。
http://h.hatena.ne.jp/the_sun_also_rises/315649657549040242

kyo_ju氏

行為の性質上、侮辱や脅迫は客観的に認識できる(主観的な受け取り方の問題ではなく、客観的な行為の態様によって認識される)。その中で刑法典上の侮辱罪や脅迫罪に該当するものは訴追され、罰せられることがある。という関係です。

・上記引用箇所の趣旨は、「需給という別の大きな要因がある以上、ホスピタリティだけで会社の業績が決定されることはない」ということです。そのことを指摘することで、ホスピタリティが欠如すれば会社の業績悪化に直結するのだというあなたの主張は前提から誤っているのだと述べたものです。
また、いうまでもなく、社会的制裁を受けてもそれだけで必ず会社の業績悪化を招来するとも限りません。しかし、私の立場は業績悪化につながろうがつながるまいが関係なく、他国や他民族を侮辱したり威圧したりするような会社は社会的制裁を受けるべきであろうというものなので、業績悪化がどの程度の蓋然性で起きるかという問題は議論に影響しません。
http://h.hatena.ne.jp/kyo_ju/299869466969817360

一番重要な問いかけに答えてくれていないのが残念だ。
前回問いかけたのがわかりにくかったのかもと思うので、もう一度わかりやすく問いかけたい。それに答えてほしい。

今後、アパホテルの業績悪化が予想される(この点に認識相違はない)
君は、「他国や他民族への威圧や侮辱という反社会的行為に対する社会的制裁の結果としての業績悪化」とみている。
僕は、「ホスピタリティの欠如による業績悪化」とみている。
君も僕も、自説の方がよい解釈だと思っているが、それは見解の相違と言える。
少なくとも、双方の意見を「完全に否定」するほどの重要な問題はその解釈の中にない。

上記の整理に、君は同意するのだろうか?それとも同意しないのだろうか?
同意するのなら、この議論はここで終わりなのだと思うよ。
では返答を待つよ。
http://h.hatena.ne.jp/the_sun_also_rises/228779457575149615

kyo_ju氏

今回は、たまたま今のところアパホテルの業績悪化を招きそうな状況になっていますが、あなたのいう「ホスピタリティに欠ける対応」や私のいう「他国や他民族を威圧したり侮辱したりする反社会的行為」をすれば必ずホテル業の業績悪化を招くとは言えません。
現にこれまでは(同様の対応を続けていたにも関わらず)炎上しなかったわけですし、これからだって、たとえば歴史修正主義を支持する人達がアパホテルを「泊まって応援」しようと運動を繰り広げたりして、業績悪化しないで済む展開もあり得るでしょう。また、ホスピタリティの有無・程度や、反社会的行為の有無・程度だけでホテルの業績が決まらない(立地、価格など他の要因の影響が大きい)ことは前述のとおりです。
以上のとおり、「オーナーが書いた歴史修正主義本を客室に備え付けた」⇒「業績悪化」が必然であったとはいえないと考えます。もしあなたがこれを必然だったと考えるのであれば、見解に相違があります。

それ以上に本質的な見解の相違は、
 ・あなたは、この問題について「ホテルの業績悪化を招くから経営者として不適切な判断だ」と考えている。
 ・対して私は、「(業績悪化を招こうが招くまいが)他国や他民族への威圧や侮辱的言動を行なったこと自体が社会的非難を受けるべきだ」と考えている。
という違いです。
この違いについては、hima-ariさんへのあなたのリプライで、あなた自身も
 ・kyo_ju氏は、アパホテルの代表の「歴史認識」を重視した。
 ・私は、アパホテルの「代表の経営者」としての責務を重視した。
と、若干言い方は異なりますが同趣旨の指摘をしていますね。

以上二点、見解に相違があります。
もっとも、見解の相違が明確にされることも議論の一つの意義ではありますので、相違があることを確認して議論を終了してもよいと考えますが、どうしますか。

以上はさておき、あなたのブログエントリ(http://thesunalsorises.hatenablog.com/entry/2017/01/18/145832)で次のような趣旨で「はてサ」について論評していますね。

(1)「はてサ」たちは、いきなり「お前は間違っている」とポリコレ棒をふるってくる。
(2)「はてサ」は私の考え方を否定したいという気持ちが特に強いために偏見に満ちた見方をする。
(3)私の言動は「はてサ」たちの癇に障っているようだ。

(1)について(「ポリコレ棒」という概念の意味にも疑問がありますが)、the_sun_also_risesさんはブコメ等でいきなり「お前は間違っている」と他人を批判したことは無い、との理解でよろしいでしょうか。
また、(2)と(3)については、言及相手の内心の決めつけを含んでいると思いますが、the_sun_also_risesさんは他人の内心を決め付け、それを前提として何らかの主張を展開するようなやり方に対しては肯定的である、と理解してよろしいでしょうか。

上記のブログ記事でいう「はてサ」に誰が含まれるのかは不明ですが、日頃「はてサ」と呼ばれることも多い者の一人として、今回の議論をきっかけとしてなされた上記の「はてサ」への揶揄的な論評は看過できないものと考えるので、認識を明らかにされるか、論評自体を撤回されることを求めるものです。
http://h.hatena.ne.jp/kyo_ju/81814358298799942

返答ありがとう。
これでやり取りを終了することは、既に表明している通り、異論はない。
その論評をしたから、このやり取りがあったのだから、論評自体は撤回しないつもり。
経緯がまったくわからなくなるからね。
批判は自由と思うので、ハイクなり自身のブログなりで行えばよいと思うよ。
もっとも、ハイクなりブログなりで、長文の批判をいただいても、正直、時間がとれないので、ブコメでしか返答しないと思う。
今回は、巻き込まれたなとhima-ariさんに申し訳なく思ったので、特別にブログやハイクで対応したので。
http://h.hatena.ne.jp/the_sun_also_rises/83468023942331279

このやりとりは、これでひと段落だなと思います。
正直に言って、このやり取りが見解の相違で落ち着くのは、最初からわかっていました。
そして最後にkyo_ju氏が私を批判したの点は、今回のやり取りの本筋ではないのですが、その点は理解できます。

(1)について(「ポリコレ棒」という概念の意味にも疑問がありますが)、the_sun_also_risesさんはブコメ等でいきなり「お前は間違っている」と他人を批判したことは無い、との理解でよろしいでしょうか。
また、(2)と(3)については、言及相手の内心の決めつけを含んでいると思いますが、the_sun_also_risesさんは他人の内心を決め付け、それを前提として何らかの主張を展開するようなやり方に対しては肯定的である、と理解してよろしいでしょうか。

これについては、僕の言がそれに該当すると思えば、具体的に批判すればよいだけと思っています。(1)について指摘しておきたいのは、私はこれまで自分からIDコールして上記のような行動をとったことはないということです。逆にいきなり「はてサ」と思われる人物からいきなり罵倒IDコールされたこと(これをポリコレ棒と呼んでいます)は幾度となくあります。その時はこちらもコール主を侮蔑した対応をとらせてもらっていますが、繰り返しますがそんなことを自分から仕掛けたことはありません。
本文にある侮蔑の事例としては、コールはしなくても私に対して「暗黒太陽」(「自爆ボタン先生」というのもあるみたいだけど)などという侮蔑を含んだ名指しをするような無礼なコメもいくらでもあります。しかし私はそのような侮蔑を含む名指しをしてコメを残したことはありません。指摘された部分は、そういったできごとを指しています。
「暗黒太陽」を検索 - はてなブックマーク

それから、仮に万が一そういう事例があったからといって、別事例ですから今回の事例を撤回することにもならないかなと考えています。
日本の法律(と今回の場合にははてなの規約)に従えば、批判はお互いに自由なんですからね。

ただ一つだけ書いておきたいのは、kyo_ju氏がコメントに書いた『「××という行為は○○という点で問題だと思う」という言明は、暗に「他の点では特に問題ではない」という意味を含むものです』と私は考えないということです。その考え方は、偏見に繋がりやすいと思うからです。一方、誰かの論説がなぜその件にふれないのか疑問に思った場合は、触れていないという事実の指摘を行って偏った見方だという批判をするように心がけています。
なお付け加えると、今回kyo_ju氏も同様だったと思いますよ。そのラインを踏み越えた人はいましたが、kyo_ju氏とは別人です。
そしてその態度は、私も同じだったと思います。だから、kyo_ju氏の「私の考え」に対する批判は、批判として受け止めた上で、見解の相違として終わらせているわけです。

最後に、kyo_ju氏の言について、hima-ari氏も同様に問題指摘をしていましたので、それとそれに対する私の返答を記載してこの記事を終えます。(つもりでしたが、若干追記があります)

追記その3

hima-ari氏

kyo_ju氏の『「××という行為は○○という点で問題だと思う」という言明は、暗に「他の点では特に問題ではない」という意味を含むものです』というコメをうけて

わたしはその
「他の点では特に問題ではない」
という解釈がそもそも勘違いでは?
という話をさせて頂いたつもりです。

誰だってちょっとした文意の読み違えぐらい日常茶飯事でしょうし、
今回は詳しいお返事も来たわけですから

「そうだったんですね。お返事どうも」

って程度でアッサリ終わる話だと思うんですよ。
お互い傷の残る話というワケでも無いですよね。

むしろここで発言者の本意を無視して、
文意解釈上ではああだこうだと忖度して回るのは、
一般的に「挙げ足取り」と言うもので、
こちらはガッツリ傷の残る話になることが予想されるため、
それは止めた方がエエのではー… と心底思う所です。

なお、ここ以降に伸びてるお話については、
わたしには難しくてついて行けてません。
orz
http://h.hatena.ne.jp/hima-ari/315649659597119666

hima-ariさんへ

kyo_ju氏とやり取りをするにあたって、最初にここまで持ってこようと思ったところまでやり取りをしました。
今は、kyo_ju氏の返答待ちです。
相手のあることなので、途中であさっての方に行きかけたのは、私の不徳とするところですが、ここまで持ってくれば、私が何を考えていたのか少しはわかってもらえるのでは?と微かに期待しています。

・kyo_ju氏は、アパホテルの代表の「歴史認識」を重視した。
・私は、アパホテルの「代表の経営者」としての責務を重視した。

hima-ariさんは最初からご理解くださっていたことですが、この2つは、別に対立概念ではなく、並列できる概念なのだと私は考えているのですが、それをkyo_ju氏が認めてくれるかは、返答を見ればわかると思います。
私は、『「××という行為は○○という点で問題だと思う」という言明は、暗に「他の点では特に問題ではない」という意味を含むもの』ではなく、何を重視するのか優先順位の表明にすぎないと考えていますし、その認識は、hima-ariさんと一致していると思います。
仮にそれをkyo_ju氏が認めないとしても、これ以上やり取りを続けても、不毛なやり取りが続くだけと思いますので、どんな返事がこようとこれでやめようと思います。

ご協力ありがとうございました。
また、今後ともよろしくお願いいたします。
http://h.hatena.ne.jp/the_sun_also_rises/83468020541556646

kyo_ju氏

お返事どうも。

彼(もしかすると彼女かも)とのやりとりで見解の違いは明確になったと考えられます。
明確になった内容は、彼あてのリプライで先ほど書いたとおりです。
その上でどちらが正しいかまで決着を付けるのかどうかは、彼の自由でもあり、私の自由でもあるでしょう。ということです。

それにしても、ついさっき知ったんですが、「ホスピタリティ」とは別に「ホスタビリティ」という言葉があるんですね。
彼の「「ホスタビリティが欠落した会社だ」という批判は、ホテル業の会社に対する「最大の批判」」という文章がtypoとも思えなかったので一応ぐぐってみた次第です。
もっとも、彼も大元のブコメでは「ホスピタリティの欠如」と書いているので、何らかの意図をもって書き分けをしているのかは不明ですし、彼のいうホスピタリティ(の欠如)の内実がはっきりしない(結局、客を怒らせる結果になったから後付けで「ホスピタリティが欠けていた」と言っているようにしか見えない)のは変わりませんが。

では。
http://h.hatena.ne.jp/kyo_ju/316617265725451529

いくつか補足しておいた方がよいかなと思うので、返答するね。

1.どちらが正しいかまで決着を付けるのかどうかは、彼の自由でもあり、私の自由でもあるでしょう。ということです。
僕は批判はするし、僕の考えに対する批判は自由だと思っているのだけど、「どちらが正しいかまで決着を付ける」なんてことは考えたことがないんだ。
正確にいうと、大学卒業するまではわりと相手を論破したいという衝動もあったかもだけど、社会に出てから変わったよ。今は「着地点」をみつけて交渉事とかしようとしているよ。「着地点」が見つからない時も、できるだけ早く見つけられるように心がけている。今回も同じだ。
それは、「正しさ」というのは、立場がちがえば全く違うものになるということを、社会に出て身にしみて知ったからだと思っているのだけどね。

2.「ホスピタリティ」とは別に「ホスタビリティ」という言葉があるんですね。
「ホスピタリティ」が正しく、「ホスタビリティ」は誤用と思うよ。もし僕のコメで「ホスタビリティ」と間違っているところがあれば、それは単なるミスだよ。
判らないように使い分けるとか、そういう「卑怯な」ことは僕はやらない。(卑怯な方法は、社会では決して得をしないからね)

それから、君とのやりとりは、あのブログ記事に追記として掲載させてもらったので、改めて連絡しておくよ。
若干、やりとりが終わった後の感想も書いている。
http://h.hatena.ne.jp/the_sun_also_rises/81796767290914280

追記その4

これで終わりかなと思ったのだけど、kyo_ju氏からハイクがきたので追記します。
なお、このまま永遠に終わらないのかもだけど、追記はこれで終わります。

kyo_ju氏

そうですか。

>その論評をしたから、このやり取りがあったのだから、論評自体は撤回しないつもり。

やり取りのきっかけは「ホスピタリティの欠如が問題」というブコメであって、「はてサがポリコレ棒」云々と書いたブログ記事は、それより後の話ですよね。
つまり、私からすると
ブコメの真意を質問したら、冒頭に『これだからはてサは…』と言った質問と無関係な揶揄が書き連ねられた返事がきた」
という状況なわけです。

なお、経緯がわかる形で撤回する方法としては、ブログ記事の当該部分に見え消しで取り消し線を引いた上で、「この部分は○月○日、××の理由で撤回しました」などと注記する方法もあります。

どうしても撤回はしないと言うのであれば、さきのハイクで書いた次の質問に回答してください。

>(1)について(「ポリコレ棒」という概念の意味にも疑問がありますが)、the_sun_also_risesさんはブコメ等でいきなり「お前は間違っている」と他人を批判したことは無い、との理解でよろしいでしょうか。
>また、(2)と(3)については、言及相手の内心の決めつけを含んでいると思いますが、the_sun_also_risesさんは他人の内心を決め付け、それを前提として何らかの主張を展開するようなやり方に対しては肯定的である、と理解してよろしいでしょうか。
http://h.hatena.ne.jp/kyo_ju/279638490805968014

さっき、別のハイクで書いた通りなので、そちらをみてね。
それから上記の点については、ブログに追記している。
このコメで僕はもうハイクでの返答はしないので、あとは批判記事をブログに書くなり、ハイクに書くなりしたらよいと思うよ。
その批判で、何か反論したいことがあれば、ブコメを書くと思うので。
http://h.hatena.ne.jp/kyo_ju/279638490805968014

参院選の感想。今こそ憲法9条の『現実的』改憲を望む。

参院選の結果について

2016年7月10日、参院選が終わった。
結論からいえば、勝者なき選挙だったかなと思う。
自民党は27年ぶりの単独過半数に届かなかった。激戦が伝えられた1人区で11人の落選者がでた。野党共闘は一定の成果をあげたことを認めざるをえない。公明党は選挙巧者ぶりを発揮したが、1人区で自公共闘野党共闘に敗れたことで、自公の選挙協力の限界を示すことになった。
その一方で、注目された与党(自民+公明)におおさか維新等の改憲に前向きな勢力の議席数だが、いわゆる改憲勢力で実質的に3分の2を超えた*1。3分の2阻止を旗印にした野党連合は阻止に失敗した。
民進党野党共闘の成果は認められるものの大きく議席を減らした。共産党議席を伸ばしたもののそれほど多く議席を伸ばせなかった。おおさか維新は関西圏以外に浸透できなかった。社民党は党首が落選した。

ほとんどの党に忸怩たる思いが残る結果になったと思う。とはいえ、全体とすれば、与党の政権基盤を強くしたと思うので、完勝とまではいかないが与党勝利と呼べるかもしれない。

一方、大きく議席を減らした民進党にとっては悩ましい結果だと思う。完敗ならば野党共闘という選挙戦術を否定できた。改憲勢力の3分の2を阻止できていれば野党共闘を評価できた。結果はどちらでもなかった。民進党の選挙総括は難しいだろう。

私は、民進党は、55年体制社会党のような「なんでも反対党」ではなく、「政権交代を担える政党」を目指すべきだと思う。そのためには、声を出さない大多数の国民の声なき声を拾い上げ、それに真正面から向き合ってほしい。そうすれば、自民党の政策に心底満足しているわけではないが、自民党政権しか選択肢にないと考える多くの人々の姿とその苦悩が見えるはずだ。

国民が望んでいるのは、一に現実的で前向きな「社会保障」であり、二に現実的で前向きな「経済政策」だ。
立憲主義を守れ」とか声高に叫んでも選挙結果はついてこない。それは日本国憲法が施行後、既に69年経ち、日本国憲法の安定性を市井の人々は信じているし、事実、日本国憲法は安定しているからだ。
安保法改正を戦争法と呼び、あたかも戦争前夜のような感情的な選挙戦を展開しても、その感情論には動かされない。今回の参議院選挙は、国民の成熟性が現れた選挙結果だったと思う。

国民のコンセンサスを得る改憲が必要

国民の願いは、一に現実的で前向きな「社会保障」であり、二に現実的で前向きな「経済政策」だということは忘れてはいけない。安倍政権がまず取り組むべきは、困難を増す経済運営に全力を尽くすことだ。

改憲勢力で3分の2を確保したからといっても、改憲について白紙委任されたとは考えるべきでないだろう。とはいえ、憲政史上初めて改憲勢力で衆参両院とも3分の2を確保したことは重視したい。

国連憲章で認められている集団的自衛権の行使は、独立国として当然の権利だという点は強調しておきたい。そして、中国が荒々しく周辺国と対立している今、中国と比べて非力な日本は、同じく中国の脅威にさらされている国々と協力して中国に対するのが、唯一の現実的な対応策だと思っている。
中国の軍拡は、今後数十年以上続くということを忘れてはいけない。今でも相当の脅威なのに、20年後はどうなっているか考えてみてほしい。
20年後の中国は、間違いなく日本の自衛隊を圧倒する海軍と空軍を持つだろう*2。その状況でどうするか? 多国間の協力体制は、一朝一夕にはできない。今から時間をかけて準備しておかねば、時すでに遅しとなろう。

集団的自衛権の行使は、中長期的視点に立てば絶対に必要なものだ。だが一方で、今回の安保法改正は、相当強引なやり方だったことも認めざるをえない。それは欺瞞に満ちた日本国憲法第9条第2項をそのまま放置し続けたツケだと思う。そしてそのツケを更に将来に残すのは、賢明ではない。
改憲勢力が3分の2を確保した今こそ、将来に禍根を残さないよう改憲すべきだ。
そのためには、自民党は批判の多い自民党の『日本国憲法改正草案』を封印し、国民のコンセンサスを得られる改憲案を示して、民進党の議員も含めて同意者を増やす努力をすべきだ。

憲法第9条第2項無効論

私は、現行憲法の第9条第2項は無効な条文だと考えている。少なくとも裁判規範性はないと考えている。つまり第9条第2項に違反していると裁判を起こしても、裁判所は「統治行為論」によって判断を行わない条文だと思う。
以下にその考えを記したい。具体的に論拠を書くととても長文となるので、ここでは私の主張について概略を示すことにしたい。

概略

  • 日本国憲法は、その成立過程に問題があり、成立当初から無条件で正統なものとはいえない。
  • 憲法の正統性に対する学説は、八月革命説が主流となっているが、ポツダム宣言受諾を民衆革命と同じ効果を持つとする八月革命説はそもそも無理があり、八月革命説を否定する。
  • 日本国憲法は正統性に問題を抱えたまま発布されたと考えるべきだ。一方で正統性に問題がある日本国憲法に対し、その正統性を否定できるのは、大日本帝国憲法で主権を持つ昭和天皇だけである*3。しかし昭和天皇はその生涯を通じ、国民主権日本国憲法を遵守し尊重した。その考えと立場が確かと広く信じられた時、正統性に不備はありつつも国民主権は確定した。(この説を「天皇による主権禅譲説」と名付ける)
  • 主権者たる国民は、憲法を制定する権限を持つ唯一の存在である。国民が定めた憲法(民定憲法)だけが国民主権下では正当性を持つ。しかし日本国憲法は、欽定憲法である大日本帝国憲法の改正という手続きで制定された。日本国憲法は、その施行の当初は、形式的にも実質的にも民定憲法の要件を満たしていない。
  • 確かに日本国憲法は、主権者たる国民が直接制定、改正する機会が、施行後69年にわたり一切なかった。その事実は重いが、しかしだからといって、全ての条文について、「直接的な手段で民定されていないために正当性がない」とは言えない。日本国憲法は、その大部分の条文を国民は遵守し、その条文に基づき法律が作られ、その条文に基づき司法判断が行われている。その状態が長く続いたため、日本国憲法は、その大部分の条文について実質的に民定したと同じと考えられる。(この説を「消極的民定憲法説」と名付ける)
  • 一方で「天皇による主権禅譲説」と「消極的民定憲法説」から導かれるのは、日本の独立回復つまり主権回復時からしばらくの期間、日本国憲法はその正統性と正当性が確立していない不安定な時期があったということになる*4
  • まさに日本国憲法の正統性と正当性が確立していない時期に作られたのが「警察予備隊、現在の自衛隊」である。「警察予備隊、現在の自衛隊」を保有することは、第9条第2項で禁止される戦力保有にあたり、「警察予備隊、現在の自衛隊」は第9条第2項の条文に反する存在である。
  • 日本国憲法の正統性と正当性が確立していない時期に作られた「警察予備隊、現在の自衛隊」の存在を、国民は一貫して許容し続けてきた。そしてその状況が長期間にわたるということは、「消極的民定憲法説」に立つと戦力の保有を禁じた第9条第2項の条文を、主権者たる国民が民定したとは認めがたい。
  • 上記から、日本国憲法は概ね正統性と正当性はあると考えられる。よって無効論も否定する。但し唯一第9条第2項はその正当性を否定し無効な条文と考える。少なくとも第9条第2項には、裁判規範性はない。

概略の要約(サマリーのサマリー?)

概略を更に短く要約すると次の通り。

  • 日本国憲法は、占領、すなわち日本の主権が制限されていた時期に制定された憲法であり、主権者たる日本国民が民定した憲法ではない。
  • だが、日本国民は長らくその憲法を概ね守り続けた。その事実によって実質的に民定した憲法と同じと考えられ、正当性は認められる。
  • しかし、主権回復からの全期間、日本は第9条第2項に反する自衛隊を保持し続け国民はそれを許容した。第9条第2項だけは実質的に民定したと考えられず無効だ。

なお、「天皇による主権禅譲説」と「消極的民定憲法説」に立つと、憲法施行当初、内閣の国会解散権は第69条のみと考えられていた(1948年なれ合い解散)ものが、1953年に第7条を根拠として解散できるように解釈が変わり、そのまま定着したことも、十分説明可能だ。

主張

私は、憲法とは国民のものであり、その条文解釈は、国民が理解できるものであるべきと強く思っている。憲法憲法学者のものでもなく、政府(内閣法制局)のものでもない。国民が理解できない解釈でどうやって「立憲主義」を守ろうというのか。
上記の私の解釈は、起こったことをできる限りあるがままに評価し、できる限り理解しやすい解釈をと心がけて行った。
そうすると、たった1つの条文、第9条第2項だけはその正当性を否定せざるをえなかった。
世界有数の実力を持つ自衛隊を、憲法第9条第2項で保有を禁止する戦力ではないという解釈は無理がある。そんな一般人としての感覚は大事にしたいと思っている。その一方で、自衛隊の存在を国民は認め続けてきた。その矛盾をどう解釈するのかが重要だと思う。それは国民が理解できる解釈であるべきだ。
その観点では政府(内閣法制局)の解釈も、護憲派の主張も、欺瞞としかいいようがないと思っている。

提案したい改憲

憲法第9条第2項を巡る堂々巡りの議論から抜け出し、激動する国際環境の中で本当に必要な安全保障の議論を行うためには、私たちは、現状をそのまま認める改憲を行うべきだと思う。その観点で、私は次のような改憲案を提示したい。

現行の規定

第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

私は、第9条第1項の「戦争放棄」の項の修正を行う必要性を感じていない。日本国民の全てといってもいいほど圧倒的大多数は、戦争を望んでいないと思われる。戦争の放棄は日本国憲法の重要な条文だと思う。
私は、第2項だけを改正すべきと思う。

改憲

第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の規定は、我が国の平和と安全とを維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置を執ることを妨げない。
3 第2項に定める自衛のための措置を執るため、自衛隊保有する。自衛隊の最高指揮官は内閣総理大臣とする。

この改定案は、現状をそのまま認めたものだ。改憲に反対する人は、第2項の「我が国の平和と安全とを維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置」を憲法で認めることは現行の憲法を大きく毀損するものと考えるかもしれない。しかしこれは砂川事件最高裁判決で確定している判例をそのまま条文案にしただけだ。現行憲法最高裁の判断を全く変えていない。

(裁判要旨から抜粋)
四 憲法第九条はわが国が主権国として有する固有の自衛権を何ら否定してはいない。
五 わが国が、自国の平和と安全とを維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置を執り得ることは、国家固有の権能の行使であつて、憲法は何らこれを禁止するものではない。
「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法違反」事件の最高裁判決(刑集 第13巻13号3225頁 昭和34年12月16日)

そして、第3項で、自衛隊保有を認めているが、現状と何か変えている点は全くない。現状をそのまま認める勇気を私たち国民は今こそ持つべきだと思う。
自民党は、改憲勢力で3分の2を確保したからといって、強引に改憲へ突っ走るのではなく、野党、特に民進党とよく議論し、与野党の多数が賛同できる改憲案をまとめるべきだ。
解釈改憲が何度も繰り返されるより、解釈の余地が少ない条文に改憲した方が、「立憲主義」を守るためにはよほど有効だ。

現状を認める憲法第9条改憲を行った上で、批判の多かった「改正安保法」について、新しい憲法条文に則り、再度議論すべきと思う。
そうすれば、「立憲主義を守れ」と繰り返すだけの教条的な憲法解釈議論や、「安倍政権の暴走」というレッテル張り議論を脱し、「我が国の平和と安全とを維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置」とは何かという具体的な議論に収れんしていくだろう。その議論こそ、将来の日本の安全保障にとって本当に必要な議論だと思う。

安倍首相の自民党の総裁任期はあと2年しかない。この参議院選挙によって、安倍政権の政権基盤は強化された。それだけに、安倍政権の責任は従来にもまして重くなったと思う。
 

 

*1:改憲に前向きと思われる諸派、無所属の議員を含む。

*2:陸軍と戦略ミサイル軍は既に圧倒している。

*3:終戦時には天皇機関説は排除されていたため、ここでは天皇主権説をとる。

*4:その期間はかなり短いと考えるべきだが、それでも日本国憲法の正統性と正当性が不安定な時期があったという認識が重要である。

慰安婦問題は「最終的かつ不可逆的に」解決した

最終解決に正直とまどっている

2015年12月28日、岸田外務大臣は訪韓し、韓国の尹炳世外相と慰安婦問題の解決に向け会談し合意した。
これによって、日韓両政府とも「この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認」した。これによって日韓両国の最大の懸念となっていた慰安婦問題は解決した・・・
少なくとも字面上は・・・

でも本当なのか。本当ならばとても喜ばしい。でもまだ疑心暗鬼な気分でもある。

1年半前、私は「河野談話検証で手詰まりとなった日韓両国」という投稿を書いて、慰安婦問題に対する対応として日本は次の4つを行うべきと書いた。

  • アメリカの圧力を利用する
  • 時間をかける
  • 韓国軍慰安婦に対する対応を見極める
  • 韓国のいやがる外交を行う

河野談話検証で手詰まりとなった日韓両国 - 日はまた昇る

今読み返しても概ね認識に変化はないが、1つだけ「日韓関係は手詰まりな状況であり、慰安婦問題は慰安婦の存命中に解決することは困難」という認識には誤りがあった。この点については私の不明を反省し、安倍首相と朴大統領の政治決断に対し素直に賛辞を贈りたいと思う。

合意内容を分析する

合意内容のまとめ

今回の日韓合意については、外務省のHPに日韓外相の共同記者会見の文言が掲載されている。

日韓両外相共同記者発表 | 外務省

この共同記者会見で明らかにされた合意内容は次の通り

  • 日本は「軍の関与」を明言した
  • 日本政府の「責任」を認めた
  • 責任が「法的責任」「道義的責任」かは解釈の余地を残した
  • 安倍首相は「心からおわびと反省の気持ちを表明」した
  • 韓国政府は元慰安婦の支援を目的とした「財団を設立」する
  • 日本は上記の財団に運営資金を「政府の予算」から支出する
  • 慰安婦の支援事業を「日韓両政府が協力」して行う
  • 韓国政府は在韓日本大使館前の「少女像問題の適切な解決」のため努力する
  • 日韓両政府は慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に解決」されることを確認する
  • 日韓両政府は慰安婦問題について国際社会で「非難・批判することは控える」

特に法的責任問題は『1965年の請求権並びに経済協力協定によって「完全かつ最終的に解決された」(同協定第2条1項)との立場を堅持する日本政府に対して、韓国政府は、「反人道的不法行為」である慰安婦問題は同協定によって解決されたとみなすことはできず日本政府の法的責任は残っている(2005年日韓会談外交文書公開の後続措置に関する民官合同委員会の発表)、との立場をとってきた。両国政府の立場変更は望めないことから、この問題で妥結点を見出すのは極めて困難であるとみられてきた』だけに、この合意は日韓両政府がギリギリまで歩み寄った結果だと思う。
この合意を非難する人は、日本か韓国かどちらかの国の主張や立場を一切認めない人であろう。

上記の『 』内の文は、下記コラムから引用
慰安婦問題、歴史的合意を待ち受ける課題 | 西野純也 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

 

「最終的」かつ「不可逆的」解決の意味

「最終的」の意味は明確だ。今後、日韓の外交問題として慰安婦問題が提示されることはないということだ。そして日韓両国とも国際社会で慰安婦問題について相手を非難・批判しないということだ。韓国によって唯一つけられた留保は、韓国政府が設立した財団に日本政府の予算から運営資金を支出し、日韓両国が協力して支援事業を行うという点だけ。支出する金額は10億円とされ、金額面から考えてもこの実行は容易だと思われる。この「最終的」な解決は、日本側が強く望んだものだろう。
一方「不可逆的」の意味には解釈の余地がある。この文言は韓国側が要求してつけられたという報道もある。

「不可逆的」という表現を入れる問題は交渉中に韓国側が先に提起したものだという。日本の政治家が旧日本軍の慰安婦強制動員を初めて認めた河野談話(1993年)などを否定する発言を繰り返すことを念頭に置き、「もうこれ以上は言葉を変えるな」という趣旨で強調したということだ。
<韓日慰安婦交渉妥結>「不可逆的」めぐり韓日間で解釈の違い | Joongang Ilbo | 中央日報

日本における報道では「不可逆的」とは問題を蒸し返さないという意味だと捉えられているものが多い。

大切なのは、日韓共同の新基金事業を着実に軌道に乗せるとともに、韓国が将来、再び問題を蒸し返さないようにすることだ。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20151229-OYT1T50009.html

私は、「不可逆的」の意味には、今後河野談話等、過去の日本が示した認識に対する否定をしないという意味と、再び慰安婦問題を蒸し返さないという2つの意味があると解釈している。
 

韓国は本当に慰安婦問題を蒸し返さないのか?

例えば、ツィッターではこんな反応があった。推測だが、かなり多数の日本人が「政権が変わると韓国は外交上の約束を反故にするのではないか」と疑問視していると思う。


参考:慰安婦問題の最終的かつ不可逆的解決、日韓外相の合意内容よりも韓国がいつ蒸し返すかに注目集まる : 市況かぶ全力2階建

私は、この合意に関わらず、韓国が慰安婦問題を蒸し返す可能性は否定できないと思っている。
例えば、韓国の最大野党である共に民主党の文在寅代表は、「この合意は無効だ」と発言している。もし文在寅氏が次の大統領選で勝利したらどう韓国が動くか自明なのではないだろうか。*1

共に民主党文在寅代表は30日、日韓に妥結された慰安婦の交渉について、「私たちは、この合意に反対し、国会の同意がなかったので、無効であることを宣言する」と述べた。
(原文は韓国語なのを自動翻訳した)
문재인 "위안부 협상, 국회 동의 없었다…무효 선언" | 연합뉴스



韓国が慰安婦問題を蒸し返したら?

文在寅氏が大統領となり、氏の発言通り「国会の同意がなかったので日韓合意は無効だ」と主張したらどうなるのだろうか? 少し予測してみたい。
 

韓国の国際関係、特に米韓関係が悪化する

今回の日韓合意については、水面下でアメリカの仲介(圧力というべきかもしれない)が行われていたと報道されている。日韓の合意形成の経過をよく知るがゆえに、合意発表から間髪入れずに「歓迎」の意を表明できたと思われる。

ケリー米国務長官は28日、日韓両国が慰安婦問題で合意したことについて、「歓迎する」との声明を発表した。
http://www.yomiuri.co.jp/world/20151229-OYT1T50014.html

今回の日韓合意は、日本と韓国両国だけでなく、アメリカの外交成果でもある。それに真っ向から歯向かう姿勢を示せば、関係が悪化しないほうがおかしいというもの。
逆に言うと、韓国がアメリカとの関係を悪化させてもよいと政治的な判断をした状況でのみ、慰安婦問題を蒸し返すことができるともいえるだろう。

蒸し返しの条件①:韓国がアメリカとの関係悪化を許容する時

 

日韓関係は決定的に壊れる

それでなくても、日本人の対韓感情はかつてないレベルで悪化している。それに追い打ちをかける行動をとれば、日本国内で韓国擁護の言説は徹底的に批判にさらされると思われる。
その結果、日韓関係は決定的に壊れる。それは政治だけでなく経済でも影響していくだろう。
逆に言うと、韓国が日本との関係を決定的に壊してもよいと政治的な判断をした状況でのみ、慰安婦問題を蒸し返すことができるともいえるだろう。

蒸し返しの条件②:韓国が日本との関係を決定的に壊してよいと判断した時

 

中国は内心では蒸し返しを歓迎する

中国は今回の日韓合意に意表をつかれたと思われる。すぐには見解を発表できなかった。
ようやくでてきた反応は、日韓合意を支持する一方、その裏に複雑な思いも見え隠れしている。

韓両政府が従軍慰安婦問題の決着で合意したことについて、中国外務省の陸慷報道局長は28日の定例記者会見で「両国関係の改善がこの地域の安定と発展に寄与することを希望する」と述べ、歓迎する意向を表明した。
中国、日韓の関係改善を歓迎 今後を慎重に見極め - 共同通信 47NEWS

中国は、もし韓国が合意を破り、慰安婦問題を蒸し返したら、内心では歓迎するだろうと思う。
逆に言うと、韓国が中韓関係に重きをおき、中国の支持を期待できる状況になった時、慰安婦問題を蒸し返すともいえるだろう。

蒸し返しの条件③:韓国が中韓関係を最重視した時

 

間違いなく蒸し返しのハードルは高くなった

これまで慰安婦問題をどれだけこじらせても、蒸し返しても、韓国の政治的リスクはほとんどなかった。
だが、今後、慰安婦問題を蒸し返すことによる韓国の政治的リスクは相当高いものとなった。日本とアメリカは協力して、上記の「蒸し返しの条件」が整わないように韓国との関係を構築していく必要があると思う。
 

韓国に慰安婦問題を蒸し返しさせないため日本がすべきこと

韓国という他国の行動を日本はコントロールすることはできない。だが何らかの影響を与えることは可能だと思う。そこで、韓国に慰安婦問題を蒸し返しさせないため日本がすべきことを考えてみたい。
 

河野談話を含む日本の過去の公式見解を堅持する

「不可逆的」という語の意味を、慰安婦問題に対する日本の公式見解を変えないという意味と解釈している以上、日本がその公式見解を変えようという素振りを見せただけで韓国は強く反発してくると思う。
もし、文在寅氏のように「合意は無効」という考えを持ち、それを公約にして大統領選挙に勝って大統領になった場合、その大統領は日本の合意違反を理由に合意の無効を主張するかもしれない。
日本が先に原因を作った場合、日米関係もおかしくなる。
したがって、河野談話など日本の過去の公式見解を否定する発言を政権内部から絶対に出さないよう最大限の努力を行うべきだ。
一方、一部の政治家や民間からは、引き続き河野談話の否定を主張する発言が出てくると思われる。その際のダメージコントロール、特にマスコミ対策はしっかりやっておく必要があるだろう。
それでなくても、この合意が気に入らない左派は、安倍政権の失敗を心待ちにしている。そんな負の期待にわざわざ応えるのは愚か者だ。

第二次安倍政権になってからも、安倍自身は河野談話を引き継ぐとしてきたものの、裏では自民党を使って慰安婦の存在そのものを否定するような動きを強めてきた。
それが、今回、軍の関与、政府の責任を認め、心からのお詫びを表明したのだ。右派の目には裏切りだと映るだろうし、リベラルから見ると、大きな前進をしたように思えるのは当然だろう。
だが、これは別に、安倍首相が改心したわけではなく、たんに、アメリカの圧力に屈したというだけにすぎない。
慰安婦日韓合意でネトウヨが「安倍、死ね」の大合唱! でも安倍の謝罪は二枚舌、歴史修正主義はさらに進行する|LITERA/リテラ

 

安倍首相のお詫び文を正式に発表し国際的な評価を固める

慰安婦問題では、償い金事業で日本の首相のお詫び文書を渡していて謝罪も行っているが、国際社会にその事実が広く知られているという状況になっていない。

そこで1997年1月11日、金平輝子理事を団長とする基金の代表団がソウルのホテルなどで7人の被害者に償い金、総理の手紙、理事長の手紙をお渡ししました。
各国・地域における償い事業の内容-韓国 慰安婦問題とアジア女性基金

「日本は謝罪していない」そんな誤解が国際社会に残ったままだと、韓国はそれを奇貨として「合意の無効」を主張する理由とするかもしれない。
それを防ぐためには、元慰安婦に渡す安倍首相のお詫び文を早々に起草し、それを韓国政府に正式に届け、その内容を広く世界に発表すべきと思う。そのお詫び文の内容が合意内容に沿っていれば、この合意が世界的に評価されたように、安倍首相のお詫び文も世界的に評価される。日本を代表して内閣総理大臣の安倍首相が正式に、そして元慰安婦に個別にお詫びしたという事実を広く世界に発信したい。
 

韓国の挺対協に対する日本国内の再評価を促す

日本国内でこの日韓合意に反対する勢力のうち、気をつけるべきは2つだと思う。
1つは、河野談話を否定する主張を行う「ナショナリスト」グループだ。このグループに対する対処は上に書いた。
そしてもう1つは、韓国の韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)の主張に賛同する市民団体や支持者のグループだ。
合意発表後すぐに挺対協は非難声明を発表したが、日本の団体もすぐにそれに呼応した。

昨日の日韓外相会談を受けて挺対協から声明が発表されました。人権侵害を受けた当事者が不在の「合意」によって人権の問題を本当に解決することなどできるのでしょうか。
アジア女性資料センター Asia-Japan Women's Resource Center

日本でも最近挺対協の存在は少しずつ知られてきているが、まだ十分認知されているとはいえない。
だが韓国では、対日政策について事実上の拒否権を持つともいわれる圧力団体として存在している。その活動内容について、賛否両面から議論を行い、日本国内の再評価を促したい。
私の見るところ、挺対協がこの日韓合意の実行上、最大の障害だと思う。挺対協を深く知ることは、日韓合意を実行するためにも重要だと主張しておきたい。
 

安保上の協力体制を整える

安全保障は、慰安婦問題と全く関係がない。だが事実上、この2つはリンケージしている。
2012年6月、日韓は「日韓秘密情報保護協定」を締結寸前までいったのだが、締結の1時間前に韓国は締結を延期した。その理由としたのが慰安婦問題であった。そして今もこの協定は締結できていない。そのため日本の自衛隊と韓国軍との間の情報共有に問題が発生し、主に北朝鮮の動向情報について、日韓の間の情報共有がうまくできていないという問題が生じている。
まずはこの「日韓秘密情報保護協定」の締結に向けて、全力で取り組むべきだと思う。この協定は、韓国のみならずアメリカにも実利があり、当然日本にも実利がある。
締結を拒む理由は全くないし、日韓の安保上の協力体制が深まれば、前述の「慰安婦問題を蒸し返す条件」は整いにくくなる。
 

経済面での協力体制を作る

今回の日韓合意の背景として、中国経済の減速の影響も無視できないと思う。韓国は輸出によって経済が成り立つ国だ。これまでは中国への輸出を成長エンジンにして経済成長してきたのが、ここにきて怪しくなってきている。
具体的に言えば、韓国はTPP入りを欲していると見る。新たな経済成長のエンジンが欲しいのだ。
そこで日本は韓国のTPP入りに向けて協力体制を作るべきだ。
韓国のTPP入りは、アメリカにとっても実利があるし、当然日本も対韓国輸出増が期待できるので実利がある。経済外交はWin-Winの関係を作ることに徹したい。
なお、韓国は日本との通貨スワップ協定の再締結も望む可能性があるが、通貨スワップ協定については日本に実利がない。韓国の変化が確実なものとなるまで、通貨スワップ協定の再締結は留保すべきだと思う。
 

日韓関係は改善するか

今の日韓関係は過去最悪といっていい状況にあり、短期的にはそれよりも少し関係が改善すると思う。
問題は、中長期的に改善するかだろう。
今回の合意履行については、日本もだが、韓国により大きな責任が生じた。例えば、日本大使館前の少女像の撤去(移設)とか、挺対協等の非難をもろともせず新たに作る財団の事業を認めてくれるように元慰安婦を説得することとかだ。
正直、履行はやさしくはない。
それでも一歩ずつ前進できるか。その成否に日韓関係の改善はかかっている。
安易に改善するとは考えないほうがよい。まずは日本にも韓国にも実利のある合意をひとつずつ積み上げていくことに徹するべきだろう。欲張りは損をするというものだ。

*1:崔碩栄氏のこのツィートhttps://twitter.com/Che_SYoung/status/682014867813892096から、原記事を確認した。