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日はまた昇る

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朝日新聞、吉田調書と吉田証言の誤報を認め謝罪する

政治 メディア

9月11日、朝日新聞がようやく謝罪

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朝日新聞・木村社長が「吉田調書」報道で謝罪 「読者の信頼を大きく傷つけた」|弁護士ドットコムニュースより

昨夕(2014年9月11日19時30分)から朝日新聞の木村伊量社長が記者会見し、原発事故の吉田調書の記事の取り消しと謝罪を行った。
あわせていわゆる慰安婦問題の吉田証言に関する誤報について、誤報そのものと訂正が遅れたことを謝罪し、第三者委員会を設置し調査すると表明した。

朝日新聞社の木村伊量社長と編集担当の杉浦信之取締役らは、11日夜7時半から記者会見しました。
朝日新聞社は、ことし5月20日の朝刊で、福島第一原発吉田昌郎元所長が政府の事故調査・検証委員会の聴き取りに答えた証言記録、いわゆる「吉田調書」を入手したとして掲載した記事の中で、福島第一原発の2号機が危機的な状況に陥っていた3月15日の朝、「第一原発にいた所員の9割にあたる約650人が吉田氏の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発へ撤退していた」と報じていました。
これについて、木村社長は、記者会見の中で「『吉田調書』の評価を誤り、多くの所員がその場から逃げ出したような印象を与える間違った記事だと判断した」などと述べ、「取材が不十分で所長の発言への評価が誤っていたことが判明した」として、記事を取り消しました。
また木村社長は、「読者および東京電力の皆様に深くおわび申し上げます」と謝罪したうえで、みずからの進退について「経営トップとしての私の責任も逃れられない」として「抜本改革のおおよその道筋をつけたうえで、速やかに決断したい」と述べました。
杉浦取締役については、編集担当取締役の職を解くとしています。
さらに木村社長は、いわゆる従軍慰安婦」の問題を巡る自社の報道のうち、「慰安婦を強制連行した」とする男性の証言に基づく記事を先月、取り消したことについて、「誤った記事を掲載したこと、そして、その訂正が遅きに失したことについて、読者の皆様におわび申しあげます」と謝罪しました。
そのうえで、過去の記事の作成や訂正に至る経緯、それに日韓関係をはじめ国際社会に与えた影響などについて、第三者委員会を設置して検証することを明らかにしました。
また、この問題を巡って、ジャーナリストの池上彰氏が、朝日新聞に連載しているコラムで検証が不十分だと批判する内容を執筆したところ、朝日新聞側が当初、掲載できないと伝えたことについて、木村社長は「途中のやり取りが流れ、言論の自由の封殺であるという思いもよらぬ批判をいただいた。結果的に読者の皆様の信頼を損なう結果になったことについては社長として責任を痛感している」と述べました。

朝日新聞 「吉田調書」記事取り消し NHKニュース

 

ここに至る経緯を振り返ってみる

8月5日、朝日新聞慰安婦問題の吉田証言の誤報を認める

朝日新聞は、たぶんその報道の初期から、少なくとも1990年代前半には、吉田証言は怪しいとわかっていたと思うのだが、その撤回ができず最初の報道から実に30年余の歳月を経て、ようやく2014年8月5日に吉田証言の撤回を行った。
朝日新聞にしてみれば、それは長年のどの奥に刺さったトゲを抜く英断と考えたのだろうが、単に記事を撤回しただけで、謝罪の言葉もなく、なぜ撤回に時間がかかったのかという説明すらなかった。明らかに不十分な内容だった。

■読者のみなさまへ
 吉田氏が済州島慰安婦を強制連行したとする証言は虚偽だと判断し、記事を取り消します。当時、虚偽の証言を見抜けませんでした。済州島を再取材しましたが、証言を裏付ける話は得られませんでした。研究者への取材でも証言の核心部分についての矛盾がいくつも明らかになりました。

「済州島で連行」証言 裏付け得られず虚偽と判断:朝日新聞デジタル

 

安倍政権はほくそ笑んだと思う。そして8月18日産経が特ダネを得る。

権力闘争に身をおき、その権力闘争に勝ち抜いたからこそ今の地位がある政治家がこのチャンスを見逃すわけはないよね。
朝日新聞自らが長年放置していた薪に火を付け、煙はくすぶっているのに火を消したつもりになっている状況を見たら、朝日新聞を叩きたい人は何を考えるだろうか?
その火の延焼を促す?
それはあまりに直線的だと思わないか? それより他の薪に火を付けて、火消しに忙しくさせた方がいいよね。
ということで選ばれたのが「原発事故に対する吉田調書の5月の誤報」だったと思う。
今となってみれば、朝日新聞の記事はなぜこんなあからさまな誤報を書いたのか甚だ疑問に思う内容だ。吉田調書を読める立場にいる人だったら明らかに朝日新聞の飛ばしってわかるわけだからね。特ダネと世論を動かせるという欲望に冷静な判断を失ってしまったとしか思いようがない。当然その立場にいる人は「これはいつか朝日新聞に対するトガメとして使える」と考えるに決まっている。そして2ヶ月ちょっと寝かせた。そうしたら、朝日新聞自らが、「私をぶん殴って」と言わんばかりの記事を書いたというわけだ。
ぶん殴り方は、同じ新聞による徹底的な反論記事であるのが自然だからどこかの新聞社にそれを書かせたいところだ。そこで選ばれたのが産経新聞なのだろう。8月18日には、下の記事が掲載された。

朝日新聞は、吉田調書を基に5月20日付朝刊で「所長命令に違反 原発撤退」「福島第1 所員の9割」と書き、23年3月15日朝に第1原発にいた所員の9割に当たる約650人が吉田氏の待機命令に違反し、10キロ南の福島第2原発へ撤退していたと指摘している。
ところが実際に調書を読むと、吉田氏は「伝言ゲーム」による指示の混乱について語ってはいるが、所員らが自身の命令に反して撤退したとの認識は示していない。

【吉田調書】吉田所長、「全面撤退」明確に否定 福島第1原発事故+(1/2ページ) - MSN産経ニュース

産経は同時に菅元首相に対する批判も記事にした。菅元首相はブログなどで反論を行った。そして安倍政権は菅元首相に菅元首相の調書も公開すべきと持ちかけたのだろう。9月11日の公開は、当時の民主党政権の調書も同時に公開されることになった。これは当人の同意を得たとされている。事前に交渉があったのは間違いない。
民主党はこれによって当時の行動について反論ができる。だから同意したのだろうと思う。
こうしてお膳立ては整った。
 

8月22日、安倍政権は効果を見極めてタイムリミットを設定した

朝日新聞は混乱しただろう。2つの火の手があがっている。1つは既に過ちを認めたがそれが不十分として批判する動き。もう1つは更に誤報を認めざるを得ない状況に追い込まれる動き。この両方にどう対応したら被害が少ないか。その議論に紛糾しただろうことは容易に想像できる。そして時間が経つ。
政権は、その朝日新聞の窮状を冷静に見ていたと思われる。
そして、世論に押されるという形で、「吉田調書の公開」を決定した。
これは朝日新聞へタイムリミットを設定し、決断を促すという効果を持つ。


「吉田調書」公開へ 政府、9月中旬にも - 47NEWS(よんななニュース)

 

8月24日、次の手、NHKへのリーク

そしてマスコミや国民の目を惹きつけたところで次の手を出す。
NHKへのリークだ。

東京電力福島第一原子力発電所の事故当時、現場で指揮をとっていた吉田昌郎元所長は、過酷な状況のなかで、次々と緊急事態への対応を迫られました。
吉田元所長は、何を考え、どう判断していたのか。
政府の事故調査・検証委員会が聴取した、延べ28時間、400ページに及ぶ証言記録が明らかになりました。
吉田元所長の証言記録が明らかに (既に記事は削除されているので魚拓のリンク)

NHKが報道するなら真実だろうと思う人は多い(それにそれは真実だったしね)。NHKの記事は朝日新聞を直接批判するものではなかった。しかし、朝日新聞を批判し続けた産経新聞の記事を裏付ける内容だった。
ここに来て世論の流れは決定づけられた。これによって朝日新聞の判断の余地はますます少なくなったと思う。
調書のリークは続き、8月30日には読売新聞と共同通信も同様の報道を行うようになった。
 

最後のとどめは慰安婦問題の池上氏の掲載を断ったこと。9月2日、文春がすっぱ抜く

朝日新聞は確かに追い詰められただろうが、ただここまでの動きは、安倍政権の動きが垣間見られる動きでもあった。だから私はまだ朝日新聞の危機脱出手段はあるかもしれないと思っていた。
そのわずかな可能性を完全に打ち砕いたのは、慰安婦問題に関する池上氏の記事の掲載を断ったことだ。それは安倍政権の動きでもなく、同じジャーナリストがジャーナリストとしての良心に基づき書いた記事を、朝日新聞自ら否定したという点で決定的だった。
9月2日の週刊文春のこの記事だ。


池上彰氏が原稿掲載拒否で朝日新聞の連載中止を申し入れ (週刊文春) - Yahoo!ニュース

実は朝日新聞が池上氏のコラム掲載を断ったことを週刊文春が報道した時、私はそれは文春の飛ばしだと思った。
というのは、私は朝日新聞には問題が多いとはわかっていたが、さすがにそこまで愚かとは認識していなかったからだ。報道機関として論外の判断をすることは、この窮状を更に窮状に追い込むことがわかっていたからだ。
しかし、それは本当だった。
それはもう朝日新聞は組織を守ることに汲々とした既に報道機関ではない何かしょうもないモノになってしまったことを意味していた。
この時点で朝日新聞は詰んでいた。
 

9月4日、結局、朝日新聞は池上氏のコラムを掲載した

しかも、結局後日掲載した池上氏のコラムは、今となっては穏当としか思えないものだった。そのときの朝日新聞がもう正常な判断ができない状態であった傍証になるだろう。
9月4日に掲載された池上氏のコラムもリンクをはっておこうと思う。


(池上彰の新聞ななめ読み)慰安婦報道検証:朝日新聞デジタル

 

詰んでしまった企業は謝罪と第三者委員会の設置に追い込まれる

その流れを作ったのは、他でもない朝日新聞を含む日本のマスコミだよと指摘しておきたい。
だから、池上氏の掲載を断ったという文春の記事が出た9月2日には、朝日新聞は謝罪と第三者委員会の設置を行なうことになるのは確実だと私は予測した。次のコメはその証拠ということであげておこうと思う。*1

朝日はダメージコントロールに失敗したね。マスコミは一般企業の不正を批判する以上自社に非がある場合謝罪は必須。一般企業の不正と同様に他紙もこぞって批判するだろうし朝日はいずれ謝罪に追い込まれると予想する - the_sun_also_rises のコメント / はてなブックマーク

実際、その後、朝日新聞は他の新聞社や週刊誌、ネットなどで完全な袋叩き状態になっていった。
袋叩きも朝日新聞を含むマスコミがこれまで作り上げた日本の慣習だ。そして何の紛れ*2もなく、詰将棋のように朝日新聞を謝罪へと追い詰めていった。
そして、今日(9月11日)の謝罪会見に至ったのだとみている。
また同じ日に、政府は吉田調書など原発事故の聞き取り調査を公開した。

政府事故調査委員会ヒアリング記録 - 内閣官房

 

私の見方

私は現実主義者だ。現実主義を信奉する以上、自分の意見とは異なる様々な意見がある状態を受け入れる。それが現実だからだ。現実主義者にとって意見の多様性は好ましい状態だと強く言いたい。
だから、政府を批判的に見て報道するジャーナリズムを否定するどころか必要な存在だと思っている。
否定するのは、ジャーナリズムの名を借りた、誤報さえ目的のためには許されると考える似非報道機関だ。
朝日新聞はどちらだったのだろうか?
たぶんほとんどの記者は、ジャーナリストの挟持を持つよき記者であろうと思う。もう若くして亡くなってしまったのだが、私の中学時代の先輩はそういう真のジャーナリストとしての朝日新聞の記者だった。*3
ごく一部の、しかし朝日新聞の内部の自由な意見表明を圧迫する政治的な人物と、それを評価し昇進させてしまう社内風土を切り捨ててほしいと思う。それが本当にできるのかは、社長が作ると約束した第三者委員会の勧告の内容と、それを受けてどう社内を改革しようとしているのかという朝日新聞の経営陣の決断にかかっている。私はこれまでの朝日新聞を好ましくない存在だと思っていた。そういった批判者として、それがきちんとできるのか辛辣に見届けたいと思う。
その観点で今回の木村伊量社長の謝罪は評価するし、一方それを貫徹できるかは相当懐疑的に見ている。
 

今日ぐらいは祝杯を。でもほどほどに。

思い出

私は、物心がついてから父親がずっととっていた朝日新聞を読み育ってきた。社会に出ても朝日新聞をとり続けた。読み続けたのは30年余にわたる。だが96年だったと思うが北朝鮮による日本人拉致がほぼ確からしいとわかった時、朝日新聞は社説でそれでも日本に問題があると主張した。私はそれを読んで憤慨し(だってそれは今そこにある人権侵害だったからだ!)、朝日新聞をとるのを即座に止め、1週間後読売新聞をとることにした。そして今に至っている。北朝鮮による拉致という生存権(私は人権の中でも生存権を最重視している。だって私は人に殺されたり命の脅迫をされたりしたくないからだ)を脅かす行為に一番批判的なのは保守勢力だった。だから私はその時点でリベラルを止め保守の仲間入りをした。
2008年には60年以上朝日新聞を読み続けた父親が朝日新聞の社説をよんでムカムカすると言ってきたので、読売、産経、朝日、毎日で意見のわかれる問題の社説をコピーし読ませた。結局、父親は朝日新聞を止め、読売新聞に変えた。
朝日新聞は政治的過ぎる。
さすがに最近は北朝鮮を擁護する論調はなくなってきたが、韓国のナショナリズムに寄り添う記事は依然として多いと思う。
人権や人道を重視するリベラルと、韓国のナショナリズムに寄り添うことは、全く異なることだ。その差をわからない限り、私は朝日新聞を批判し続ける。
 

祝杯も飲み過ぎると二日酔いする

ついにあの高慢ちきな朝日新聞が陥落し、社長が謝罪会見を行った。実に気分がいい。ビールがうまい。
でも、いくら気分がいいからといって、祝杯を何杯も飲めば二日酔いにもなる。

右派のみんな!
今日は気分いいものな。乾杯しようぜ!
でもそれは今日限りにしよう。気分がいいからといって、なんでもできると思ったら必ずしっぺ返しがある。朝日新聞は屈辱に耐えようとしている。調子にのって叩き続ければ、今度は反撃にくるだろう。
それよりも本当に朝日新聞が変わるのか、見極めるのが重要だ。だから第三者委員会の報告を待とう。
第三者委員会の報告内容が不十分ならば、今度は国会での証人喚問という手がうてる。

私たち右派にもいろんな考えの人がいるが、共通の部分は、国益を守ることを重視する姿勢だと思う。
でもリベラルな人々は私たちとは違う考えを持っている。
これからの論争は、相手も強くなり骨が折れることになる。がんばらないといけない。浮かれすぎてはいけない。
 


追記

朝日新聞の謝罪が足りないという考えの人も多いと思うが、誤報の追及を行いすぎるとそれは他紙の報道にも影響する。それは報道の抑制を生む結果となって、結局左右の別を問わず私たち国民が不利益を被ると思う。
だから私は朝日新聞がやると言ったことが本当にできるのか、少し時間を与えるべきだと思っている。第三者委員会の人選等で問題があれば、それがわかった時点で批判をするというスタンスだ。(9/12 12:34追記)
 

*1:厳密には文春の記事を読んだ9/3の朝書いたコメント

*2:将棋用語 https://www.shogitown.com/tume/guide/dic-ma.html

*3:彼は医療機関の不正の報道に人生を賭けた