日はまた昇る

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北朝鮮の核実験で風雲急を告げる東アジア情勢

核実験を強行した北朝鮮

やはり北朝鮮は核実験を強行した。
まだ確定的な情報は流れていないが、日本、アメリカ、韓国からの報道を総合するとほぼ間違いないだろう。*1
北朝鮮自身が、「北朝鮮“地下核実験成功”と発表」した。
北朝鮮の核実験は、許しがたい行動であり強く非難する。

(補足)
私はこのブログの「北朝鮮の核実験は東アジアの平和と安定を破壊する」という1月27日の記事に書いた通り、北朝鮮が(1月27日から)数週間以内に核実験を行うと考えていた。
そこでこの投稿は事前に準備していた。それに2月12日の動向を踏まえ若干修正した上で公開した。


北朝鮮は、本気で「核兵器」を作っている。

今となっては、さすがに北朝鮮の本気を疑う人はいないだろう。
ところで「核兵器」というのは核爆弾運搬装置が両方必要とされている。だから最初に北朝鮮は運搬装置の実験として弾道ミサイル実験を行った。それに成功したので、次は弾道ミサイルに搭載できるよう核爆弾の小型化を企図して核実験を行ったと思われる。この行動は、軍事的に見るととても合理的な行動だ。

もう一度指摘したい。北朝鮮は本気だ。本気というのは一切の迷いがないということだ。

核爆弾は、原料となる核分裂物質を必要とする。ウラン235プルトニウム239が必要になる。ウラン235は、天然ウランに0.7%しか含まれていない。これを集め濃縮しなくてはならない。プルトニウム239は、ウランを原子炉で核反応させ同位体を含むプルトニウムをつくった後、プルトニウム239を取り出さなければならない。兵器級の核分裂物質の入手は、一朝一夕にできるものではない。
飢饉により100万人を超す餓死者を出そうと、他国から非難され国際的に孤立しようと、非難が集まれば「ミサイル発射のモラトリアム」に合意してみせる*2など国際世論を騙しながら、しかし全くそれらに影響されることなく、ただひたすらに核開発にまい進してきた。

一切の迷いもなく。


北朝鮮は合理的な判断を行っている。但し独裁体制維持の範囲内で。

北朝鮮にとってみると、これまでの20年間、「ミサイル発射のモラトリアム」のような中途半端で検証できない、実質的には全く譲歩とはいえない形式的な譲歩を行うことで、国際社会、特に中国や韓国から援助を得てきた。
確かに、核実験と弾道ミサイル発射によって、国連安保理決議による制裁は行われた。しかし、北朝鮮の主な貿易国は中国しかない。中国との貿易は、ほとんど制裁による影響をうけず、昨年(2012年)には中朝間の貿易額は過去最高を更新した*3。そして時には、韓国の時の政権が太陽政策を掲げ、何も譲歩せずとも援助してくれた。
北朝鮮にとってみると、核開発での不利益はほとんどなく利益のみある状態だったと考えていい。
私たち日本人からすると、北朝鮮は「自ら孤立を選ぶ不合理な判断をする国」とみえるかもしれない。しかしそれは間違いだ。北朝鮮は冷徹に国際関係を分析し、極めて合理的に国益を追求している。アメリカと中国という大国の思惑の差を、冷徹に利用している。
北朝鮮の国民にとっては、中国やベトナムのように改革開放し生活水準を上げる方がずっとましな方策だ。しかし北朝鮮の最大の目的は金一族による支配を続けることそのものにある。
国民は生かさず殺さず。北朝鮮は21世紀においても封建体制の時と同じように、国民の犠牲を厭わず体制維持に徹しつつ、その前提の上で最大の国益を追求している。


北朝鮮は核開発を止めはしない。

先日、北朝鮮の金正日の遺訓を全文入手したとの報道があった。以下に引用する。

金総書記は遺訓で「核兵器と長距離ミサイル、生物化学兵器を絶えず発展させ十分に保有せよ」と指示しており、政府は北朝鮮の核実験強行の動きはこの遺訓を実現するためのものと分析しているという。
(中略)
遺訓は北朝鮮の非核化を目指す6カ国協議について「われわれの核をなくす会議ではなく、核を認めさせ核保有を公式化する会議にせよ」としている。
出典:韓国、金総書記の遺訓全文入手か 「核兵器発展させ保有せよ」

私たちは、6カ国協議などの交渉で北朝鮮が核開発を中止すると期待すべきでない。金正日時代はもとより、金正恩時代になってもその遺訓を守り、ひたすら核開発にまい進しているのが北朝鮮の真の姿だ。*4

北朝鮮には、交渉も、援助も、経済制裁も、効果がなかった。

それでは、日本は北朝鮮の核保有を甘んじて認めるべきなのか? 日本の安全保障上そんなことを容認できるわけはない。当然「否」だ。
しかし八方塞がりに見える今、日本はどうすればよいのだろうか?
そこで、関係各国の動きを予想しながら、日本のとるべき行動を考えてみたい。


アメリカ:強い行動とは何かが問われる。

2013年1月22日に決議された国連安保理決議第2087号では、北朝鮮が更なるミサイル発射実験や核実験を行った場合には、安保理として「重大な行動」を取ると警告している。

“19. Affirms that it shall keep the DPRK’s actions under continuous review and is prepared to strengthen, modify, suspend or lift the measures as may be needed in light of the DPRK’s compliance, and, in this regard, expresses its determination to take significant action in the event of a further DPRK launch or nuclear test;
出典:SECURITY COUNCIL CONDEMNS USE OF BALLISTIC MISSILE TECHNOLOGY IN LAUNCH

この項を入れさせたのは、アメリカだろう。当然、次を見据えての外交交渉だったと思われる。
それでは「重大な行動」とは何なのだろうか?
それはいずれわかってくることだが、傍証はある。

1機2000億円と言われ、アメリカも20機しか保有していないステルス爆撃機B-2が、グアムに派遣されている。また最新鋭のステルス戦闘機F-22も、沖縄(嘉手納基地)に派遣されている。これらはアメリカ軍の虎の子の戦力だ。特にB-2はよほどのことがない限り飛来してこない。B-2には、ピンポイント爆撃ができる通常爆弾を16発、あるいは地中の目標を破壊するバンカーバスター爆弾を8発搭載できる。
アメリカは、「重大な行動」として、軍事攻撃も選択肢のひとつとしているのは、間違いないと思う。


韓国:日米と歩調を合わせる。

韓国は、基本的に日米と歩調を合わせるだろう。

韓国が来月、安保理の議長国となることについて、キム国連大使は「北朝鮮などの問題について日本とも連携を強化したい」と述べ、現在安保理のメンバーではない日本とも、緊密に連絡を取る考えを示しました。
出典:韓国国連大使 北朝鮮に対抗措置を示唆

北朝鮮の核実験に対する対応の件では、韓国を当てにしていい。


中国:2つの選択肢。北朝鮮をかばうか、北朝鮮を制裁するか?

中国の対応は、2つの選択肢があると考える。
今まで通り北朝鮮をかばうか、それとも今回は自ら北朝鮮へ制裁するかだ。
核実験の実行前に書いた投稿「北朝鮮の核実験は東アジアの平和と安定を破壊する」にはもう少し詳しく書いているが、今回はさすがに中国も北朝鮮をかばうことで失う国益が大きくなってきているとみる。
今までであれば、中国が北朝鮮を制裁する可能性など一笑に付す程度のものだったと思うが、今回は検討に値する程度には可能性があると考える。

当然、日本にとっても、アメリカにとっても、中国が北朝鮮を制裁するのは歓迎だ。*5
であれば、日本とアメリカは、中国が北朝鮮への制裁を行なうよう、中国を日米の交渉と行動で追い込むことはできないだろうか?
中国の本音が北朝鮮に対する制裁は行いたくないということであるのは明白だ。しかし、中国に制裁を行わせるのを最初から無理だとあきらめず、その観点でアメリカの軍事攻撃オプションをもう一度吟味してみよう。


アメリカによる軍事攻撃は中国の大戦略を阻害する。

イラク戦争でのアメリカの攻撃方法から考えると、もしアメリカが本当に北朝鮮に対して軍事攻撃をするならば、それは、レーダーサイト、対空ミサイル、空軍基地などに対する攻撃から始められると予想する。韓国、日本、グアムの米空軍基地から出撃する航空機と、航空母艦から出撃する航空機による空爆。それから艦隊と潜水艦から発射される巡航ミサイルによる攻撃などだ。
例えば潜水艦が黄海から巡航ミサイル攻撃を行う場合、巡航ミサイルの航続距離が1500km以上に及ぶことを考えると、それは米軍がいつでも北京を攻撃できるという事実を中国に突きつけることにもなる。特に改オハイオ級巡航ミサイル原子力潜水艦は、1隻で154発もの巡航ミサイルを搭載している。大きな脅威になるはずだ。

北朝鮮に対するアメリカの攻撃は、アメリカの軍事力に対抗し中国本土への接近阻止を達成しようとする中国の大戦略*6を阻害することになる。
中国としては、絶対に容認できないことだ。


アメリカは本気で軍事攻撃を考えているか。

孫子に、「辭卑而益備者進也、辭疆而進驅者退也」*7(ことばつきがへりくだっていて守備を増強しているようなのは進撃の準備である。ことばつきが強硬で進攻してくるようなのは退却の準備であるという意)という節がある。
アメリカがわざとB-2の配備をリークし、北朝鮮に対し「核実験を行えば重大な行動を取る」と警告するのは、軍事攻撃したくないという本音の裏返しだろう。また韓国にしても、第二次朝鮮戦争の引き金になりかねない軍事攻撃は躊躇するだろう。

アメリカの本音は、北朝鮮に対する軍事攻撃は行いたくないということなのだろうが、それではアメリカによる軍事攻撃の可能性は全くないのだろうか?
4点考慮すべきことがある。

  • このまま北朝鮮の核開発を放置すると、いずれ核兵器の実戦配備が行われるのは明白だ。そして時間が経つにつれ北朝鮮の核爆弾の保有数は増えミサイルが増備されていく。
  • その結果、アメリカの威信とパワーが落ちたことを世界に印象づける。中国の台頭という歴史的転換点でもあることから、様々な国際問題に対するアメリカの発言力が落ちるだろう。
  • 石油権益への影響の観点などから、世界的には北朝鮮の核開発よりイランの核開発の方が大きな脅威とされているが、この実験の成果がイランに流れると、イランの核開発の脅威は飛躍的に高まることになる。
  • 当事者である日本・韓国とアメリカとの同盟関係が揺らぐ。それはアジア全体に波及し、アジアの安定が損なわれることに繋がりかねない。

北朝鮮への武力制裁は今が最後のチャンスともいえる。アメリカは、アメリカで苦しい選択肢を突きつけられている。
本音は軍事攻撃したくなくとも、アメリカは「軍事攻撃する意思も力もない」と見切られるとアメリカのパワーは大きく削がれることになる。


舞台は、国連安保理へ。アメリカと中国のチキンゲームが始まる。

国際世論

国際世論は、間違いなく「北朝鮮の核実験に対する非難」が大勢を占めることになる。
そして、安保理決議第2087号の警告を敢然と無視した北朝鮮に対し、第2087号でいう「重大な行動」をとるべきだという日米韓の要求に対して、容認する流れができると思う。

アメリカの動き

アメリカは、「重大な行動」として、国連憲章第7章第42条に基づく武力制裁を求めると予想する。本音はやりたくなくともここで弱腰になるのは何らアメリカの国益にならないからだ。
そして日本、韓国、グアムの米軍基地に増備を行い戦力を整えていく。それが北朝鮮のみならず中国への圧力になる。
アメリカは本気で武力制裁を行おうとしていると中国に思わせれば、それは有力な外交カードになる。アメリカにとって、安保理の議論は有利に推移するとみる。
狙いは、中国に北朝鮮に対する実効ある制裁を行わせることだ。中国にリスクを負わせ、北朝鮮へ圧力をかけさせる。これがアメリカにとってベストシナリオに思える。ただし中国の制裁がうわべだけのものに終わるなど不十分な時に備えて、アメリカの制裁を妨げないようにしておきたいだろう。

中国の動き

中国の本音は、北朝鮮への制裁は行いたくないだと思う。一方で武力制裁の名のもとに北朝鮮の領土領空をアメリカ軍の自由にさせることは絶対に阻止したい。しかし言うことをきかない北朝鮮を放置すると、これはこれで中国の威信にかかわる。もし北朝鮮への制裁を織り込んだ安保理決議に拒否権を使えば国際的に孤立し非難を招くだろう。
中国も苦しい選択を強いられている。アメリカが強硬に出ると、選択肢が更に限られていく。中国は、アメリカが本音ではアメリカ軍による武力制裁を望んでいないと看過してはいるだろうが、だからといって「やれるならやってみろ」と武力制裁を許容する動きもとれない。中国は対応に苦慮すると思う。
だから中国は、安保理で議論が行われている間に、北朝鮮から何らかの譲歩を得て、決議そのものを行わないで済む方策を探るのではないかと予想する。
そのためにも、中国は北朝鮮への圧力と対話を急ぐはずだ。
まず、通関検査事務を強化し貿易量を減らす。これは既に実施しているようだが貿易が事実上ストップするぐらいまで徹底するのではないか。
そして特使を送り半分恫喝混じりでも交渉を行うだろう。その時の圧力を増すために、中国軍の陸軍師団を国境沿いに配置するかもしれない。*8


日本はどうすべきか。

基本は「北朝鮮を強く非難し、中国へ圧力をかけながら、考えうる最悪に備えよ」だと思う。その観点で次のような対応をとるべきと考える。

  • 日本は、アメリカ・韓国と歩調を合わせて、世界が一つになって核の脅威と対決する国際世論を醸成し、北朝鮮への非難を強め、武力制裁を含む国連安保理決議を採決するよう関係国に働きかけること。
  • 中国に対して北朝鮮への制裁を行うよう働きかけること。
  • 日本自身は、憲法の制約で武力制裁ができない。そのため、その代替となる北朝鮮に対する独自の制裁を準備しておくこと。
  • 安保理が武力制裁決議を行った場合、日本周辺がいわゆる有事と呼ばれる状況になる可能性もある。それに対する体制、特に有事法制を整えておくこと。
  • 憲法第9条などの制約を順守しつつも、自衛隊ができる行動、例えば日本国内でテロが発生した場合の対応策などをリストアップしておくこと。

私たちは、北朝鮮が核兵器を保有するこということがNPT体制を大きく揺るがすことだということを、忘れてはいけない。
NPT体制が崩れるとタガが外れたように、世界中で核開発競争が起こるかもしれない。世界中の国が核兵器を保有する世界は、極めて不安定で危険なものであると認識しておきたい。そんな世界にしてはならない。
北朝鮮に対する安易な譲歩は、危機を増幅するだけだと心したい。




(付録)国際関係論の用語を使って要約

上記の分析は、一言で言えば、オフェンシブ・リアリズムで言う「バック・パッシング」*9をアメリカ(日本・韓国)は中国に対し仕掛けるという分析だ。
しかし、中国へのバック・パッシングに失敗したケース*10に備え、アメリカは「バランシング」*11も行うと考える。アメリカは二重構えでこのケースに臨むと思う。

大国政治の悲劇 米中は必ず衝突する!

大国政治の悲劇 米中は必ず衝突する!



(脚注)

*1:首相官邸での官房長官記者会見 http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg7580.htmlなど

*2:http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/abd/un_k1695.html

*3:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130128/k10015111851000.html

*4:遺訓が本物でない可能性もあるが、これまでの金正恩政権の行動は、この遺訓通りである点を私は重視している。

*5:韓国世論はやや複雑な反応を見せるのではないかと感じるが、概ね歓迎すると思う。

*6:接近阻止領域拒否 A2/AD http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8E%A5%E8%BF%91%E9%98%BB%E6%AD%A2%E3%83%BB%E9%A0%98%E5%9F%9F%E6%8B%92%E5%90%A6

*7:行軍篇第九の七 新訂孫子岩波文庫)p121

*8:過去にも、金正日の入院や死去の際、中国は陸軍師団を国境沿いに配置したことがあるといわれる。

*9:バック・パッシングを一言で説明すると、抑止の責任を(中国へ)肩代わりさせる戦略のこと。

*10:中国がバックパッサーにならないというケースとバックパッサーになっても能力が不足して抑止に失敗するケースの両方がある

*11:バランシングについての説明は「海国防衛ジャーナル」のこの記事(http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50316882.html)がわかりやすい。

中国海軍フリゲートのロックオンその後

中国は事実を否定

中国は、1月19日と1月30日の火器管制レーダー照射(ロックオン)について、そういった事実はないと完全に否定した。

中国国防省は8日、中国海軍艦艇が海上自衛隊艦艇に火器管制レーダーを照射した問題で、日本が照射を受けたとする1月30日と、照射された疑いがあるとする同19日の両日とも、中国海軍の艦艇は火器管制レーダーを「使用していない」としている。
火器管制レーダー、使用せず…中国国防省が声明

上記は、中国国防部の見解だが、日本の防衛省とは異なり、中国国防部は中国人民解放軍に対する指揮権は有していない。中国人民解放軍は、あくまで中国共産党の軍隊であり、政府機関である中国国防部は直接人民解放軍を指揮することはない。
とはいえ、その声明は、中国政府の正式見解であるのは疑いもない。上記の報道があった後、中国外交部も同じく事実を否定する声明を発表した。*1


日本は再反論へ

中国は日本が捏造したと主張しているが、日本国内でこの言を信じる人は、ごく僅かな反日勢力を除けばほとんどいないだろう。中国の言を信じるならば、「日本の海上自衛隊は、火器管制レーダーと通常の索敵レーダーの区別もつかないボンクラ海軍」ということになる。
日本を貶めたい人はそうに違いないと言うかもしれないが、米軍その他他国軍との訓練の実績や評判、艦艇の能力、観艦式などで垣間見える乗員の練度などを考えれば、明確に否定できる。また日本は今、中国との関係修復を図っていたところだし、尖閣の件がエスカレートするのは施政権を維持している日本にとって何ら利益はない。捏造を行なってまで中国との対立を煽る外交上の利益はない。
以上を総合すると、中国の方が虚偽の声明を発表したのだと考えていいだろう。

岸田文雄外相は8日の記者会見で、中国軍艦が海上自衛隊護衛艦に射撃用レーダーを照射した問題について中国国防省が「日本側が対外公表した事案の内容は事実に合致しない」と伝えてきたことを明らかにした。中国側は射撃用レーダーの使用そのものを否定しており、日本側は「防衛省で慎重かつ詳細な分析を行った結果だ。説明はまったく受け入れられない」と反論した。
日本は中国に反論 射撃レーダー「未使用」を再否定

岸田外相は即座に中国に対し反論した。当然だと思う。


中国はなぜこんな見え透いたウソをつくのか?

日本の海上自衛隊は、火器管制レーダーを照射された証拠を持っていると見ていい。ただし、これを公表するのは、日本の防衛機密を公にすることになる。そのため証拠を簡単には外国へ示すことはできない。
唯一、日本が情報を共有できる国は、アメリカだけだ。

パネッタ米国防長官は6日、中国海軍の艦船が海上自衛隊護衛艦などに火器管制レーダーを照射した問題に関連して「中国が太平洋の平和と繁栄に自国の利益を見いだしたいのであれば、他国を威嚇したり、さらなる領土を求めて領有権問題を起こしたりすべきではない」と述べ、中国政府に対して挑発行為を中止するよう異例の強い調子で警告した。
レーダー照射:米、中国に異例の警告「他国を威嚇するな」

カーニー米大統領報道官は7日の記者会見で、中国海軍艦艇による海上自衛隊艦艇などへのレーダー照射と、ロシア軍機が北海道上空を領空侵犯したことについて、「地域の同盟国と共に状況を監視し、これに関与していく」と述べた。
「状況を監視し関与していく」 中国レーダー照射とロ軍機領空侵犯で米大統領報道官

この件で、アメリカは、中国が火器管制レーダーを使用したことに疑問を持っていないことがわかる。
中国も、日本だけでなく日本の同盟国たるアメリカの動向は注意深く見ている。
しかしだからといって、火器管制レーダーの照射を認めると、その行動の正当性を主張しなければならない。それは真っ向からアメリカの権益とぶつかる。
証拠を日本は公開できないのだろうから、ここは完全否定で乗り切るしかない、そう中国は考えたのだろう。

2/12追記 アメリカの反応

国務省のヌランド報道官は11日の記者会見で、中国海軍艦船が海上自衛隊護衛艦に射撃管制用レーダーを照射した問題で、米国は(照射が)実際にあったと「確信している」と述べ、日本政府の発表を支持する姿勢を示した。
中国艦船が照射と米も「確信」 日本発表を全面支持

当然の反応なのだが、アメリカも明確に上記の発表を行った。
証拠の補足として念のため追記した。


この中国の発言から推測できること

火器管制レーダーを照射する行動はさすがにまずいと思っている

中国といえども、国際世論は見極めている。火器管制レーダーの照射は、国連憲章に違反すると非難されても反論ができない。

すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない
国連憲章第1章第2条第4項

それに対して強弁すればするほど、国際関係で中国は孤立していくだろう。

中国共産党中央は火器管制レーダー照射を事前に承知していなかった

もし事前に承知しており、火器管制レーダー照射の許可を与えていたのであれば、その後の進展を考慮していたはずだ。ところが日本がこの問題を公表して2日、中国は正式な見解を発表できなかった。そして出てきたのは、完全否定だった。
ここから推測できることは、中国は虚をつかれたと思われる。
もっとも現場の独行とも思えないのだが、火器管制レーダーの照射の許可は人民解放軍の中だけで決断された可能性が高いと考える。
ここにきて、日本のジャーナリストからも、軍の独行論を採るレポートがいくつか出てきている。

火器管制レーダー照射で中国は得たものはない

中国国防部によるレーダー照射否定声明は、一方的に日本の非を非難するものであった。

需要指出的是,近年来,日方舰机经常对中国海军舰机长时间、近距离跟踪监视,是造成中日海空安全问题的根源,中方就此多次向日方提出了交涉。
(近年、日本の艦船・航空機が経常的に中国海軍艦艇と航空機に長時間、近距離で監視を続けているのが、中国海軍、空軍の安全に関する根本的な問題であると、中国は日本に対し、繰り返し提示していたことは指摘されなければならない)
日本舰机近距离跟踪监视是造成中日海空安全问题的根源

しかし、この声明には、日本に対する非難はあっても、アメリカに対しては全く触れられていない。
中国は明らかに苛立っているようだ。その背景には、日米同盟が強化され、アメリカは明確に中国に対し警告を発している点があるのだろう。
少なくとも、中国がこの火器管制レーダー照射で得た国益は全くないと言える。


火器管制レーダー照射は当分起こらないと予測

中国は、現実的な外交を行う。
この一連の事件で、中国の国益は失われることはあっても、得るものは全くなかった。
日米同盟は強化され、日本の国内世論は更に強硬になっている。
中国の現状から鑑みると、簡単に折れるわけにはいかないだろうが、軍事挑発を頻発させることの愚は今回の事件で認識したと思われる。
当分、少なくとも火器管制レーダー照射というあからさまな軍事挑発は起こらないと思う。

日本は、中国に再発防止策を求める一方、緊急時に話し合いが持てるよう、日本の自衛隊と中国人民解放軍との間のホットライン、または日本の防衛省と中国共産党中央軍事委員会とのホットラインの創設を求めるべきだ。
それに応じない場合、国連などでも中国に対して訴えていくべきだ。


(追記)安倍首相の謝罪要求を支持する

安倍首相は、次のように応じた。

安倍晋三首相は8日夜、BSフジの番組で、中国海軍艦艇による海上自衛隊護衛艦への火器管制レーダー照射について「中国は(事実関係を)認め、謝罪して、再発防止に努めてほしい」と述べ、謝罪を要求した。
 中国政府が日本の発表を「完全な捏造(ねつぞう)」と主張したことに対し、首相は「全く認めるわけにはいかない」と批判。その根拠について「レーダー(の装置)がこちらを向いているかも含め、目視でも写真などでも確認している。慎重に分析した結果、間違いない」と強調した。
 一方で首相は「中国がやっている情報戦に応じるつもりはない」と表明。その上で「こういうところから(対立が)エスカレートしてはいけない。中国自身が国際社会で信用を失うことになる」と述べ、中国に冷静な対応を求めた。
安倍首相、中国に謝罪要求=レーダー照射「写真でも確認」

強く要求すべきところは要求し、一方でエスカレートを望まないというメッセージを投げている。
中国はこれをうけて軟化することも、謝罪することもないだろうが、そしてそれを安倍首相もわかっているだろうが、こういった是々非々の応酬は、中国指導層にも強い印象を残すだろう。
この発言を支持する。



(脚注)

*1:http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0208&f=politics_0208_001.shtml

中国海軍のフリゲートの火器管制レーダー照射事件に対する所感

事件に対する報道

小野寺防衛大臣は緊急に記者会見し、東シナ海で先月30日、中国海軍のフリゲート艦が海上自衛隊護衛艦に射撃管制用のレーダーを照射していたことを明らかにしました。小野寺防衛大臣は「大変異常なことであり、一歩間違えると、危険な状況に陥ることになると認識している」と述べ、外務省が中国側に抗議したことを明らかにしました。
出典:中国艦船が海自護衛艦にレーダー照射

続報も出ているが、火器管制レーダーを数分という長時間照射することは、いつでも実際に武器を使える状態ということであり、とても危険な行為だ。
西部劇に例えると、2人のガンマンがお互いに銃を向け合っている中、撃鉄を上げる行為と言える。現場には相当の緊張が走っただろう。


事件の整理

中国海軍 :ジャンウェイⅡ級フリゲート
海上自衛隊護衛艦ゆうだち
事件の概要:ジャンウェイⅡ級のフリゲート(艦名不明)が「ゆうだち」に向け射撃管制用のレーダーを数分照射した。
両艦の距離:約3000m
出典:大臣臨時会見概要|防衛省

産経新聞には、事件が起こった位置関係について、もう少し踏み込んだ記事が載っている。

尖閣周辺の日本領海(22キロ)には海保巡視船が配置され、領海の外側に設定された接続水域(44キロ)から領海内に侵入してくる中国公船を警戒している。さらに、その北方で尖閣から約112~128キロ離れた海域には中国海軍のジャンウェイ級やジャンカイ級フリゲート艦など2隻が常時展開しており、それを海自艦艇がマークしている。
挑発さらにエスカレート 9月以降、海軍と海自の対峙も常態化

約112~128キロというのは、配置された中国海軍の艦艇の持つ対艦ミサイル(YJ-82)のレンジ内に尖閣がある距離であり、これは尖閣に突入させている海監などの船舶をカバー(援護)していると考えられる。その中国海軍の艦艇を海上自衛隊護衛艦が監視している状況が続いているという記事だ。
軍事的にみると日中両方とも妥当な艦艇配置を行なっていると思う。ただし、対峙する両国の軍艦が近接するという状況が続くわけであり、現場の艦船の艦長、乗組員は、プロフェッショナルな軍人としての強い自制心が求められる。


中国の意図、2つの解釈

中国ウォッチャーならば、この事件を知るとすぐに、「それが中国共産党の中央から指示されたものか」「現場の独断か」という点が気になるだろう。

中国の国営新華社(電子版)は5日夜、日本メディアの速報を紹介する形で事実関係のみを伝えた。ただ中国政府は同日夜現在、公式コメントを発表していない。危険な挑発の目的を巡っては2つの見方が浮上している。
1つ目が共産党指導部が軍に指示を出し、尖閣諸島を巡る対立をあおる狙いだ。(中略)
もう1つの見方が軍の現場の独走だ。
出典:中国海軍レーダー照射、党の指示か 現場の独走か

上記の記事は妥当な報道だと思う。一方、毎日新聞のこの記事のように、現時点で一つの見方に偏ってこの事件を見るのは早計だし、中国の真の意図を見誤る危険もある。慎重に分析をすすめるべきだろう。
少なくとも、数分という長時間にわたって火器管制レーダーを照射するのは極めて異常な事態であり、一歩間違うと交戦に発展しかねかったという状況は十分にふまえておきたい。


やっかいで重い現実

ただし、今回の事件が、党中央の指示であろうと、現場の独断であろうと日本にとってはやっかいで重い現実が見えてくる。

党中央の指示の場合

中国は、一歩間違えば戦争になりかねない挑発を行う国だということだ。
こういった国と外交交渉を行う場合、常に戦争勃発の危険を念頭において行わなければならない。挑発にのってはいけないが、安易な譲歩も危機を生む。恫喝が効果的だと思えば、将来それを多用するだろうからだ。
日本は、冷静で狡猾な外交を展開する必要がある。臆せず力まずだ。

現場の独断の場合

日本もそうだが、民主主義国の軍隊は「シビリアンコントロール」が効いている。
しかし中国の場合、人民解放軍中国共産党の軍であり、中国政府の指揮命令系統とは異なる指揮命令系統の組織である点は留意しておかねばならない。
現場の独断でこの事件が起こったのなら、近年強力な武装を手に入れてきた中国海軍の末端が、党中央の意向を無視して独断で事を行うかもしれないという状況だということになる。
軍の暴走による戦争。あまり考えたくもない将来が見えてくる。


日本は冷静に。まず見極めを。

現場の独断であれば、今回の日本政府の抗議により、ひとまずこのような行動は止む可能性が高い。軍の末端がコントロールできない状況は、中国共産党中央にとっても悪夢だからだ。
ひとまずは経緯をみたい。

まだ投稿を書ききれていないが、尖閣問題については、私なりに分析を続けている。
その結果は、「中国は挑発行動を止めず、軍事的な挑発をエスカレートする」だった。
ただし、そこに北朝鮮の核実験問題が浮上してきた。そして、安保理で中国はアメリカに譲歩した点に注目している。
私は、北朝鮮の核実験問題の方が、中国にとって尖閣問題より喫緊で重要度の高い問題だと考えている。北朝鮮の核実験問題は、アメリカと直接対峙する問題であり、舞台が国連安保理であること、核兵器拡散は世界からの注目が大きいこと*1がその理由だ。
そして中国はなにか外交上の対立が起こると、異なる二国と異なる内容で対立することを避ける傾向がある。そのため、一時的に尖閣問題を棚上げしてくるかもしれないと、尖閣問題への波及の可能性を考えていた。
しかし、この事件が党中央の指示ならば、中国は北朝鮮問題と尖閣問題は切り離して考えているということになる。
それは見極めたい。

この軍事的な挑発が続かないことを願うが、日本は慌てず中国に対する対処策を考えるべきだろう。
安易な妥協も、挑発に挑発を返すような猪突猛進な策も、日本の国益を損なうと言える。

※ブコメを見て確かに「中国は尖閣問題より北朝鮮の核実験問題を重視する」と私が考えた根拠があまり書かれていなくて薄いなと思いましたので、根拠を追記しました。

*1:領土問題は二国間問題であり他国は関わりたくない

北朝鮮の核実験は東アジアの平和と安定を破壊する

北朝鮮の核実験は秒読み状態

いよいよ北朝鮮による3回めの核実験が間近になったと思われる。

ラヂオプレス(RP)によると、北朝鮮の朝鮮中央放送は27日、金正恩(キムジョンウン)第1書記が、事実上の長距離弾道ミサイル発射を巡る国連安全保障理事会の制裁決議への対応を協議するため、「国家安全・対外部門幹部協議会」を開催したと報じた。
この会合で正恩氏は「強度の高い国家的重大措置を講じるという断固とした決心」を表明し、幹部らに「具体的な課題」を示したという。核実験を強行する姿勢を改めて示した可能性がある。
出典:正恩氏「重大措置を講じる決心」…核実験強行か|読売新聞

「強度の高い国家的重大措置」が、核実験を示すと予想されている。これは、日本のみならず、アメリカ、中国、韓国など6カ国協議の参加国の共通認識だ。
北朝鮮の朝鮮労働党機関紙、労働新聞も「核実験は民心の要求だ」として核実験へ北朝鮮が踏み出すことを示唆した。*1


北朝鮮による2012年12月の弾道ミサイル実験

2012年12月12日に北朝鮮は人工衛星と称する弾道ミサイル実験を行った。
参考:北朝鮮による「人工衛星」と称するミサイル発射について|防衛省 *2

これは明らかに「弾道ミサイル技術を使用したいかなる実験」も禁止した、国連安保理決議第1874号に違反する。*3
また、決議第1874号より前に決議された決議第1695号、決議第1718号にも違反する行為と考えられている。
参考:国際連合安全保障理事会決議第1695号 訳文
   国際連合安全保障理事会決議第1718号 和訳
   国際連合安全保障理事会決議第1874号 和訳

北朝鮮に対する一連の国連安保理決議は、国連憲章第7章に基づくものであり、加盟国に対し法的な拘束力を持つ*4。この一連の決議には、国連憲章第7章第41条に基づく武力を用いない制裁を含む。
国連加盟国は安保理決議に示された制裁を行う義務がある。日本も決議に沿い、法律、省令を改正し、制裁を行なっている*5
参考:北朝鮮制裁について|経済産業省 広実郁郎

制裁であるから、制裁対象の国に関係する団体、個人に対するダメージや権利の抑制がある。北朝鮮を擁護する人の中にはこれを人権侵害と捉える向きもあるが、国連憲章第7章は関係団体・個人の権利を制約する行為に対して正当性を与える数少ない規範である。*6
制裁を受けた側は、決議の要求に従うしか、権利回復の手段はない。


安保理での北朝鮮制裁の議論は難航

2012年12月12日の事実上の長距離弾道ミサイル実験という北朝鮮による明確な国連安保理決議違反があったのに関わらず、この行為に対する決議の議論は難航した。中国が北朝鮮への制裁強化に反対したからだ。また決議という強い形での非難にも中国は難色を示し、法的拘束力のない議長声明とするよう主張した。*7
アメリカは粘り強く中国を説得し、結局、法的拘束力のある決議が全会一致で採択された。中国も賛成したという点は大きい。
中国がなぜ主張を変化させたかという点は不明だが、北朝鮮が本気で核実験の準備に入り実験が間近になったという点が、中国の態度に大きな影響を与えたのは想像に難くない。このまま北朝鮮に対する制裁強化に中国が反対を続け、安保理の議論が続いている間に北朝鮮の核実験が行われれば、中国に対しても大きな国際的な批判を招く。それを回避するために必要な妥協を中国は行ったと私は見ている。


国連安全保障理事会決議第2087号

決議は、今のところ日本語の全文訳がでていない。原文(英語)を読む必要がある。
SECURITY COUNCIL CONDEMNS USE OF BALLISTIC MISSILE TECHNOLOGY IN LAUNCH BY DEMOCRATIC PEOPLE’S REPUBLIC OF KOREA, IN RESOLUTION 2087 (2013)
この決議は、下のNHKの報道にあるように、新たな制裁は行わないが、今までの制裁を強化したものだ。
一方で、主文第19項で、"expresses its determination to take significant action in the event of a further DPRK launch or nuclear test"(北朝鮮がミサイル発射や核実験などの行動を取った時には、重要な行動をとる決意だと表現し)と、踏み込んだ表現で警告を発している。

採択された決議は、北朝鮮の発射は安保理決議違反だとして改めて非難するとともに、核開発計画を放棄するよう求めています。
さらに、以前の決議で定められた制裁の対象リストに、新たにミサイル発射に関わった北朝鮮の宇宙空間技術委員会とその幹部などを含む6つの団体と4人の個人を、資産凍結などの対象に加え、制裁の強化をねらっています。
また、決議は北朝鮮がさらなる発射や核実験を行った場合には「安保理として重大な行動を取る」と警告しています。
出典:国連安保理 北朝鮮制裁強化の決議採択|NHK

 

それでも北朝鮮は核実験を強行すると予測

決議第2087号を受けて、北朝鮮は反発している。それに核実験の準備は既に概ね終わっていると報じられている。*8
決議第2087号が採択されたから、北朝鮮が核実験に踏み切るのではない。核実験はそんなに短時間で準備できない。地上に被害が出ないよう地下数キロと言われる深度までトンネルを掘り、核兵器を設置した上でトンネルを塞がなければならない。*9
準備は用意周到に隠密裏に時間をかけて行われた。
異常だとはいえ、北朝鮮の決意の強さはわかると思う。核実験は遠くない将来、おそらくは数週間以内に強行されるだろう。

(小コラム)
そんなことは起こらないと十分に解っているが、それでも北朝鮮は核実験を中止し、核を廃棄すべきだと言っておきたい。
核の開発を続けるよりも、国内産業を育成し、国民へ十分な食料を配り、飢えをなくすほうが北朝鮮の国益に沿う。その方法は簡単だ。80年代の中国に習い、改革開放をすればいい。核を放棄すれば外国からの援助は大きく増える。ミャンマーを見るとわかるだろう。軍事独裁の時の経済制裁が解除され、世界から注目を浴びている。その方が安全保障上も有利なのだ。
でもそうすることは、先代、先々代の独裁を否定することに繋がり、若き世襲の独裁者の正当性を奪うだろう。だからできない。それは近隣国にとっても、ほんの一握りの特権階級を除いて大部分の北朝鮮の国民にとっても、忌まわしきことなのだけどね。でも独裁とはそういうものだ。国益よりも独裁者の利益が大事なのだ。

 

中国の反応がカギを握っている

北朝鮮が核実験を強行した時、中国がどう反応するかが今後を大きくわける。
私は2つのシナリオを想定する。

第一のシナリオ:北朝鮮を庇う

ひとつめのシナリオは、北朝鮮を更に刺激したくないという思惑が働き、国際社会の非難から北朝鮮を庇い、中国は現状維持を図るというシナリオだ。
この場合、決議第2087号で示した「安保理として重大な行動を取る」とした同意を根拠に、アメリカを中心として日本、韓国が強く反発するだろう。弾道ミサイル実験に比べれば、核実験の方が国際社会の反発が大きいので、この場合、中国非難の国際世論が生成されるだろう。
ロシアもアメリカに同調するとみる。
中国は、東アジアの現状維持と引き換えに、国際的な孤立を余儀なくされる。そして、北朝鮮へ影響力が大きいと見られていた外交上の威信が傷つけられる。
またアメリカはより一層中国への対決姿勢を強め、それは南シナ海東シナ海で起こっている領土問題にも影響を及ぼす。
今回も今までと同じように北朝鮮を庇う行為は、中国の国益とそぐわない点が多くなっているのに注目したい。

第二のシナリオ:北朝鮮から強硬派を一掃することを企図し圧力をかける

ふたつめのシナリオは、中国が決議第2087号で示した「安保理としての重大な行動」を常任理事国の威信をかけて主導的に行うというシナリオだ。
中国は、この「安保理としての重大な行動」にアメリカがイニシアチブを握ることを好まないだろう。
そこで、自らが主体となって制裁を加える可能性がある。
中国が北朝鮮との国境を完全に封鎖し、貿易を全く行わないと北朝鮮にとっては極めて大きな打撃となるだろう。特に北朝鮮は原油などエネルギー資源はそのほぼ全量を中国からの輸入に頼っている。*10
中朝国境の封鎖を行う場合、実効性を高めるため中国陸軍の数個師団(1集団軍は超える規模と思うが)を国境に移動させ封鎖するだろう。
それを脅しとして、北朝鮮の変化を迫るという行動だ。*11*12


日本はどうすべきか?

アメリカとは利害関係が完全に一致するので、足並みを揃える。たぶん、この件では韓国とも協力関係を持てる。
その上で、中国の反応を見極めるべきだろう。

中国が現状維持を選び、北朝鮮を庇う場合

中国に対する基本的な外交方針は変化させる必要はない。是々非々の態度で挑めば良い。当然、北朝鮮を庇う中国の行動については、強く非難すればいい。北朝鮮の暴挙とそれを支持する中国という構図で、北朝鮮&中国非難の世論を世界に広げる行動をとればいい。多くの国家が同調するだろう。

中国が北朝鮮に対して圧力を強める場合

これまでであれば、中国が北朝鮮に圧力を強めるなどという選択肢は全くなかった。しかし、再々にわたるミサイル実験と核実験は、少しずつ中国が北朝鮮を庇うことによる国益の損失を増やしている。中国の指導層は相当苛立っていると思う。
この場合、中国からみた日本は、波乱要素のひとつとなる。
そこでできれば日本と(一時的ではあっても)緊張緩和を図りたいと考えると予想する。中国は二国と同時に対立することを嫌っているように見える。例えば、日本と対立する時には、インドとは対立しないようにするなどの行動規範が見られる。
そこから予想されるのは、尖閣問題で対立が深まった状況の中、何らか中国から歩み寄りのサインが出る可能性がある。

中国共産党習近平総書記は25日、公明党の山口那津男代表との会談で、日中関係改善に意欲を表明した。安倍晋三首相について「高く評価している」と強調。安倍政権は中国新体制トップの習氏が歩み寄りの姿勢を示したことを歓迎し、自民党の高村正彦副総裁の訪中計画を含めた政治対話を加速させる方針だ。
出典:安倍首相を「高く評価」 習近平氏、関係改善へ意欲

この報道に注目している。今後の日中の外交に引き続き注目したい。

尖閣問題は重要な問題ではあるが、すぐに解決できる問題ではない。領土問題とはそういうものだ。例え永遠に小競り合いをし続けることになっても守りぬく。そういった達観は必要だろう。要は軍同士の衝突を回避しつつ、現状維持を続ければよいのだ。
一方で、北朝鮮の核開発は、すぐ、あるいはここ数年の東アジアの情勢を根底から覆す可能性を持った、喫緊で最重要の課題である。
日中両国とも北朝鮮の愚かな行為のために、脅威を受けている。
より大事なものを得るために、(例え一時的であっても)妥協点を探す。
時には、呉越同舟が最良の選択となることもあるのだ。



(脚注)

*1:「核実験は民心の要求」 朝鮮労働党機関紙  http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM26016_W3A120C1NNE000/

*2:添付している資料(pdf)がわかりやすい。この発表によると、『北朝鮮は発射後、「人工地球衛星」を地球周回軌道に進入させることに成功した旨発表している。これに関し、現時点においては、①北朝鮮が発射したとみられる何らかの物体が、軌道傾斜角約97度の地球周回軌道を周回していることは確認されている。②当該物体が、何らかの通信や、地上との信号の送受信を行っていることは確認されていない。以上のことから、今回の発射により、北朝鮮は軌道傾斜角約97度の地球周回軌道に何らかの物体を投入させたものと推定されるが、当該物体が人工衛星としての機能を果たしているとは考えられない。』として、明確に人工衛星でないと結論付けている。

*3:北朝鮮を擁護する勢力は、これは人工衛星だと主張するが、そういった言い逃れを許さないように、決議第1695号で「弾道ミサイル計画に関連するすべての活動を停止」としていたものを、決議第1718号では「いかなる核実験又は弾道ミサイルの発射もこれ以上実施しないことを要求」することに変化し、更に決議第1874号で「いかなる核実験又は弾道ミサイル技術を使用した発射もこれ以上実施しないことを要求」と変化した。人工衛星打ち上げロケットであっても弾道ミサイル技術を使用するため「人工衛星だから決議違反でないという言い逃れ」は完全に通用しなくなった。

*4:北朝鮮も加盟国であり順守する法的義務を追っている

*5:経済制裁措置|一般財団法人安全保障貿易情報センター http://www.cistec.or.jp/export/keizaiseisai/saikin_keizaiseisai/index.html#3_kitachousen

*6:新たに決議された決議第2087号では、主文第18項で「北朝鮮の一般市民のために不利な人道的な結果をもたらすことを意図するものではない」と人権侵害を意図する制裁でないと強調している。

*7:対「北」制裁強化 安保理決議の実効性を高めよ(1月24日付・読売社説)http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20130123-OYT1T01520.htm

*8:北朝鮮、3度目実験準備ほぼ完了 中国の習総書記、核開発に反対 http://www.47news.jp/CN/201301/CN2013012301001951.html

*9:核実験場のトンネルから出る土砂や工事の進捗状況等は偵察衛星によって把握可能だ。だからこそ国際社会は核実験の準備が整ったと見ていると思われる。

*10:北朝鮮の対外貿易の特徴と展望 http://ritsumeikeizai.koj.jp/koj_pdfs/59509.pdf

*11:その時、中国軍と北朝鮮の国境防衛部隊との間で小競り合いがあるかもしれないが、全面的な衝突にはならないだろうと思う。

*12:この行動はオフェンシブリアリズムでは、ブラックメールと言われる行動だ。参考:http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50316882.html

アルジェリア人質事件についての所感

犠牲者の方々への心からのご冥福を祈りたい

アルジェリア人質事件は、日本人人質を含む多数の人質の死亡という最悪の結果で終わった。昨日の報道によると、安否が判らなかった日本人の最後の一人の死亡が確認された。これで日本人の犠牲は10名になった。*1
無辜の人々の犠牲であり、なんともやるせないやり場のない怒りと無力感でいっぱいだ。特に犠牲になった方々の無念とご遺族のお気持ちを考えると言葉がない。
犠牲になった方々のご冥福を心から祈りたいと思う。*2


この事件は防げたか?

この事件の背景として、6つ知っておくべきことがある。

  1. 首謀者ベルモフタールはアフガンで訓練を受けた「アフガン」帰りである。
  2. 90年代のアルジェリアの凄惨な内戦に関わり、敗れマリ北部へ逃げた。
  3. マリ北部に逃げて以来、外国人誘拐、タバコの密輸などの非合法活動を続け資金を集めた。
  4. アラブの春」、特にリビアの崩壊に乗じ、組織の人員と武器を増やした。
  5. 組織が強力となったことでマリ北部を制圧しつつあった。
  6. マリの情勢に危機感を持ったフランスがマリ北部に軍事介入を開始した。

国境超えて広がるテロの脅威|NHK NEWS WEB

確かに、この事件が起こった後になって振り返ってみると、事件の兆候はあった。*3
予測できなかったのは、テロのターゲットと規模だ。プラント建設現場のようなソフトターゲットを対象としたテロは、これまで外国人誘拐など小規模なものが中心だった。このプラントにはアルジェリア軍が警備していた*4と聞くが、そのような小規模な襲撃に備えた警備体制だったのではないだろうか。
予測を超える40名という大規模な武装組織の部隊*5による襲撃を防ごうとすれば、防衛対象がプラント建設現場と居住区と2つに分かれていることもあり、少なくとも常時100名以上の部隊で守らなければならないだろう。それを24時間続ける体制はなかったと想定される。
内通者の存在も指摘されており*6、襲撃側は十分に計画を練ってこの行動に出た。
この用意周到さから考えられるのは、この事件を防ぐのは、相当困難だったということだ。


犯人の狙いはなんだったか?

アルジェリアのセレル首相は、事件の狙いの一つは人質をマリに連れ去ることにあったと指摘した*7。しかし、人質を連れ去るのが第一の目的ならば、人質を確保した後、速やかに撤収するはずだ。しかし武装組織は、占拠時一部の人質を殺害したし*8、施設に爆薬を仕掛けた後立てこもった。人質をマリに連れ去るのが事件の主目的と考えるには、武装部隊は不自然な動きをとっている。
立てこもった武装組織は、イスラム過激派服役囚の釈放を要求していた*9
これが主目的と考えるのも可能だが、これを達成するには交渉時間を確保する必要があり、そのためには人質の国籍がアルジェリア人であろうとイスラム教徒であろうと、できる限り多く確保し人間の盾とするのがテロとしては普通の動きのように思える。しかし、武装組織は明らかにイスラム教徒やアルジェリア人はターゲットにしていなかった。
ここにきて、ターゲットは外国人だったという見方が広がっているが、私も武装組織は最初から外国人の殺害を目的にしていたと考えるのが自然だと思う。*10
上記を総合して、私は犯人の狙いは次のようなものだったのではないかと考えている。

  • 第一の目的は、アルジェリアに混乱を生じさせること。
    • アルジェリアの主力輸出産業である石油、天然ガスプラントに被害を与えることで混乱が生じる。
    • 外国人を殺害することで、外国の経済協力を止めさせれば、更にアルジェリア政府に打撃を与える。
    • 武装組織の犯行声明でも、今後のさらなる攻撃(テロ)を示唆している。
  • 次に砂漠地域の支配を弱め、自勢力の根拠地にすること。
    • マリに対するフランス軍の軍事介入で武装組織がマリに確保している根拠地を失う可能性が高くなっているので、代替地の必要性も高い。
  • アルジェリアの反政府勢力*11を急進化させ、自勢力に取り込むこと。

2013/1/25 11:00追記
人質5人(たぶんBPの副社長や日揮の元副社長を含む要人)を人質にとりリビアに脱出するという指示があったという報道があり、人質確保を主体にしたチームと破壊を目的にしたチームと2つの目的があったように思える。*12
上記の見解を若干修正しておきたい。


アルジェリア軍の動きは性急すぎたか?

包囲後、わずか1日で突入、強硬策に出たアルジェリア軍の行動は性急すぎるとの批判が起こった。安倍首相も、人命優先をアルジェリア政府に申し入れていたのにかかわらず、アルジェリア軍が軍事攻撃を行ったことに不快感を表したという報道もあった。*13
武装組織も声明の中で、『武装組織はアルジェリア政府軍に交渉を申し入れ、「人質の安全」のため現場を離れるよう要求したが、政府軍はヘリコプターで攻撃した。攻撃を受けて、人質は施設内に集められたが、再び政府軍による爆撃に遭った』と人質の被害の責任をアルジェリア軍に求めている。*14
しかし一方で、武装組織の目的が、アルジェリアの混乱醸成にあったという見方に立つと、アルジェリア軍は、(1)早期に(2)自力で、このテロを制圧する必要性を強く認識していたと考えられる。
そこでアルジェリア軍の行動で特に問題視されるのは、武装組織が人質を載せて移動しようとした車列をヘリコプターで攻撃した行為だ。
当初、武装組織が逃走を図ったとされたため、私も「根拠地まで遠いはずなのに、なぜ途中で足止めする作戦を取れなかったのか?」と怒りの感情とともに強い疑問を持った。しかしその後、ノルウェー外相が「施設内で分散していた犯行グループが合流するためだった」*15と発言している。私も武装組織の目的とそれまでの行動から鑑みて、一部の部隊だけが逃走を企てるのは不自然であり、この見方のほうが妥当だと考える。
そうすると、アルジェリア軍は「武装組織部隊の合流を妨げるためヘリで攻撃した」のであり、攻撃の理由は理解できる。もっとも、攻撃の理由は理解できても、その苛烈さに対し全面的な同意はできないのだけども。
とはいえ、アルジェリア軍の行動を一方的に非難できるものでもないと感じざるをえない。
やはり、このやり場のない怒りは、アルジェリア軍ではなく、武装組織(テロリスト)に向けるべきものだろう。


日本政府の動きは十分だったか?

日本人の犠牲者が10名にものぼる現状からみて、十分だったとはとても言えない。
しかし、どうすべきだったかというと、日本側の人的制約、法的制約も多く、またアルジェリア政府の立場、方針から考えると、代替策を指摘できない。
少なくとも、この事件の主体は、アルジェリア政府とそれを支援したフランス政府だった。日本は、ワンオブゼムの立場から出なかった。
いまさら後出しジャンケンで、こうすべきだったと言っても、失われた人命は帰ってこないし、今は将来このような事件が起こった時に、日本がもっとうまく対応できるよう、反省をこめて対策をとる必要があると主張したい。
私の指摘点は次の3点。

  • テロの危険の洗い出し
    • 日本の企業、日本人もイスラム過激派のターゲットになりうるという認識に立ち、官民をあげてテロの脅威の洗い出しを行なってほしい。
    • その結果、警備体制が不十分と思われる施設では警備体制の増強を、日本は当該国に正式に外交ルートで要請すべきだ。
    • 特にアルジェリアについては、その他日本企業が関わるプラントに対するアルジェリア軍の警備体制の強化を強く求めるべきだ。
  • 危険国の大使館への武官配置
    • 日揮はよく現地の情勢を把握していたと思う。しかし一企業だけでは、その企業が関わっていない国の情勢の把握は非常に困難だ。例えばマリの情勢をどこまで把握していたかというと心もとないと思う。
    • 現在のテロリズムが国境をまたいだ活動をしている以上、それらの情報を集め総合するのは国の役割だ。通常の国であれば、その活動は軍が行う。そして大使館に武官を駐在させ、その任務に従事させる。
    • 日本も自衛隊にインテリジェンス専門の要員を育成すべきだ。そして武官として赴任させるべきだ。
  • 自衛隊の支援体制
    • アルジェリア軍のように、まがいなりにも自力でテロリストに対処できる国ばかりではない。マリのように自力だけでは武装組織に対抗できない国もある。
    • そういった国で日本人を中心に人質事件が発生し、政情からその国が軍事攻撃を取らざるをえなくなったら日本はただ手をこまねくだけなのか? それよりも日本自らが情勢をコントロールできる力を持つべきでないか?
    • 上記のようにさまざまな状況で類似事件が起こった場合をシミュレーションし、自衛隊の支援体制を整えるべきだ。テロに対して軍事的な対応策を全く持たない状況は問題が大きい。日本の選択肢は広くあるべきだ。

テロを許してはいけない。日本はアルジェリアや米仏英などこの事件の関係各国と連携・協力し、テロ対策を行なってほしい。
 

(脚注)

*1:http://mainichi.jp/select/news/20130125k0000m040046000c.html

*2:月並みな言葉で申し訳なく思う。しかし、私の語彙力ではこの気持ちを言い表せる表現を思いつかないんだ。ただひたすら辛く悲しい。

*3:去年12月、インターネットに掲載されたビデオ声明が、各国の治安当局者の注目を集めました。声明を出したのは「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ」に所属していたモフタール・ベルモフタール。「血判部隊」という新たな組織を結成してその幹部におさまり、欧米への聖戦=ジハードを宣言したのです。(「国境超えて広がるテロの脅威|NHK NEWS WEB」より http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/0123.html)

*4:http://www.news24.jp/articles/2013/01/17/07221405.html

*5:http://sankei.jp.msn.com/world/news/130121/mds13012110240004-n1.htm

*6:http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2013012401047

*7:http://sankei.jp.msn.com/world/news/130122/mds13012201350003-n1.htm

*8:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130121-00000008-jij-m_est

*9:http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2922437/10146636

*10:http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130122/crm13012221320023-n1.htm http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20130123-OHT1T00224.htm

*11:http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-19519720110214

*12:http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130125/crm13012507400006-n1.htm

*13:http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130122-OYT1T01698.htm

*14:http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324439704578254291048942884.html

*15:http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130121/crm13012109510006-n1.htm