日はまた昇る

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安倍政権発足。望むのはただ2つ。経済再生と外交の安定だ。

今日、自民党を中心とする安倍第二次政権が発足した。
閣僚は次の通り。

閣僚名簿

首相 安倍晋三
副総理兼財務・金融担当相 麻生太郎
総務相 新藤義孝
法相 谷垣禎一
外相 岸田文雄
文部科学相 下村博文
厚生労働相 田村憲久
農林水産相 林 芳正
経済産業相 茂木敏充
国土交通相 太田昭宏(公明党)
環境相原発担当相 石原伸晃
防衛相 小野寺 五典
官房長官 菅 義偉
復興相 根本 匠
国家公安委員長・拉致担当相 古屋圭司
沖縄北方担当相 山本一太
少子化・消費者担当相 森 雅子
経済再生担当相 甘利 明
行革・公務員改革担当相 稲田朋美

出典:安倍政権発足 菅新官房長官が閣僚名簿を読み上げ(FNNニュース)


望むことはただ2つ。経済再生と外交の安定
経済
マスコミも指摘していることだが、この内閣の特徴は、次の人事にあろう。

副総理兼財務・金融担当相 麻生太郎
農林水産相 林 芳正
経済産業相 茂木敏充
経済再生担当相 甘利 明

特に、アベノミクスと称される大胆な金融緩和と財政出動に抵抗するであろう日本銀行財務省に対して重石となる財務大臣に、元首相で党の重鎮である麻生太郎氏を置いたのは、安倍政権の意思と覚悟を示すと思う。

麻生氏の言を借りると「一丁目一番地は経済再生」だということを一時たりとも忘れてはならない。
俗に「失われた20年」と言われるこの20年で失ったのは、時間だけでなく、国民の自信と楽観的な心だ。経済が上向くと明るい気分が世の中を覆う。それを知らない人があまりに多くなった。悲観的で冷笑的(シニカル)な態度を現実的な態度(リアリズム)と勘違いしている人が増えてきた。
これはあまりにも悲しい出来事だ。
幸いにしてアベノミクスを好感し、市場は円安と株高基調になっている。これを継続し、資産価値の上昇を消費拡大につなげて欲しい。
そのための金融緩和であり、財政出動だ。失われた20年、財政出動は常に行なってきたが金融緩和はおずおずと実施してきた。
賭けではあるが、この2つを思い切り実施しなければ、今と同じ状況、つまりデフレによる日本経済の緩慢とした死から逃れられない。
やり切るしかない。
そして財政出動による景気上昇が続いている間、円安を背景にした輸出産業の競争力回復が間に合うか。それが勝負どころと思う。
そこまで行きつけば、日本経済の再生は見えてくる。
失敗は許されない。

外交
一方、グローバル化が進んだ現代、日本経済は他国の経済と深く結びついている。その観点で、日本が自国の経済対策に全力を尽くせる環境を作るためにも、外交は少なくとも安定させておかないといけない。他国との緊張の深刻化は、日本経済に負の影響のみ与える。
とはいえ、当面、中国は尖閣諸島の領海・領空侵犯を続けるだろう。
これに対しては、国内に湧き上がる強硬的な意見を抑え、今までどおりきちんとした冷静な対応を続けるべきだ。
その観点で人事を見ると、

外相 岸田文雄
防衛相 小野寺 五典

の両氏は、尖閣諸島領有の正当性について揺るぎない信念を持ちつつも、冷静で我慢強い対応ができる人だと思う。
評価したい。
現状での強硬策は百害あって一利なし。中国の一つ一つの挑発にきちんと対応しつつ我慢する。その二面性が必要だ。
中国に対して、強く物申すべき時期は、後日必ずやってくる。強硬策はそれまでは待つべきだ。


外交と経済政策は継続性が必要
私たちは、3年ちょっとという短い時間で、政権交代を2度経験した。
自民党・公明党や民主党など政権を担当した政党をはじめ、現実的な政策を掲げ将来の政権運営に意欲を持っている党とその支持者の人には賛同を持ってもらえると思うが、政権交代によってすぐに外交政策と経済政策を大きく変えるのは、混乱のみ生じさせ国益を損ねるだけだと言いたい。
長いスパンで捉えれば、将来必ず自公政権から他党へ政権交代が起こる。その時、大きな問題を生じさせないためにも、外交と経済政策については、野党は批判だけではなく是々非々の態度で対応すべきだ。批判のみする野党など存在価値はない。政権奪取を目指さない党などなくなった方がよい。
その点、今回の総選挙の上位5党、自民党、民主党、日本維新の会、公明党、みんなの党は、外交と経済政策で一致点も多く、これらの党で衆議院全体の約95%を占めたことは評価できる。
重ねて言いたいが、外交と経済政策での政局は、誰が(どの党が)勝者になろうと、敗者は常に国民なのだということをわきまえてほしい。これは自民党を含め、全部の党に言いたいことだ。


野党は、将来を読み、次の総選挙での選択肢を国民に提示する義務がある
経済が回復したら、次の参議院選挙で自民が有利になる、だから失敗することを願うなんてことを野党は考えないでほしい。
参議院選の結果がどうであっても、つまり例え自民党が敗北しても、自公政権は衆議院3分の2で再議決できるため、あと4年近くは続く。
そして自公政権が経済回復に失敗し、それに国民が嫌気を差して、3度めの政権交代が起こったとしても、その時に交代した政権がとれる行動は、もう多くは残っていない。
今回の安倍政権が行おうとしている経済政策は、残っている日本の余力をほとんどつぎ込むようなものになる。またそうでなければ、成果は望めないだろう。今まであればこういった冒険的な政策を取れなかったが、衆議院で国民が与えた議席はその賭けに正当性を与えている。そしてその失敗は、政治信条如何に関わらず、国と国民全体の厄災と変わる。
一方で、安倍政権が行おうとしている経済政策は、主にサプライサイドにたった施策であるために、所期の成果があがった場合、つまり政策が成功した場合でも、様々な問題が生じると予想される。
野党は、安倍政権の経済政策を失敗させるのではなく、成功した時に発生するであろう問題を予想し、それに対する解決策を提示し、次の総選挙で私たち国民に選択肢を与えてほしいと思う。


民主党に願うこと。経済成長と再分配を両方重視する主張を。
安倍政権が実施するはずの経済政策は、主にサプライサイドの経済政策だ。
これらの政策は、まずは企業の活力を生むことを目標にする。
一方、企業に勤める人=従業員の多くは、デフレからインフレに変わっても、当初インフレ率を上回る賃金上昇とはならないだろう。
政策が成功し儲ける人がいる一方で、実質賃金が目減りする人が多数発生する。
所得格差は(どの程度かはわからないが)拡大すると考えられる。
その所得格差が、耐え難いものになったとき、国民は再分配政策を望むはずだ。
民主党には、野党時代にその政策を考えて欲しいと思っている。

ただし、二つ懸念がある。

一つは、経済成長を重視できるかということだ。
安倍政権が行おうとしている「金融緩和」+「財政出動」というのは、欧州ではリベラル勢力が主張する経済政策だ。
実は自民党というのは、経済政策でのリベラル政策と、外交・安全保障での右派政策と、二面性を持っている。
しかし、前回の政権交代で、民主党は「コンクリから人へ」ということで、自民党のリベラルな経済政策を否定してしまった。
その結果、経済政策の方向性を失い、経済政策では政府支出の削減=小さい政府という実は欧州では右派が主張する政策をとってしまうというなんともちぐはぐな状況になった。
「コンクリから人へ」ではなく「コンクリも人も」でなくてはいけなかったのだ。
しかしそれは当然、自民党の政策より大きな政府支出を必要とする。その足りない分は増税せねばならない。
経済成長と高福祉を実現するための高負担。
でも選挙を考えると難しいのだろうなと思う。

もう一つは、民主党の支持基盤である労働組合の問題だ。
所得格差が広がるだろうと予想しているが、その時、民主党の支持基盤になっている有力な大企業や公務員の労働組合の組合員は、所得格差の拡大における勝者の側にいるだろうと思う。実質賃金が下がり苦しむのは、主に非正規労働者だろう。
経済成長を重視すると、共産党が主張するような企業に負担を押し付ける方法は賢明でない。それは平等かもしれないが、皆貧しくなる将来を生む。
それを避けるためには、正社員の解雇の緩和のような企業側への譲歩を行いつつ、同一職務同一賃金、つまり正社員も非正規労働者も、単位時間あたりの賃金の不均衡是正を行うべきだ。そしてワークシェアリングを推進し、結婚して子どもを育てている女性が働きやすい労働慣行を作るべきだ。
それを行わず、現在の労働慣行のまま、単純に低賃金者への再分配政策を立案すると、必要な予算は跳ね上がる一方で、非正規労働者の固定化が進むだけだろう。
それはますますいびつな労働環境をもたらす。それはいずれ日本経済全体に負の影響を与えるだろう。
でもこれも支持母体のことを考えると難しいのだろうな・・・。

それでも敢えて書いた。
これを読んでいる方のご批判を待ちたい。

今のところ、政権を運営できるのは、自民党しかないと思う。
しかし、間違いだらけの運営ではあったが、民主党もまがいなりに3年3ヶ月政権を運営した。
その失敗を糧に、日本の将来につなげて欲しい。


(追記)
本当は、維新の会とみんなの党には、別の政策で期待したいところなのだが、維新の会がまだ不安定で未知数なため、今回は記述しないことにした。